四話
「その子、何?」
灰色の髪の青年の顔には困惑が浮かんでいる。
何って言ってもなぁ、
「猫だな!」
としか言いようがない。
「あー……。ふ〜ん?」
俺の目の前に居る青年は、俺の腕の中に収まっている黒くて小さい毛玉に何か思うところがあるようだ。
数秒うーんと小さく思案した後、おもむろに口を開いたかと思えば
「元の場所に返してきてね〜!」
なんて、笑顔で言いやがった。
「「え?!」」
俺と黒猫は同時に似たような鳴き声をあげた。
「へっ?その反応は予想外なんだけど…。」
青年は驚きの声を上げた後、意外そうに呟いた。
俺に抱えられている黒猫は腕の中でもぞもぞと動きながらモノクルの青年の方へと向き直った。
「ぼく、か弱い子猫なんですっ!ひとりで生きていくのは難しくて……。でも、きっと恩返ししますから!一緒に連れて行ってくれませんか…?」
潤んだ瞳で見上げながら一生懸命に青年を説得する子猫。
……健気だ!!
俺も援護しなければ!
「俺からも頼む!面倒は俺が見るから、こいつも一緒に行かせてくれ!!」
「その子可愛いからぁ、すぐ飼い主見つかると思うけどなぁ。」
モノクルの青年は笑顔を崩さず言い放つ。
「わざわざ君が面倒見る必要あるかなぁ?」
真っ当な疑問だろう。
確かに傍から見たら俺が面倒を見る必要は無いのかもしれないが、それでも。
「こいつは俺が助たからな。助けた責任が、俺にはある。」
「!!」
青年は目を瞠った。
「…………同じこと言うんだね。」
つかの間の沈黙の後、ポツリと呟いた。
小さなもふもふが、
「ぼくも!他の人じゃなくて、この人がいいです…!」
そう言って青年の紫の瞳を見つめる。
「仕方ないなぁ…。いいよ、小さい黒猫さんも一緒に行こ〜か。」
諦めたように、そしてどこか懐かしそうな表情で黒猫の同行を許可してくれた。
「ありがとう!」
「ありがとうございます…!きっと命に代えてもこのご恩は返します!」
俺と猫は交互に感謝を伝えた。
青年は少し気恥しそうに目を逸らしながら、
「まぁ、一応隊長の許可は貰わないとダメだよぉ?絶対良いって言うと思うけどぉ…。」
少しだけ呆れた様子で言った。
何か問題があるのだろうか?
俺の表情をチラリと見て疑問を読み取ったのだろう、青年悩ましげに続ける。
「その子…かわいいから……。うん。」
可愛いと問題があるのか??
俺の疑問は深まっただけだった。
「とりあえず、隊長のところに戻ろっかぁ。」
はぁ、と溜息混じりに青年は踵を返す。
「ふたりとも着いてきてね〜。」
俺は腕の中に小さな温もりを感じながら青年の背中を追う。
そういえば、
「その隊長って人は気難しい人なのか?」
無言でいるのも勿体無い気がして青年に声を掛ける。
パッとこちらに振り返り、驚いたような顔をしながら言った。
「あれ?僕伝えて無かったっけぇ?!」
「両目を目隠しで覆ってる白い髪のかわいい女の子居たでしょ?あの子が僕…っていうか僕たち治安維持隊のトップ、隊長だよぉ!」
いや、マジか。初耳の情報だった。




