タイトル未定2025/08/22 23:28
「いま卯月が如月に言ってたの、みんな聞いたよね。『人間ベースだから気づかない。死人の気配に敏感な幼なじみたちも、先導者も、知のキューブの持ち主も』……ってとこ。この監視カメラが映してるとこってさ、みんなとかなり近いところでしょ。角度によっては見えないかもだけど、相手が死人なら間違いなくみんなハッとする距離じゃん」
「……何が言いたいの」
「Death gameの中で卯月と話した未来ちゃんも、政府との会議で何回か長月と話してる凪も、本当に気づかなかったのか、僕は疑問に思ってるだけ」
「気づかなかったよ。少なくとも、僕はあの人を、とても誠実な頼れる大人として見ていた。あの人が、司令官が予想するように産月の一人だったなら……、僕は、もう誰のことも信じられない」
「最初はさ。普段ニッコニコのくせにたまーにこえぇ顔するし、隠しごとすぐ見抜かれるし、なんだコイツヤベェって思ったよ。いっちゃん最初はそれは否定しねぇ」
けど、と語気を強めた。
「チームでやってく中で、あーこいつすげぇって純粋に思った。俺が見落とすような小物見つけてくるし、危ねぇと思ったら勝手にフォロー入ってくるし、くっそ時間に厳しいし」
「ただの悪口じゃん……」
「共通項は、和風月名……」
ユキさんが、膝の上で仲良く寝ているリイ、マユを撫でながらつぶやいた。
「こねくり回さずに名前をつけているのだとしたら、残り九人。睦月、弥生、皐月、水無月、文月、葉月……」
「長月飛ばして、神奈月と霜月、師走よユキちゃん」
「そうですね。さすがです、結衣博士」
「ぐふふっ、ユキちゃんに褒められたー!」
「雪翔くん、結衣さんにあまり優しくしないでください。お調子のりがさらに調子に乗ります」
騒ぎそうな結衣博士の顔の前で、国生先生が拳を作って見せる。途端におとなしくなる結衣博士に満足したらしく、国生先生は幾分優しい声で「いい子ですね」と言った。
「土屋隆一郎君。あなたは、大切な人を失いそうになったらどうしますか。守れるものなら、守ろうとするんじゃありませんか」「私もそうなんですよ」「私にも守りたいものがある。ですから、結構はその日以外にありえない。どうぞ、ハズレを守るための準備に当ててあげてください」
俺はりんごパイの袋を横に置いた。
「信じていいんだな」
師走の目を見て、再確認する。
師走は「えぇ……」と顔を引き攣らせた。接客モードじゃない、表情豊かな嫌そうな顔だった。
「まあそれも、いつになるかわかんねぇどうしていいかわかんねぇ状態だけどさ」
「平行線じゃないですか……」
何も言えないでいると、師走は大きく息を吸って、おっきなため息をついた。
「……あなたと話すのがバカらしくなってきました」
「悪口だ」
「褒めています。こんなに揺さぶられるとは思いもしなかった。失態も失態……、当日を迎える前に私も消されるかもしれませんね」
師走はさらにため息をつく。窓の外をぼんやりと眺める。
「……六月七日。臨世を使ってどうするつもりか、知りたいですか」
師走の意外な言葉に、反射的に顔を上げた。
「話がどうも逸れてしまいましたけど、要するにあなたはハズレを守りたくてここに来たのでしょう。当日の予定をなくすことはできませんが、相応の情報ならお渡しできます」
「……いいのか」
「『誠実な思いには誠実で返す』。これは私と同じくらい『あのお方』と長く付き合っている長月の――昨日あなたたちが話していた、長月操のよく言っている言葉です」
俺の提案を受け入れたから話すわけではないと、師走はご丁寧に否定してくる。さっきの話はあくまで保留。本題に戻ろうと言って、師走は自分が飲んだカップを下げに席を立つ。
戻ってくるついでのようにお菓子を持ってきた。
「当日、臨世のもとへハズレを導く人物が現れます。これは卯月の夢を見る能力の一部、予知夢から得た情報をもとにした作戦です。卯月の予知は絶対。周りがどう足掻こうとも、そうなることは決定しています」
どうぞと個包装のりんごパイを差し出され、条件反射で受け取った。
「決定してるって……本当に何しても変えられないのか」
「ええ、変わらないんです。それが卯月の強みでもありましたから」
ここでいくら語ろうと、俺が行動を起こそうと、必ずそうなる不動の夢。
師走が自分の分のりんごパイを口に入れる。店に置いていても食べたことはなかったのか、「おや、これはなかなか……」と、話そっちのけで空になった個包装の袋をまじまじと見ている。
「なんで、あいつなんだ」
聞き返しながら俺は袋を破る。
「直……臨世じゃなきゃダメな理由があるのか」
「いえいえ、それはないと思いますよ。ただ、臨世はハズレに妙な執着をしていますからね。『あのお方』の復讐心もあって、お眼鏡にかなったのでしょう」
だったら他のやつにしてほしかった。危険な目にあうのがどうしても避けられないというのなら、せめて、未来の精神を抉るような言動をしないやつがよかった。
「……その、未来を連れていく人物ってのは」
甘いりんごパイに頼って、心の平穏を保つ。
「残念ながら、私も知らないのです」
「産月なのに?」
「産月だけじゃありません。『あのお方』でさえ知らない、知っていたのは卯月だけです。ハズレの死を見るのは、あのお方の復讐であり、余興でもありますから。ネタバレを拒まれたのですよ」
人の命を使った余興があってたまるか。
一気に煮えた怒りの矛先を師走に向けそうになって、歯を食いしばった。膝の上に置いた拳を固く握って、冷静になれ、冷静にと心の中で何度も言い聞かせる。
師走は続ける。
「臨世の元へハズレを連れて行き、臨世にハズレを殺させる。当日の予定はシンプルです。それまでは誰もハズレを襲いませんし、もし狙ってくるような死人がいても、それらは私たちの手のものではありません」
「あくまで死人……ってことか?」
「はい。あなたたちが普段戦っているような、何の目的もなく襲ってくる死人です」
その日まで狙わないってどうして言い切れるのか。『あのお方』の気分次第で物事が様々に変えられてしまうなら、その日を迎える前に決行するなんてことも十分あり得そうな話。
見透かしたように、師走は言った。
「私の、わがままだからですよ」
師走はカウンターのほうへ行き、戸棚から白い紙袋を出してくる。さっきこの店から帰って行ったおじさんが持っていたのと同じ、向かい合わせになった雪のイラストが印字された紙袋。
「その日でないと私が困るんです。決行はその日以外にあり得ない。どうぞ、ハズレを守るための準備に当ててあげてください」
おばあさんが着けていた手袋にもこの刺繍が入っていたなと思い出しながら、俺はりんごパイの袋を横に置く。
「信じるよ。ありがとう」
「……あなたという人は。普通、殺しを画策している敵にお礼なんて言いますか」
「『誠実な思いには誠実で返す』だろ」
「はっは。これまた……」
師走は笑いながら店内の商品を見て回っている。帽子、耳当て、手袋、カーディガン、今度はマフラーコーナーへ。
何してるんだろうと思いながら、俺は残っているお茶を飲む。さっきはわからなかった味がわかるようになってる。冷めてしまっているけど、お茶は本当に美味しかった。
「正直に言いましょう。私はあなたのお話とやらを聞き終えたら、それがどんな内容であれあなたを殺すつもりでした」
「急に物騒な話すんなよ」
「急じゃありませんとも。そういう空気を感じ取っていたからこそ、あなたも警戒していたんじゃないですか」
言い換えでずにまごついた。
「産月には変装に長けた者がいましてね。別に殺してしまってもしばらくは騙し通せると思ったんです。」
一旦話をやめ、どちらがお好みですかと師走はマフラーを二つ持ってくる。グレーにオレンジのラインが入ったものと、網目がV字に見える青色のもの。どちらも端には合わせ鏡みたいな雪の結晶がデザインされている。
意味がわからないままグレーのほうを指し示すと、師走は値札を切って紙袋に入れた。
「けれど、やめました。産月を純粋に心配するようなお人好し、殺したって胸糞悪くなるだけですもんね」
どうぞ、とマフラーの入った紙袋を渡され、師走の顔と袋を見比べた。師走はさぞおかしそうに笑う。
「プレゼントです。あなたみたいな人を失うのは惜しい。それを身につけていてくだされば、私と関わりのある者と死人が認識してくれます。無駄に襲われることはないでしょう」
「いや……もらう義理はないけど」
「いいから受け取ってください。久しぶりにスリリングなやり取りができて楽しかった。お礼でもあります」
「それに、お迎えが来ているようですしね」とつけたされ、指さされたほうを見る。そこには、静かにこちらを見る凪さんがいた。隙のない目で、キューブを既に展開して。
「土屋君も、本来ならああいった状態で乗り込んでくるべきでしたよ。産月をあまり舐めないほうがいい。展開する間に殺されてしまいますよ」
「ところで、土屋隆一郎君。あなた、身内を亡くしたことは?」
「え? いや、ない、けど……」
ないはずだった。でも最近それを疑ってる。去年も思った違和感。
誰かを亡くしているような、そんな叫び――。
●そうですか、くらいで一旦話を終わらせ、帰るよう促す。後ろを向いたところで、デリートのために隆の後頭部に手をかざす。凪が手首を掴んで日練り上げる「こんにちは、弥重さん」「猫かぶりは寄せ、産月」
「僕の大事な弟子だ。手を出さないでもらおうか」→師走と思ってないが、産月だとわかってる。「凪さん、なんで……」「昨日の隆一郎の様子を見たら想像つくよ。そうしたやつのところにお前は会いに行く。未来のためなら危険を犯してでも行くだろうってね」「まじないのせいで声もかけられないだろうから、ユキに今日の役を代わってもらって、後をつけさせてもらったよ」
【なんで一人で動いたの
録音なんていたら呪いを受けるから自分の耳が全て
卯月が出入りしていたんだ、産月が博物館を管理していても不思議じゃない
昨日の様子からして、隆一郎がまじないをかけた人物のところへ行くだろうと予想がついた。未来を守るために一直線な隆一郎なら。】
デリートを二人にかけるべく軽くやり合い(ルテインでデリート効かない)、しっかり戦いに発展しそうなところ、師走が『コピーアンドペースト』(凪の技が使えた理由)【拘束】でさっきの一般人を連れてくる→マダーならいいが、一般人を巻き込む戦いを凪はできない。手を出しそうだったのを慌ててひっこめ、「ありゃ、なんでまたここに」「やだなー、○○さん。忘れ物を取りに来たんでしょ? ボケるにはまだ早いですよ」デリートされ、凪、なんかひっかかる感じで、「霜野さん?」→産月であることを忘れてる
「良かったですね。土屋君。天気も荒れてきましたから、一人で帰すのはちょっと不安でした。迎えに来てもらえたなら安心です」
「やはり、思い出しかけていますね」
【デリート】
安心してください。さっきの会話は消してませんから。ただ、あなたが傷つく可能性がある記憶を、今までよりも強めに隠しただけです
店を出るよう促され、紙袋を改めて押し付けられる。半ば強引に持たされた状態でカウベルの音を鳴らしながら店の外に出ると、凪さんに手を引っ張られた。後ろに隠すように、俺と師走の間に入る。
「凪さん、この人は――」
言いかけて、額に痛みが走った。ひび割れる音がする。この人は、善人です――そう言いかけただけでまじないを受けた。
ぐっと、俺を掴む手に力が入る。いいから黙ってろ。そう無言で言われた。
「では、土屋君」
師走はまったく動揺した様子を見せず、凪さんに守られた状態の俺を覗き込んだ。そして、霜野季冬の皮を被って言った。
「またのお越しを、お待ちしています」
●長月きて、元から用意してた【朧げ】発動、隆重体、凪まじない、師走口論




