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星すら斬るまで、俺は振り続ける  作者:
第六章 修羅と呼ばれる国
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第66話 崩れても巡る

 翌朝、修練場へ入ると、昨日まで地面に描かれていた円が消えていた。

 円の縁を何度も歩いた跡も、箒で均すように掃き消されている。

 リヴィアは最後に残った土埃を外へ払い、箒の先を地面から上げた。


「円は、もう使わないんですか」


「使わない」


「昨日は、あの縁を歩くことで魔力を巡らせました」


「円がなければ巡らせられないなら、昨日から何も進んでいないね」

 リヴィアが箒を肩へ担ぐ。


「あれは、お前が余計なことを考えずに動くための目印だ。魔力の通り道を地面へ描いた覚えはないよ」


「分かりました」


 昨日歩いた円を思い出し、その縁があった場所へ右足を置く。

 目印は消えても、足運びまで忘れたわけではない。

 ゆっくりと息を吸い、無属性の魔力を腹の奥へ集める。

 足から腰。

 腰から背中。

 肩から腕を通し、掌へ。

 そこから腕の内側を伝わせ、胸、腹、再び足へ。


 一巡目が終わる直前、視界の端で箒が動いた。

 右肩を狙った横薙ぎ。

 考えるより早く、水の魔力が神経を巡った。

 《瞬》。

 迫る箒の柄が僅かに遅く見える。

 上体を沈め、一歩後ろへ下がる。

 箒は肩の上を通り過ぎた。


 攻撃は躱せた。

 だが、無属性の魔力は、水へ変わった瞬間に途切れている。


「今のは……」


「避けたことは間違いじゃない」

 リヴィアが箒を引き戻す。


「流れを捨てて、属性へ逃げたことが間違いだ」


「ですが、《瞬》を使わなければ間に合いませんでした」


「本当にそうか」


「少なくとも、今の俺では」


「なら、打たれればいい」


 簡単に言われ、言葉に詰まる。


「避けられない攻撃を受けることまで失敗だと思っているから、咄嗟に使い慣れた属性へ逃げる。今は、私に勝つ修行をしているわけじゃない」


「魔力の流れを残すことが優先、ということですか」


「避けてもいい。受けてもいい。倒れても構わない」

 箒の先が、俺の胸元へ向けられる。


「ただし、流れを切らすな」


「分かりました」


「なら、始めろ」


 再び無属性の魔力を足へ落とす。

 歩き始めた俺へ、リヴィアの箒が伸びた。

 先ほどと同じ右肩。

 今度は《瞬》を使わない。

 身体を僅かに捻り、箒を外側へ躱す。

 無属性の魔力は足から腰へ流れている。


 だが、身体を捻った瞬間、背中へ上げるはずだった魔力が腰に偏った。

 箒が軌道を変え、左の脇腹へ打ち込まれる。


「ぐっ……」

 痛みに身体が強張る。

 反射的に、打たれる場所へ魔力を集めた。

 脇腹を守るように集まった魔力が、箒の衝撃を僅かに和らげる。

 代わりに、そこから先の流れが止まった。


「止めたね」


「今のは、あなたの攻撃を受けたからです」


「私は叩いただけだ。魔力を止めたのは、お前自身だよ」


 箒の柄が脇腹から離れる。

 集めた魔力は、今もその場に固まっている。


「壊されないよう守ろうとするほど、お前は打たれる場所へ魔力を集める。だが、一か所へ集めた時点で、それはもう流れじゃない」


「では、守らずに受けろと」


「そうだ」


「箒とはいえ、かなり痛いんですが」


「痛くするために殴っているんだ。痛くなければ、お前は身体を守ろうとしないだろう」


 否定できない。

 リヴィアが箒を構え直す。


「今度は避けるな。魔力も集めるな。そのまま受けろ」


「はい」


 足から無属性の魔力を流す。

 腰、背中、肩へ届いたところで、箒の柄が右肩へ振り下ろされた。


 乾いた音が鳴る。

 肩へ走った痛みに、呼吸が止まった。

 魔力が散る。


「もう一度」


 言われるまでもなく、腹へ魔力を集め直す。

 足から腰、背中へ。

 今度は、胸元へ箒が突き出された。

 受けると分かっていても、身体は勝手に身構える。

 腹筋へ力が入り、背中が丸くなる。

 箒の先が鳩尾へ食い込んだ。


「かはっ……!」


 肺から息が押し出される。

 胸から腹へ戻りかけていた魔力が途切れた。


「もう一度」


 呼吸を整え、構え直す。

 右肩。

 左の脇腹。

 太腿。

 腹部。

 箒が打ち込まれるたび、その場所へ魔力を集めそうになる。

 集めることを我慢すれば、今度は筋肉が硬くなる。

 痛みを受けた場所で身体が止まり、そこから先へ衝撃も魔力も進まない。


「痛みを消そうとするな」

 左肩を打たれた俺へ、リヴィアが告げる。


「消そうとはしていません」


「同じだよ。痛みを受けまいとして、打たれた場所だけを固めている」


「では、身体を緩めればいいんですか」


「ただ力を抜けば、骨まで届く」


 箒の柄が胸元を軽く押す。


「一か所で止めるな。受けた衝撃を身体へ通し、足裏まで逃がせ」


「衝撃を流す……」


「お前が魔力へしていることと同じだ。入ってきた力にも、出ていく場所を作れ」


 再び箒が肩へ振り下ろされる。

 肩だけで受けないよう、上体を回す。

 しかし、今度は身体を動かしすぎた。

 箒に押されるまま重心が外れ、右足が地面から浮く。

 倒れまいと腰へ力を入れた瞬間、魔力が止まった。


「違う」


「もう一度お願いします」


「同じ受け方を繰り返すな。自分の身体で抜ける場所を探せ」


 箒が振り下ろされる。

 肩で受け、身体を回す。

 腰へ衝撃を流そうとして、魔力が止まる。

 腹部を打たれ、後ろへ下がる。

 足裏へ力を逃がそうとして、踵が地面へ張りつく。

 何度受けても、痛みを感じた瞬間に身体のどこかが固まった。


『レグルス』

 セレスの声が、意識へ響く。


『あなた、刀で相手の攻撃を受けたとき、刃だけで力を止めていたかしら』


「いや」


 刀で相手の武器を受けたとき、刃を正面からぶつけて終わりにはしない。

 刃を僅かに傾け、相手の武器を滑らせる。

 受け止めなければならないときも、手首だけは固めず、肘、肩、腰へ衝撃を通していた。


 重い攻撃であれば足を引き、地面へ力を逃がす。

 刀身だけで受け止めれば、刀が耐えても手首や腕が壊れる。


『それなら、今も同じでしょう?』


「だが、今は刀がない」


『刀が受けてくれていたとでも思っているの?』

 セレスの声には、呆れたような響きが混じっていた。


『刃から伝わった力を逃がしていたのは、あなたの身体よ』


 刀を失ったことで、それまで身につけたものまで使えなくなったと思っていた。

 だが、刀を通して覚えたのは、力を切っ先へ届ける方法だけではない。

 相手から受けた力を、刃から腕、腰、足へ流すことも、何度も繰り返してきた。


『刀を失ったのは事実よ。でも、あなたの身体までなくなったわけではないでしょう?』


「ああ」

 右足を半歩後ろへ引く。


「もう一度、お願いします」


 リヴィアが箒を振り上げる。

 狙いは右肩。

 打たれる寸前まで肩を固めず、箒が触れた瞬間に上体を僅かに返す。

 肩へ入った衝撃が背中へ抜ける。

 背中から腰へ。右足を後ろへ滑らせ、地面へ逃がす。

 同時に、無属性の魔力を流し続ける。

 衝撃と魔力が重なり、背中で大きく乱れた。

 それでも、先ほどまでのように肩で完全には止まらない。

 腰まで届く。

 だが、右足を踏み直そうとした瞬間、腹へ戻る魔力が途切れた。


「……駄目ですか」


「さっきよりはましだ」


 初めて、否定以外の言葉が返ってきた。


「ただし、打たれることへ意識を取られすぎている。衝撃を流した後、お前自身の流れを見失ったね」


「はい」


「なら、両方を繋げろ」

 リヴィアが箒を構える。


「相手の力を外へ逃がしながら、自分の魔力は内側へ戻せ」


 言葉にすれば短い。

 だが、身体の中では二つの力が別々の方向へ動く。

 それでも、できないとは言えない。

 刀を持っていた頃、俺は何度も同じことをしていた。

 相手の攻撃を流しながら、次の一太刀へ向けて自分の身体を動かしていた。


「続けます」


「ああ。日が落ちるまでに、もう一度ましな受け方を見せろ」


 それから三日間、同じ修行が続いた。

 避けようとすれば、魔力が足へ偏った。

 受けようとすれば、打たれた場所へ魔力を集めた。

 箒を払い、反撃しようとすれば、掌へ届いた魔力が外へ漏れた。

 呼吸が止まれば、胸から腹へ戻る流れも途切れる。

 身体には、箒で打たれた痕が増えていった。

 肩や腕には青黒い痣が残り、宿へ戻って上衣を脱ぐたび、セレスから呆れた声を向けられた。


『箒一本で、随分と派手にやられたものね』


「そう見えるだけだ」


『では、痛くないのかしら』


「痛い」


『強がる意味がないでしょう』


 それでも、修練場へ立つたび、属性へ逃げる回数は減っていった。

 一撃を受ければ途切れていた流れが、二撃目まで残るようになる。

 足を動かしても、胸から腹へ戻る魔力を見失うことが少なくなる。

 だが、三撃目には必ず崩れた。

 一つ目の衝撃を流し、二つ目の攻撃を避けた後、乱れた足運びを戻そうとして循環を止めてしまう。

 リヴィアは手加減しない。

 俺が二撃に慣れれば、三撃目を早くする。

 避ける方向を覚えれば、逃げた先へ箒を置く。

 足を踏み替えようとすれば、その足を払う。

 繋がりかけた流れは、毎回違う場所から壊された。


 それでも、壊れる場所が分かるようになった。

 以前は、魔力が途切れた後で失敗に気づいていた。

 今は、流れが細くなり、止まりかける瞬間を感じ取れる。

 繋ぎ直すには間に合わない。

 だが、何も分からないまま散らしていた頃とは違う。


 三日目の夕刻。

 沈み始めた太陽が、修練場の土を赤く染めていた。

 リヴィアが箒の柄を両手で持ち、俺の正面へ立つ。


「始めろ」


「はい」

 無属性の魔力を腹から両脚へ流す。

 右足を前へ。

 足から腰、背中、肩、腕、掌へ。

 掌から胸、腹へ戻し、再び両脚へ。


 一巡。


 二巡目へ入った直後、リヴィアが動いた。

 箒が右肩へ振り下ろされる。

 避けない。

 肩だけを固めず、右足を軸に上体を返す。

 箒が肩へ当たる。

 骨まで響く痛み。

 身体の中を巡る魔力が、大きく歪んだ。

 それでも、止めない。

 肩へ入った衝撃を背中から腰へ流し、左足を後ろへ滑らせる。

 足裏から地面へ力が抜けた。

 同時に、掌から戻ってきた魔力が胸を通り、腹へ沈む。

 途切れていない。


 リヴィアが箒を引く。

 次は突き。

 箒の先が胸元へ迫る。

 左足を斜め後ろへ引き、身体を正面から外す。

 完全には避けきれない。

 箒の柄が胸の外側を掠める。

 右の掌を添え、外側へ押し流す。

 掌へ魔力を集めない。

 腕へ届いた流れの一部を、そのまま胸へ戻す。

 箒を払った右腕が身体の前へ残る。

 

 そこへ、リヴィアの足が踏み込んだ。

 箒が低く沈み、足元を薙ぐ。

 跳べば、魔力が風へ変わる。

 地面へ張りつけば、足で流れが止まる。

 右足を僅かに浮かせ、左足を軸に身体を入れ替える。

 箒が右足の下を通過した。

 重心が崩れる。

 浮かせた右足を予定とは違う場所へ下ろす。

 昨日までなら、正しい足運びへ戻そうとして流れを止めていた。

 

 だが、地面に円はない。

 決められた位置へ戻る必要もない。

 踏み下ろした右足へ、腹から魔力を送る。

 腰が回り、崩れた上体が起きる。

 流れは細くなった。

 それでも、まだ残っている。

 

 リヴィアの箒が下段から跳ね上がる。

 顎を狙った一撃。

 上体を反らすのではなく、膝を曲げて身体ごと沈める。

 頭上を箒が通り過ぎる。

 足へ落ちた魔力を腰へ戻し、そのまま背中へ上げる。

 立ち上がる動きに合わせ、左の掌を前へ出す。

 反撃するためではない。

 構えを崩した身体を、次の動きへ繋ぐために。


「止まれ」

 リヴィアの声に従い、その場で足を止める。


 動きを止めても、魔力まで止めない。

 足から腰、背中、肩、掌へ。

 胸から腹を通り、再び足へ。

 大きく歪み、何度も細くなった。

 それでも、一度も完全には途切れていない。


「できた……」


「一度だけだ」

 リヴィアは箒を下ろした。


「それも、私が加減した攻撃を四つ繋いだだけだよ」


「それでも、昨日までは三つ目で途切れていました」


「だから何だ」


「もう一度やれば、次は五つ繋げられます」


「言うようになったね」

 リヴィアが箒を地面へ置く。


「だが、次は箒じゃない」


 その身体の輪郭が、陽炎のように揺らいだ。

 魔力の光ではない。

 肉体の内側から滲み出した力が、肩から腕へ流れ、右の掌を薄く包んでいる。

 兄がカイウスとの試合で見せたものと同じ力。


 《気》。


 無属性の魔力を巡らせた今なら、以前より何かを感じ取れるかもしれない。

 そう思い、リヴィアの身体へ意識を向ける。

 だが、何も分からない。

 目に見える揺らぎ以外、その力がどこから生まれ、どの道を通って掌へ届いたのか、僅かな輪郭さえ掴めなかった。


「今から、これで一度だけ打つ」


「受け止めればいいんですか」


「好きにしろ。ただし、流れを守ろうとするな」


「流れを守らなければ、今までの修行と同じでは」


「守ろうとするから固めるんだ。崩されることを受け入れろ」


 リヴィアが右の掌を身体の前へ構える。


「お前が守るべきなのは、決められた形じゃない。崩された後にも残る繋がりだよ」


 無属性の魔力を巡らせる。


 一巡。


 二巡。


 リヴィアの右足が前へ出た。

 大きく踏み込んでいない。

 それなのに、一瞬で目の前へ現れる。

 《瞬》を使いたくなる衝動を押さえ、迫る掌を見る。

 正面から受け止めれば耐えられない。

 身体を右へ返し、左足を後ろへ引く。

 リヴィアの掌が胸の左側へ触れた。

 触れただけに見えた。

 直後、重い衝撃が胸を突き抜けた。


「――っ!」

 身体が地面から浮く。

 胸から背中へ抜けた力に押され、後方へ吹き飛ばされた。


 一歩。

 左足が地面へ着く。

 止められない。


 二歩。

 右足で踏み止まろうとして、膝が折れる。

 無属性の魔力が胸で弾け、全身へ散りかけた。

 守ろうとするな。

 崩されることを受け入れろ。

 胸へ集めかけた魔力を止める。

 散らばった流れを無理に元の道へ戻さず、身体が動く先へ流す。


 三歩目。

 後ろへ下がった左足へ、腹から戻った魔力が届く。

 踵を地面へ落とさず、足裏全体で衝撃を受ける。

 腰が沈む。

 上体は大きく後ろへ傾いたまま。

 それでも、胸を通り過ぎた魔力が腹へ落ち、右足へ向かう。


 四歩目。

 右足を斜め後ろへ置く。

 崩れた身体の向きに合わせて腰を回し、正面へ戻る。

 魔力は細い。

 今にも途切れそうなほど乱れている。

 だが、足から腰へ戻ってきた。

 腰から背中。

 背中から肩、腕、掌へ。

 掌から胸へ帰り、腹へ沈む。

 ようやく身体が止まった。

 肺へ空気を吸い込む。

 胸に鈍い痛みが走った。

 それでも、呼吸によって魔力が途切れることはない。


 顔を上げる。

 リヴィアは、最初に掌を放った場所から一歩も動いていなかった。


「……残っています」


「ああ」

 初めて、リヴィアが迷わず認めた。


「身体も足運びも完全に崩れていた。それでも、一本だけ流れを残したね」


「今の力が、《気》なんですか」


「勘違いするな」

 リヴィアの身体を覆っていた揺らぎが消える。


「今ので《気》へ近づいたと思うんじゃないよ」


「ですが、《気》を受けても魔力を巡らせられました」


「攻撃を受けても、魔力の流れを一度残せただけだ。《気》を感じ取ったわけでも、命脈へ触れたわけでもない」


「はい」


「それでも、次へ進むには十分だ」


 リヴィアが地面の箒を拾い上げる。


「明日からは、属性を使え」


「属性を、ですか」


「ああ」


「昨日まで、属性へ逃げるなと言っていたはずですが」


「逃げるなとは言った。捨てろとは言っていない」


 箒の柄が、俺の脚、胸、肩を順番に指す。


「《速》、《瞬》、《剛》。お前は三つの強化を使うたび、一度流れを切り、別の属性へ乗り換えている」


「それを、切り替えずに使うんですか」


「一つの流れの上へ重ねろ」


 足には風。神経には水。筋肉には火。

 今までは必要な力を得るたび、別々の場所へ属性魔力を流していた。


「無属性の魔力を巡らせたまま、三属性を使えということですか」


「できないか」


「難しいとは思います」


「聞いているのは、難しいかどうかじゃない」


 答えは一つしかない。


「やります」


「なら、相手も必要だね」


 修練場の門が、外側から開いた。

 夕日に照らされた門の向こうに、カイウスが立っている。

 両腕には、黒い武装手甲。

 修練着の袖を肩まで捲り上げ、いつでも戦える姿だった。


「随分と待たせたな」


「予定より時間がかかった。こいつが三撃目で何度も止まるからね」


「三撃まで進んだのなら、以前よりはましだ」

 カイウスが修練場へ入る。


「リヴィアさんが呼んだんですか」


「ああ。無属性の流れを繋いだ後は、お前が相手をした方が都合がいい」


「なぜ、カイウスさんが」


「お前へ、その三つを別々に使わせたのは俺だからだ」

 カイウスは俺の前で立ち止まる。

 右拳を握り、左の掌へ打ちつけた。


「次に会ったとき、同じ場所で魔力を途切れさせていたら殴ると言ったな」


「覚えています」


「なら、明日は俺がその流れを壊す」


 初めて拳へ力を届ける方法を教えてくれた男が、今度はその流れを壊すために立っている。

 俺は両足を開き、カイウスへ向き直った。


「今度は、途切れさせません」


「言葉だけで繋がるなら、四日も付き合っていない」

 カイウスが僅かに口元を上げる。


「明日、証明してみろ」


「はい」


 無属性の魔力を、もう一度全身へ巡らせる。

 今日繋いだのは、崩されても残る細い流れだけだ。

 明日からは、その上へ風、水、火を重ねる。

 別々の力へ切り替えるのではない。

 一つの身体を巡る、一本の流れとして。

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