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第六話:鏡の破片と本当の顔

POV: 犬神 栞 (Inugami Shiori)


身体中の縫い目が、腐った果実のように弾け始めている。

親戚たちの「古い肉」は、私の身体の中でドロドロの膿へと変わり、私自身の魂を内側から溶かしていく。

私は震える手で、父の診察室から盗み出した特大のスカルペルを握りしめた。


「……ねえ、パパ、ママ。次は私の番だよね?」


私は鏡の前に立つ江戸と朱里の背後に忍び寄った。彼らは今、私の頬の皮を貼り付けた新しい「顔」を愛おしそうに眺めている。

私は躊躇ちゅうちょなく、二人の背中に刃を立てた。


「ああ……栞、何をする……!」


二人の傷口から溢れ出す血は、もはや人間のそれとは思えなかった。それはひどく冷たく、まるで京都の冬の最中に凍りついた氷水のようだった。


「パパ、ママ……。私たちはいつも一緒だって、ずっと言ってたよね?」


二人を破滅させるのに、もはや刃物など必要なかった。ただ、「真実」を見せつければいい。私は床に落ちた大きな鏡の破片を拾い上げ、それを二人の顔に向けた。

鏡に映っていたのは、人間の顔ではなかった。そこにあるのはただの「虚無」――長年、多くの人々から奪い取ってきた、アイデンティティの欠落した真っ白なキャンバスだった。


二人は悲鳴を上げた。それは肉体的な痛みからではなく、自分たちの存在エキシスタンスそのものを喪失したことへの絶望だった。私は二人を、自らが作り上げた幻影の迷路に置き去りにした。彼らの首を今まさに絞め殺そうとしているのは、自分たちが紡いできた嘘の糸だ。


「さようなら、お父さん。さようなら、お母さん。この鏡の中で、二人は永遠に結ばれるのよ……決して現実にはなれない、ただの影としてね」


私は背を向け、その部屋を後にした。

偽りの栄華の中で、朽ち果てていくがいい。


PCの前でこの物語を追いかけていた諸君。朝からこの陰惨な結末を読んで、どんな気分だい? 画面に映る自分の顔をよく見てみるとがいい。その無表情な顔は、果たして君自身の意思で作られたものかな、それとも誰かに『着せられた』ものかな? 現実から逃げるために小説を読んでいたつもりが、いつの間にか君たちの現実もこの鏡の破片のように脆くなっているかもしれない。吐き気と共に、君たちの『普通』の日常へ戻るがいい。この物語を最後まで読んでしまったことを、鏡を見るたびに思い出すことになるだろう。

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