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第13話 初報酬

ベルグラードへ戻った頃には、空が赤く染まり始めていた。

レグルスは森を振り返ってみたが、結局、最後まであの違和感は消えなかった。

十一体ものゴブリン。

森の奥から聞こえた鈴の音。

そして一斉に引いていった群れ。


何かがおかしい、だが今は考えても答えは出ない。


「依頼報告が先だな」

そう呟き、街へ足を向けた。



冒険者ギルド。


夕方ということもあり、ホールは賑わっていた。


依頼帰りの冒険者たちが酒を飲みながら騒いでいる。


レグルスは受付へ向かった。


「あ、お帰りなさい」

優しそうな受付嬢が微笑む。


「依頼の報告です」

討伐証明の耳を並べる。


一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、七つ。

受付嬢が固まった。


「……七体?」


「はい」


「依頼書では二~三体でしたよね?」


「実際はもっといましたが」


周囲の冒険者たちも反応する。


「七体?」、「新人がか?」、「本当かよ」

ざわめきが広がる。


レグルスは肩を竦めた。

別に自慢するつもりはない。

ただ事実を話しているだけだ。


その時。

隣の受付席から声が飛んだ。


「少し失礼します」

黒髪の受付嬢だった。

以前、登録試験の時に厳しい目を向けてきた女性だ。


彼女は耳を確認して、しばらく無言で何かを考えている様子。

そして。

「……確かにゴブリンです」

周囲が静かになる。


彼女はレグルスへ視線を向けた。


「新人で七体討伐は珍しいですね」

前回ほど冷たい口調ではなかった。


ほんの少しだけど、評価が変わったのかもしれない。


「運が良かっただけです」


「運だけでは生き残れません」


短い言葉。

だが不思議と悪い気はしなかった。

報酬の銀貨を受け取る。

ジャラリ。

手の中で鳴る音が心地良い、初めて自分の力で稼いだ金だ。


「お疲れ様でした」

レグルスは軽く頭を下げた。



ギルドを出る。

夕暮れの街は少し静かになっていた。

腹が減った。


そう思った時。


「ご飯にする?」

セレスが言った。


「そうだな、初報酬があるしな」


「そうね」


二人の意見は珍しく一致した。


向かった先はいつもの酒場で木製の扉を開く。

肉の焼ける匂いや香辛料の香り。

そして、笑い声。

レグルスは空いている席へ座った。


「エール一杯とおすすめを」

店員が「わかりました。」と頷いて去っていく。


やがて料理が運ばれてきた。

焼いた肉、黒パン、野菜の煮込み。

そしてエール。


レグルスはジョッキを持ち上げた。


「冒険者初日お疲れ様」


「誰に言っているんだ」


「私とあなたよ」


レグルスは苦笑した。

そして一口飲む、苦い。

だが悪くない。


「どう?」


「大人になった気分だな」


「単純ね」とセレスが笑う。

レグルスも笑った。

こうしていると普通の十六歳だ。


いろいろと考える事はあるが今はただ飯がうまい。

それだけだった。



帰宅したのは夜になってからだった。

ベッドへ腰掛ける。

そしていつものように呟く。


「ステータス」

金色の光が浮かぶ。

契約者だけに見える世界。

━━━━━━━━━━

レグルス・クレハルト


黄道十二宮契約者

獅子宮適合者

レベル8

称号 【ネメアの獅子】 

《獅子の誇り》

・身体最適化効率上昇

・恐怖耐性上昇

・威圧耐性上昇

━━━━━━━━━━

基本行為


切る Lv4


突く Lv1


叩く Lv1


弾く Lv1

━━━━━━━━━━

努力蓄積 12,841

━━━━━━━━━━


レグルスは満足そうに頷いた、確かに成長している。

少しずつ、だが確実に。

そして。

その下に見慣れない文字が追加されていた。

━━━━━━━━━━

派生技解放条件達成率 87%

━━━━━━━━━━


「……ん?」


レグルスは目を細めた。

昨日までは無かった項目だ。


「セレス」


「なに?」


「派生技って知ってるか?」


数秒の沈黙、嫌な予感がした。


「知っているわ」


「教えろ」


「嫌よ」

即答だった。


「なんでだよ」


「自分で知った方が面白いじゃない」


「絶対それ理由じゃないだろ」


セレスは楽しそうだった。

レグルスはため息を吐く。

だが怒る気にはなれない、どうせ近いうちに分かる。

そんな気がした。


窓の外を見る。

夜空には星が輝いていた。

その中の一つ、獅子座の一等星。

レグルスの名を持つ星が、静かに瞬いていた。


そして同じ頃。

ベルグラード近郊の森の奥深く。

誰も知らない場所で。


チリン――。


再び鈴の音が鳴る、闇の中で何かが動き始めていた。


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