第11話 最初の依頼
翌朝。
レグルスは朝早くから冒険者ギルドへ向かっていた。
腰には愛刀。
ベルトにはセレス。
そして胸元には新しく手に入れた冒険者証。
Fランク。
まだ一番下だ、だが不思議と嫌な気はしなかった。
「緊張してるの?」
セレスが聞いてくる。
「少しだけな」
「地下遺跡でゴブリンシャーマンと戦った奴の台詞じゃないわね」
「それとこれとは別だ」
レグルスは肩を竦めた。
地下遺跡は生き残るための戦いだった、だが今日は違う。
初めて正式な依頼を受ける。
冒険者としての第一歩だ。
ギルドへ入ると、昨日の受付嬢が笑顔で迎えてくれた。
「おはようございます、レグルスさん」
「おはようございます」
「依頼は決まりましたか?」
レグルスは掲示板を見てみる。
薬草採取、荷物運搬、森の巡回。
様々な依頼が並んでいる。
だが視線は自然と一枚の依頼書へ向かった。
『森周辺のゴブリン討伐』
報酬三千ギル、討伐証明として右耳を提出。
推定二~三体。
「これで」
受付嬢は少し驚いた顔をした。
「ゴブリンですか?」
「問題ありますか?」
「いえ。ただ登録初日で選ぶ方は少ないので」
普通は薬草採取から始める、それが新人冒険者の常識だ。
だがレグルスには地下遺跡での経験がある。
戦ったことがない相手ではない。
「受けます」
受付嬢は少し考えた後、依頼書へ判を押した。
「お気を付けて」
「はい」
依頼受注完了、レグルスはそのまま街の北門を抜けた。
目的地はベルグラード近郊の森、徒歩で一時間ほどの場所だった。
春の風が吹く、木々が揺れる。
鳥の鳴き声が聞こえる、平和な景色だった。
「本当にこんなところにゴブリンなんているか?」
「いるから依頼になってるんでしょ」
セレスが呆れた声を出す。
その時だった。
ガサッ、茂みが揺れる。
レグルスは足を止め、音の方向を見る。
そして、現れた。
緑色の肌、黄色い瞳、醜い顔。
ゴブリンだ。
「一体か」
地下遺跡で見た個体と大差ない。
だが以前とは違う、恐怖がない。
レグルスは静かに刀を抜いた。
『敵性個体確認』
『基本行為補助開始』
視界の端に文字が浮かぶ。
ゴブリンが吠えて飛びかかってくる。
レグルスは一歩踏み込み、刀を振る。
ただそれだけ。
だが。
地下遺跡の時よりも剣筋が自然だった。
一閃。
ゴブリンが倒れる。
「終わりか」
思わず呟いた。
以前なら必死だったのに今は違う、少しだけ成長している。
そんな実感があった。
『基本行為:切る』
『熟練度上昇』
レグルスの視界に文字が流れる。
自然と笑みが浮かぶ。
「ちゃんと上がるんだな」
「当たり前でしょ」
セレスが言う。
「積み重ねた分だけな」
レグルスはゴブリンの討伐証明を回収した。
依頼はあと二体。
そう思った時だった。
森の奥から再び音が聞こえる。
ガサッ。
ガサガサッ。
一体ではない、二体でもない。
複数。
レグルスは眉をひそめて思い出したところ、依頼書には二~三体と書かれていた
だが
聞こえる足音はもっと多い
明らかに。
「……おかしいな」
刀を握り直す。
森の奥を見つめる。
木々の隙間、その暗闇の中で、無数の黄色い瞳が揺れていた。
まるでこちらを見ているかのように。
『警告』
『推定個体数修正』
『十一体』
レグルスの表情が引き締まる。
新人向け依頼のはずだった、だが。何かがおかしい。
森のゴブリンたちに、異変が起きている。
そんな予感がした。




