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星すら斬るまで、俺は振り続ける  作者:
第一章 契約.....そして王都へ
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第17話 黄昏の帰路

森を抜けた頃には、空は茜色に染まっていた。

夕日が木々の隙間から差し込み、長い影を作っている。

レグルスは肩で息を吐いた。


「疲れた……」

率直な感想だった。


巨大ゴブリン

そして、魔術師(コードン)との戦闘、《爆炎陣》(フレイムバースト)。

今までで一番激しい戦いだった。


身体中が痛い、特に肩、フレイムランスを掠めた火傷も残っている。


「よく生きてたわね」

腰にぶら下がっているセレスが言う。


「他人事だな」


「本だからね」


「便利な返事だ」

レグルスは苦笑した。


森の出口が見える、その向こうにはベルグラードの城壁。

夕日に照らされた石壁は黄金色に輝いていた。

やっと帰ってきた、その実感が少しずつ湧いてくる。



街へ入る頃には黄昏時になっていた。

石畳の道を帰宅を急ぐ人々。

夕食の準備をする露店、パンの香りや肉が焼けるの匂い。

香辛料の香り。

森の緊張感とは別世界であった。


子供たちが走り回り、商人が店じまいを始める。

鍛冶屋からは金属を打つ音が聞こえる。


「平和だな」

レグルスがそっと呟く。


「平和だから街になっているのよ」

セレスが返す。


「近くで毎日《爆炎陣》(フレイムバースト)でも使用されれば誰も住まないわ」


「それもそうだ」

セレスの言葉に思わず笑ってしまった。


依頼の報告のためギルドへ向かう。

見慣れた二階建ての建物、夕方のギルドは昼より賑やかだった。

依頼帰りの冒険者たちが酒を飲んでいる。


笑い声。怒鳴り声。依頼報告。

様々な声が飛び交っていた。


扉を開いて中に入るとレグルスに一瞬だけ視線が集まる。

森の異変調査へ行った新人、依頼に失敗して逃げ帰っていたのかそんな認識なんだろうか。

その一瞬の視線に答えることはせずレグルスは受付へ向かった。


「あら」

優しい受付嬢が目を丸くした。


「お帰りなさい。結果はどうでしたか?」


「ただいまです」


レグルスは袋を置く。

袋の中には討伐証明であるゴブリンの耳、魔物を操っていた鈴が入っていた。


受付嬢が固まった。

「……成功ですか?」


「多分」


「多分?」


「俺もよく分かってないので」


その返事に受付嬢が苦笑する。


「一応首謀者と思われる魔術師を気絶させて森に拘束しています。冒険者くずれだと思いますが、ギルドの職員で対応できますか。」


「一人なので搬送出来ませんでした。」


「拘束場所は森の中をそのまま進めば、巨大な樹木がありますのでその根元に拘束しています。」


「分かりました。直ちにギルド職員を派遣しますね」

と受付嬢は少し慌てた様子で返答した。


周囲の冒険者たちもざわついていた。


「本当に解決したのか?」、「新人だろ?」


黒髪の受付嬢もやって、若干微笑みを浮かべた様子で


「依頼の達成おめでとうございます。疲れている様子なので報酬は後日にしますか」

と話しかけてきた。


「そうですね。明日にでもギルドに顔を出します。報酬はその時にでもお願いします。」

今は疲れていたため、レグルスはそう答えた。


「お疲れ様でした」


2人の受付嬢がレグルスに対して告げる。


「今日はゆっくり休んでください」


その言葉が妙に嬉しかった。



ギルドを出る。

街はすっかり夕暮れで空には一番星。街灯に魔導灯の光が灯り始める。


「腹減ったな」

レグルスが言った。


「私は減らないわ」


「羨ましいな」


露店街へ向かう。

いつも行列ができている店があった。


ベルグラード名物。

BLTサンド。厚切りベーコン。ロースト肉。トマト。野菜。

それらを香ばしく焼いたパンで挟んだ一品だ。


「これ二つ」


「本は食べれないだろ。」


「気分の問題よ」


本がしゃべることに店主はびっくりするが、冒険者なら不思議な事もあるかと思い、レグルスとセレスのやり取りを見て店主が笑う。そして

「注文は」


「BLTサンドとアイスティーをひとつずつください」

と注文して、レグルスはサンドとアイスティーを受け取り、近くの広場のベンチへ座る。

夕風が気持ちいい。

一口かじる、肉汁が溢れた。


「うまっ」


「そうね」


「食ってないだろ」


「雰囲気で分かるわ」


「便利だな」


二人はしばらく無言だった。


戦いの後の静かな時間が悪くない。



宿へ戻る。


いつもの部屋。


木製の机。簡素なベッド。

窓の外には夜のベルグラード。

ようやく一息つける場所だった。


レグルスは椅子へ腰掛けた。


刀を机へ立てかけて、そして深く息を吐く。


「終わったな」


「まだ終わってないわよ」


セレスが言う。


「確認するんでしょ?」


「……だな」


レグルスは頷いた。


今日の戦いで何かが変わった。その確信があった。


「ステータス」


金色の光が浮かぶ。契約者だけに見える世界。

━━━━━━━━━━

レグルス・クレハルト

黄道十二宮契約者 獅子宮適合者

レベル9

━━━━━━━━━━

称号

【ネメアの獅子】 《獅子の誇り》

・身体最適化効率上昇

・恐怖耐性上昇

・威圧耐性上昇

━━━━━━━━━━

基本行為

切る Lv5

突く Lv1

叩く Lv1

弾く Lv1

━━━━━━━━━━

努力蓄積13,426

━━━━━━━━━━

派生技

《袈裟斬り》

━━━━━━━━━━


レグルスは思わず目を見開いた。


「出た……」

派生技、戦闘中は余裕がなかったが、確かに表示されている。


《袈裟斬り》

意識を向ける。

すると情報が流れ込んできた。


斬撃の角度。重心移動。踏み込み。呼吸。

戦闘中に自然と使えた一撃、それが正式な技として登録されていた。


「なるほど」

レグルスは小さく笑った。


「強くなった気分は?」

セレスが聞いてくる。


「気分じゃない、実際に強くなってる」


その言葉にセレスも少しだけ笑った。

「調子に乗らないことね」


「分かってる」

レグルスはステータス板を閉じた。


確かに成長した、だが、今日の戦いを思い出す。


巨大ゴブリン、ゴードン。《爆炎陣》(フレイムバースト)。

危ない場面はいくらでもあった。


「反省会でもするか」

レグルスが言う。


「そう来なくちゃ」

セレスが満足そうに答えた。


「まず《炎槍》フレイムランスを食らった件からね」


「そこからかよ……」


「当然よ、でもよくやったわ」

セレスが珍しく褒めた。

レグルスは苦笑した、強くなったがまだまだ未熟だ。

だから振り続ける、だから積み上げる。そうしていつか、もっと遠くへ届くために。


セレスが急に不満そうな声を出した。


「ところで」


「ん?」


「いつまで私はそこなの?」


レグルスが腰を見る。


ベルトから吊るされたセレス。


いつもの位置だ。


「いつも通りだろ」


「揺れるのよ」


「我慢してくれ」


「あと歩くたびに腰に当たる」


「知らん」


「もっと素材のいい、質のいいベルトを作りなさい。」


「本のためだけに?」


「当然よ」

セレスは堂々と言った。


レグルスはため息を吐く。


その瞬間。


視界の端に金色の文字が浮かんだ。


『機能解放条件達成 獅子宮第1階層の一部が解放されました。』


レグルスの目が細まる。

セレスも気付いたらしいが珍しく黙り込んでいた。

窓の外では夜空に星が輝いている。そして獅子座の星々が、静かに瞬いていた。

次なる成長への扉が、少しずつ開こうとしていた。


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