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強くなれ


ショウ

信用していた人物が、豹変する恐怖。

未来は、自分と関わりのあるもの全ての、『変わる』というそれを過度に恐れるようになった。


凪さんの感情も、同時に入ってくる。

ああ。この子は僕と同じだ。

人の愛を知らない。

人の愛を信じられない。

人の愛が怖い。

人の愛が気持ち悪い。


人の愛情を(しん)から受け入れることができない。受け入れたくない。受けるべきではない。受けてはいけない。


蔑まれて生きるべきであるということが体に染み込んでいるから、それを心が欲するから。


いらない。

いらない。


自分は、必要とされなくていい。

自分を、必要としないでほしい。


入ってこないで。

僕を見ないで。



「ワシは……無意識に、相沢さんを傷つけていたんじゃなかろうか」


「軽率に、好きじゃなんて言って」


「あの子を、傷つけていたんじゃなかろうかっ!?」


「……知らないことを察するなんて、無理だよ」


「それについて、加藤が気に病むなんてしなくていい」


「前に、土屋に言われたんだ。俺と未来の間で、恋愛的な話はしないでくれって」


「土屋に?」


「うん。あいつも、相沢の事が好きだから。……加藤よりも、多分ずっと前からな」


「相沢と疎遠になるのが怖いからかなって思ってたんだけど……違った。相沢を、これ以上傷付けないための土屋の精一杯の自制なんだ」


--------------------------------------------------

【本文】

「体は守れても、心を守れないなら意味が無い!!」


心が守れても体が守れなきゃ意味が無いんだ


体がなければ心があっても意味が無いんだ


体を守ってくれた隆一郎は、立派だよ


強くなったと思った。

強くなれたと思った。

でも……いつだって、足りないんだ。


「いつまでそうしてるつもり?」

「いつまでそこで黙って座ってるつもりなの?」

「未来が寝てる間、ずっとそこで何もしないつもりなの?」

「鈍るよ」

「関係ないでしょう……」


「お前が忘れてしまってるなら思い出させてあげる」

「お前と、鍛錬を始めた時のことを」


瞬間、頬に蹴りが飛んできた。


「ぁ……ッ!!」


体が宙を舞って体が床に叩きつけられ、ゴロゴロと回る。


「思い出しなさい。これぐらい、僕が遠征に行く前までは躱せていたはずだ」


コツコツと床を鳴らす音が、近付いてくる。


「ぶたれるのは、痛いよ」


拳が、真上から振り下ろされる。

仰向けに転がった俺の腹を、何度もその剛腕で殴りつけた。


痛い。


「立て」


痛い。


「立て!」


いたい。


「立て!!」


いたい……ッ!!


「立て!!その憎しみを糧にして、全部乗せて僕に嬲りかかれ!!」

「あぁあああああッ!!」


腹の痛みなんて忘れてしまった。

頭が真っ白のまま勢いよく立ち上がって、突進。

俺を体で受け止める凪さんに、力づくで殴り掛かる。


「そうだ」


殴って、あしらわれる。

体を軽く放り投げられまた壁に背中を打つ。


「かはっ……、あ、あぁあああっ!!」


血反吐を吐いても。


「俺は……っ!」


また拳を受け止められて殴り返されても。


「俺は……ッ!!」


何度叩きつけられて全身が痛みで燃えようとも。


「未来を……っ! 守るだけの強さが欲しい!!」


誰よりも、だれよりも大事なあいつのために。


「あいつの全てを守れるだけの力が欲しい!!」


全力で振るう拳は、一瞬目を見開いた凪さんの左頬に──届いた。


「未来を守ると誓ったのはお前だろう」

「だったら、その悔しさも苦しさも弱さも。全部力に変えなさい」

「全部、自分として受け入れなさい」

「強くなれ」

「強くなれ!!」


凪さんの胸に体を委ねて、咽び泣いた。

弱い自分に腹を立てて、叫んで泣いた。

言葉にできないまま、叫び声を凪さんにぶつけた。

ただただ、ぶつけ続けた。

自分の弱さも。不甲斐なさも。

再度認識した。


凪さんは何も言わなかった。

ただただ、俺を抱きしめ続けた。

力強い腕が、俺を放さなかった。


凪さんは、泣いていた。

俺を抱きしめたまま、泣いていた。

静かに、声を押し殺すようにして。

肩を震わせて、泣いていた。



「アタシの場合は」


強くなれ


「僕は」


強くなれ


「お、俺か?俺はメカがな」


強くなれ


「私は補佐として」


強くなれ


「ワシは」


強くなれ


「俺にも聞くのか。イチのくせに」


強くなれ


「あはは。相手をーーだね」


強くなれ


「いつも言ってることだよ。立て。それだけだ」


強くなれ!!


「……へぇ、ボクにまで鍛錬頼みに来るんや」

「ああ」

「背に腹はかえられん……ってことか? ええの? 殺すかもしらんよ」

「次はやられない」

「勝ちに来た」


デスゲームの産月とも


「ぁ……」


「げほっ……」


初めて、凪さんを、吹き飛ばした。

驚いた顔の凪さんは、俺のキューブの情報を見る。


「……続けよう」


未来が目覚めなくなって、ーー日。

──秋。


遠征先


「ああ、来てくれてありがとうございます」

「相手は」

「奴です。あまりにもーーで仲間も」

「──あっ!危な……」


既に切りつけていた。


崩れていく死人を空中で眺め、重力に抗うことなく地面へと降り立つ。


一発、だった。




「ただいま」


未来の横、座る


「……今日も勝ったぞ」


「いつまで寝てんだよ」


「……俺が、守るよ」


「俺が、守れるようになるから」


「だから……」


起きて。

起きてくれ。


声が聴きたい。

お前の声が聴きたい。


手を握りしめる。


動いた。


起きる。


泣きじゃくる。

動けなくなって、細くなった未来の腕。

動けなくなって、固まってしまった間接。

必死に動かしては、俺を撫でる未来の小さい手が、温かくて。温かくて。

あまりにも、温かくて。

身を委ねた。

放さなかった。

ずっとそのまま、抱きしめ続けた。

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