第3話 俺のマッサージでなすがままの『氷の女王』
今、北条先輩は我が家のふかふかなカーペットの上にうつ伏せになっている。
彼女が着ている少し大きめの白いTシャツが少しはだけて、透き通るような白いうなじと、ひどく凝り固まっているであろう肩のラインが露出していた。
ノーマルな男子として、学校で一番美しい先輩が真夜中に自分の家で無防備に横たわっている光景を見れば、当然心臓の鼓動は少し早くなる。
しかし、身体的リラクゼーションの芸術を信奉する施術者として、俺の頭の中にある解剖学の本能ははるかに優位に立っており、こんな光景を見た程度で負けることはない。
「夏沢……くん……」彼女が弱々しく呼んだ。その声は、枕代わりにしている彼女自身の腕に遮られてくぐもっていた。「て、手はどこに置けばいいの……?」
「体の横にまっすぐ伸ばしておいてください、先輩。握りこぶしは作らずに。全部の力を抜いてくださいね」
俺は彼女の横に膝をつき、触れた時にびっくりさせないよう、両手のひらをこすり合わせて自然な熱を作った。
「背中の上の方から始めますね。先輩の『僧帽筋』、もうレンガみたいにガチガチですよ」
「う、うん……でも、優しくしてね……」
「深呼吸して……はい、吐いて」
彼女が息を吐き出すのに合わせて、俺は首の付け根の下にある筋肉の結節点に両親指を正確に当て、一定の圧をかけた。
「ひ、ひぃっ……!」
北条先輩の体が反射的に強張り、スウェットパンツに包まれた両足が宙を少し蹴った。
「い、痛い……うぅ……夏沢くん、そ、それちょっと痛い……」
「台本の前でずっと猫背で座り続けていたせいで、そこに乳酸が溜まっているからですよ、先輩。少し我慢してくださいね。今から肩の関節を調整します。もう一度深呼吸を」
俺は手を彼女の肩甲骨のあたりに滑らせ、正確な隙間を見つけると、手のひらの付け根で正確な押し込みを加えた――。
ポキッ!
とても小気味良い小さな骨の鳴る音が、リビングの静寂を打ち破った。
「はぁぁん……♡」
とても甘く、安堵に満ちた、そして――正直に言えば――とてつもなく官能的な長い吐息が、北条先輩の小さな唇から不意にこぼれ落ちた。
「―――――」
「―――――」
「な、な、な、なんなの今の変な声は?!」
北条先輩は突如としてパニックに陥った。彼女はガバッと頭を上げ、両手で口元を覆い隠した。
顔は真っ赤に染まり、耐え難い羞恥心をこらえるように目を潤ませていた。
「あ、あんた、わざと変なツボ押したんでしょ?! このエロ後輩! わ、私、生まれてからあんな恥ずかしい声出したことないんだからね!」
「急に交感神経がリラックスしたことによる、純粋で自然な反応ですよ、先輩」さっきの吐息を聞いて俺自身の耳も少し熱くなっていたが、できるだけ冷静に答えた。「我慢しないでください。楽になるなら声に出していいんですよ。どうせここには俺たちしかいないんですから」
「が、我慢しないわけないでしょ、バカ! い、妹さんに聞こえたらどうするのよ?!」
「小春は一度寝たら仮死状態のシミュレーションみたいになるんで、絶対に起きませんよ」
俺は再び彼女の背中に手を置き、よりゆっくりとした揺れるようなリズムでマッサージを再開した。
この銀髪の先輩がパニックと羞恥心でまだ荒い息をしていることに気づき、俺は少し彼女の気を逸らすことにした。
「先輩のこのコリ、うちのばあちゃんを思い出しますよ」
「……おばあちゃん?」腕の陰から彼女が呟いた。その声のトーンは少し落ち着きを取り戻していた。
「はい。さっきも言いましたけど、三鷹に引っ越してくる前、俺は田舎に住んでたんです。ばあちゃんは凄腕の伝統的なマッサージ師で。俺が小さい頃から整体や小顔矯正の技術を教えてくれたのは、ばあちゃんなんです」
「え……? じゃ、じゃあ、ネットの変な本とかエロ動画で覚えたわけじゃないの?」
「はぁ? 当然ですよ。なんですかその言いがかりは……」俺は腰の経絡のツボを押し込みながら言い返した。
コキッ。
「んんっ……くぅ……」北条先輩は下唇を噛み、再び声が漏れないように必死にこらえていた。
「昔、ばあちゃんは畑仕事から帰ってくると、よく腰が痛いとか首が凝ったとか愚痴をこぼしてて」俺はマッサージのリズムと話のテンポを合わせながら、気楽に続けた。「だから、俺に教えてくれって頼んだんです」
「ばあちゃんは、緊張している神経の場所や、痛みを伴わずに骨格を調整する方法、そして指先のタッチでどうやって温もりを伝えるかを、根気よく教えてくれました。全部、毎晩ばあちゃんをマッサージしてあげたかったからなんです」
「あ、ああ……そう、そういう事情があったのね……」
北条先輩の肩の緊張が、ゆっくりと溶け始めた。防衛的な姿勢も少しずつ緩んでいく。
「案外……あんたっていい子なのね、夏沢くん。あんたの趣味について変な勘違いしてて、ごめんなさい」
「いいですよ。健二やクラスの連中から変なやつ扱いされるのには慣れてますから」
俺は彼女の肩をポンポンと二回軽く叩いた。
「さて、背中と背骨の調整はこれで完了です。次は、仰向けになってください、先輩」
「え? あ、仰向け……?」
「はい。仰向けです。次は小顔矯正の技術を使って、顔の筋肉、顎、そしてこめかみをほぐす番です。完璧主義者の最大のストレスは、大抵頭に溜まるんですよ」
まだ少しぎこちなさを残したゆっくりとした動作で、北条先輩は体を反転させて仰向けになった。
今や彼女の顔は真っ直ぐ俺の方を向いている。サファイアブルーの瞳はトロンとした眼差しで俺を見つめ、目の下の黒いクマはまだはっきりと残っていたが、その表情はコンビニにいた時ほど硬くはなかった。
俺は体を前に乗り出し、彼女の頭の左右に両手を添えた。
「目を閉じてください、先輩」
彼女は文句一つ言わずに従った。まぶたが固く閉じられ、長くてカールしたまつ毛が微かに震えている。
人差し指と中指の指先を使い、俺は彼女のこめかみ周辺に優しく、しかし力強いストロークを施し始めた。
こめかみから指を顎のラインに沿って滑らせ、頬の周りのツボを押し、そしてリズミカルな円を描きながら額の方向へ引き上げていく。
これがコルギ(小顔矯正)――緊張を和らげるだけでなく、脳への血流を瞬時に促進させる日本の伝統的な顔面マッサージだ。
「うぅっ……んんっ……」
ほんの数秒の間に、『氷の女王』の最後の防壁は完全に崩れ去った。
「ま、マッサージ……すっごく気持ちいい……夏沢くん……♡」北条先輩は少しろれつが回らない様子で呟き、その声は今やひどく甘ったるく、少し掠れていた。
彼女は無意識に頭を傾け、より深いタッチを求めるかのように、俺の手のひらに頬をすり寄せた。
「こめかみの緊張がだいぶ解けてきましたね。星蘭堂高校の『氷の女王』も、案外ちゃんと溶けるんですね?」
「う、う、う、うるさいっ……黙ってマッサージして……もっと……やめないで……」彼女は半ば泣きつくように返し、もはや先輩としての威厳など微塵も気にしていないようだった。「ねえ、夏くん……」
「なんですかそれ? 急に呼び方が『夏くん』に変わりましたけど?」
「わ、私以外の誰かに……こんなに気持ちいいマッサージしちゃダメだからね……うぅっ……んんっ……これ反則……中毒になっちゃいそう……」
「え、えっ!? もう一回――?」
「んんっ……も、もう十分……気持ちよすぎるよぉ……♡♡」
俺は、この厳格で有名な演劇部部長の意外な一面を見て、ただ薄く微笑むしかなかった。
誰が想像できただろうか。彼女のその完璧な仮面の裏に隠されているのが、癒やしと気遣いに飢えている、ただの脆い少女だったなんて。
◆
それから十五分が経過した。
その夜の緊急マッサージセッションは、ついに完全に終了した。
「気分はどうですか、先輩?」
北条先輩は、ゆっくりと目を開けた。
数回まばたきをして、まるで人生で最も深い眠りから今目覚めたかのように、俺のリビングの天井を見つめた。
それから彼女は起き上がり、両腕を上へぐーっと伸ばした。
関節が硬く鳴るような音はもうしない。彼女の姿勢は、無理をしなくても自然に背筋が伸びていた。
先ほどまで青白かった顔には新鮮な赤みが戻り、血流が改善されたことで、彼女の本来の美しさが照明の下で何倍も魅力的に輝いていた。
「こ、これ、すごいわ……」彼女は信じられないといった様子で自分の頬に触れながら呟いた。「頭痛が完全に消えてる……肩もすごく軽いし……目もすごくすっきりしてよく見えるわ……」
彼女は振り返って俺を見た。頬の赤みはもはや羞恥心からくるものではなく、健康的な血行の良さによるものだったが、数分前の自分の甘えっぷりを自覚して、再び少し気まずそうな雰囲気に包まれているのが俺には分かった。
彼女は小さく咳払いをし、顔を少し横に背けて、いつもの不機嫌そうな得意の表情を再び作ってみせたが、今となってはそれはただの無理をしたツンデレにしか見えなかった。
「ま、まあ……あんたの腕もなかなか悪くないわね。わ、私のプライドを捨ててあんたのカーペットに寝転がった甲斐はあったわ」
「悲しいなぁ……ただ『悪くない』だけですか? さっきは中毒になりそうだからもっとマッサージしてくれって喚いてた人がいたのになぁ」
「そ、そ、それは意識が半分飛んでたからよ!! 今のことは全部忘れなさい、分かったわね?!」彼女はパニックになって叫び、小さなソファのクッションを俺の顔面に直接投げつけた。
俺は笑いながらそのクッションを受け止めた。「あははは……先輩が元気を取り戻してくれて良かったです」
ふと、俺の視線がテレビの上に掛けられたクラシックな掛け時計へと向いた。
短い針はすでに「1」の数字を指していた。
「あ……これ、まずいですね」俺は小さく呟いた。
「どうしたの?」北条先輩は不思議そうに尋ねた。
「もう深夜の1時過ぎですよ、先輩。吉祥寺へ向かうJR中央線は、とっくに終電が終わってます」
「え、えぇっ?! じゃ、じゃあ私どうすればいいの?! こんな時間に三鷹から吉祥寺まで歩いて帰るなんて無理よ?!」
「もちろん無理ですよ」俺は立ち上がり、Tシャツのしわを軽く伸ばしながら答えた。「俺が家まで送ります」
「お、送るって?!」
「はい。表の通りでタクシーを拾うか、もし捕まらなかったら二人で歩きましょう。責任ある男として、そして後輩として、こんな深夜に女の先輩を一人で帰すわけにはいきませんから」
北条先輩は少しの間黙り込んだ。彼女は下から俺を見上げ、少し口を開いたままだったが、やがてその美しい顔に、とても、とても優しげな薄い微笑みが刻まれた。
「夏沢くん」
「はい?」
「ありがとう、ね……。今夜は、本当にあなたに救われたわ」
その不機嫌さの欠片もない心からの言葉は、なぜか今度は俺の胸に奇妙な緊張感をもたらした。
……どうやら、今夜が我が校の『氷の女王』との長い交流の始まりになりそうだな?




