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第9話 契約者だけの世界

朝日が差し込む。

レグルスはゆっくりと目を開いた。

久しぶりに熟睡できた気がする。


地下遺跡では常に警戒していた。

魔物が襲ってくるかもしれないし、崩落が起きるかもしれない。

そんな環境だったのだから当然だ。


「……ん?」

起き上がった瞬間。

視界の端に淡い光が浮かんだ。

昨夜見た金色の文字。

夢ではなかったらしい。


「ステータス」

試しに呟いてみる。


すると。


目の前に半透明の板が出現した。

レグルスは思わず身を乗り出す。


「おお……」

そこには文字が並んでいた。


レグルスは改めてステータス板へ視線を向けた。


━━━━━━━━━━


レグルス・クレハルト


レベル:8

※ 黄道十二宮契約者 獅子宮適合者


━━━━━━━━━━


称号 【ネメアの獅子】


━━━━━━━━━━


基本行為


切る Lv3


突く Lv1


叩く Lv1


弾く Lv1


━━━━━━━━━━


努力蓄積 12,487


━━━━━━━━━━


「称号?」

レグルスは眉をひそめた。

昨夜は気付かなかったので意識を称号に向ける。

すると文字が変化した。


━━━━━━━━━━


称号 【ネメアの獅子】


効果

《獅子の誇り》

・身体最適化効率上昇

・恐怖耐性上昇

・威圧耐性上昇


━━━━━━━━━━


「ネメアの獅子……」

聞いたことのない名前だった。

だが不思議と嫌な感じはしない、むしろ胸の奥が僅かに熱くなる。

まるで昔から知っていた名前のように。


「どうしたの?」

ベルトに吊るされたセレスが尋ねる。


レグルスは表示を見せられないと分かっていながら答えた。

「称号が増えてる」


「称号?」


「ネメアの獅子だそうだ」


その瞬間だった。

珍しくセレスが黙り込んだ。


「……ちょっと?」


「それをどこで見たの?」


「ステータス板」


「そうじゃないわ」

セレスの声が低い。


「それを見たのは初めてなの?」


「ああ」


数秒の沈黙。


そして。


「なら覚えておいた方がいいわ」

いつもの軽い調子ではなかった。


「その称号は、あなたが手に入れた最初の証よ」


「証?」


「継承者としてのね」


レグルスは再びステータス板を見る。

ネメアの獅子。

獅子の誇り。

意味はまだ分からない。

だが一つだけ理解できる。

地下遺跡での戦い。

積み重ねてきた努力。

そして黄道十二宮システム。


その全てが繋がった結果として、この称号を得たのだと。


レグルスは小さく笑った。


「悪くない名前だな」

すると、ステータス板の文字が一瞬だけ輝いた。

まるでその言葉に応えるように。


再びステータス板を見る。


「努力蓄積?」


見慣れない項目だった。

レグルスは首を傾げる。


その時。セレスが笑った。


「努力蓄積ってのは、そのままの意味よ」


「そのまま?」


「あなたが今まで積み重ねてきたものよ」


レグルスは表示を見つめた。


12,487。

意味は分からない。

だが妙に大きな数字だった。


「素振りとかか?」


「多分ね」


「多分って」


「私も全部知ってるわけじゃない」

セレスが肩を竦めるような声を出す。


「だが、あなたのシステムは努力を評価している」

その言葉にレグルスは黙った。


努力。

昔から続けてきた。

誰も見ていない場所で、誰にも褒められず。

ただひたすら。

刀を振り続けた。


「無駄じゃなかったってことか」


「少なくともシステムはそう判断したらしいわね」


少しだけ嬉しかった。

才能があるわけではない。


兄のような剣の才能も。

姉のような魔法の才能もない。


それでも。

続けてきた意味があった。


今度は【切る Lv3】に意識を向けた。

すると詳細が表示される。


━━━━━━━━━━

切る Lv3

剣を用いた斬撃技術

熟練度向上中

次の派生技解放まで残り僅か

━━━━━━━━━━


「派生技?」

レグルスは目を見開いた。


「お、出たの」

セレスが言う。


「派生技ってなんだ?」


「その名の通りよ」


「レベルを上げると技が生まれる」

レグルスは思わず息を呑んだ。


切る。


突く。


叩く。


弾く。


ただの動作ではない。

極めれば技になる。

それが継承者の力。


「面白いじゃねぇか」

自然と笑みが浮かぶ。

地下遺跡では生き残ることに必死だった。

だが今は違う。


未来が見える。

自分が強くなる道筋が。


「どうするの?」

セレスが聞く。


「決まってる」

レグルスは立ち上がった。

窓の外を見る。

ベルグラードの街並み。

冒険者たちが行き交っている。


「強くなる」

静かな声だった。

だが迷いはない。


「まずは冒険者になる」


昔から考えていた。

冒険者になることを、世界を見ることを、強くなることを。


そして。

いつか星すら斬れるほどの剣士になることを。

レグルスは愛刀を腰に差した。


玄関へ向かう。

目指す先は一つ。

ベルグラード冒険者ギルド。


彼の物語は。

ここから本格的に始まるのだから。


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