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パラレル・三章プロット


先導者の日常


(不安定だ。ものすごく)


隣にいるのは、乳房をさらけ出した長髪の女。


(僕は……使()()()()んだろうか)


肩まで布団をかけ、だらんと伸ばされた腕を踏まないようベッドからおりる。

一刻も早く、そこから立ち去りたかった。

女の()が充満する自室よりも、生ゴミの臭いが染み付いた他室へと逃げたかった。




ゴミ屋敷


「なぁぎぃ……」

「大きくなって、ますますあのひとに似てきたわねぇ」


「欲してくれない? おかあさんをさぁ」

「ねぇ、なぎ?」


「お母さん。僕は、父ではありません。僕はあなたの子です。僕があなたを抱くことは、これまでにも、今も、これから先も絶対にありません」


瓶なげつけ、流星守る


「……凪に、当たらないでください」

「自分の欲求のために、凪を傷付けないでください」


「凪って呼んでくれるの?」

「呼ばない。弥重」

「えー、なんで元に戻しちゃうの?」

「お前がそう呼べって言ったんだろ。ちっせぇ頃にさ」

「……ふふ。そうでした」


「まだ親父さんが忘れらんねぇのかよ」

「どうなんだろう」

「癖なのかもしれない。お父さんを捜すのが」


遠征から帰ってきてすぐだから。

それはもちろんそうなのだろうけど、さっきの応対を見る限り、一番の原因は。

一ヶ月ぶりの帰宅にも関わらず、心配でも労うでもなく、恐らく──己の()()()を、ねだられたからなのだろう。


「大丈夫か」

「うん、大丈夫だよ」


「帰ったら、掃除が必要だね」

「手伝うよ」

「いつもありがとう。おかげで家事スキル上がったでしょ?」

「残念なことにな」

「ふふ」


「あの子たちのところに行こう。隆一郎、頑張ったみたいだよ」


変わったことといえば、ーーこと。


ーーこと。


そして何より……


俺が、『特別部隊』の枠の中に入ったことだと思う。


「ごめん、助かった」

「俺に助けられるってのはどんな気持ちだ?」


笑いながら言ってやる。


「ばーか。……感謝でいっぱいだよ」

「あっそ?」


遠征に行くことが増えた。

流石に凪さん達みたいなマジでやばいところには、中学生の俺たちは司令官が行かせないようにしてるみたいだけど

未来と二人で、色々なところを駆け回ってる。


「大丈夫ですか?」


感謝されることが増えた。


「ありがとうねぇ」


それに。


「可愛い彼女さんね」

「……か、彼女じゃないっす」


未来が、色んな地域の人達に、認められるようになってきたのが、嬉しかった。

碧眼。それだけで、判断されなくなってきた。

相沢未来という人間を、皆がきちんと見てくれる人が増えてきて、俺は本当に、心の底から嬉しかった。



「相沢ちゃんの呪いが発動された時は、ボクはまだ生まれてなかったしなあ」

「待ってくれ」

「途中から……なのか?未来の、呪いは」

「なんも知らんねんなぁ。人間は」

「お願いだ、臨世。何か知ってるなら教えてくれ」

「あいつを殺したくないなら、一緒だろ?」

「お願いだ。俺は……あいつと一緒に生きていたい」


--------------------------------------------------

【本文】


見送りみんな

加藤兄弟も

「可愛いじゃろ?」

「ああ」

「にーちゃんの友だち?」

「おう。隆一郎です」

「チロー?」

「そう、チロー。リュウイチロー」


もうすぐ三歳になるらしい妹ちゃん。可愛いじゃねぇか。



「未来ちゃん、照準合わなくなってきてるんだよね。行く前に腕を見るよ」

「ありがとう湊さん」


腕神経叢損傷

二章のやつコピペ


○周り見て回る(売店の師走)



店の電話

「なぜそんなことになっているんです。どうして私に先に聞かなかったのです?」

「まったく、勝手ばかりしますねェ……」

「ああ、いらっしゃいませ!」

「すみませんねェ、取引先と少々トラブルがあって……何かお探しですか?」

「あ、」



その日の夜。


「枕投げをしよう」


そう言い出したのは凪さんだった。


「枕投げですか?」

「そう! お泊まりと言ったら枕投げ。はい、みんな立ってー」

「やらねぇよ。ガキじゃあるまいし」

しょげる凪さん。可愛い。犬みたいだ。


「……やるか」

「ほんと!?」

「明日に支障が出ないくらいにしろよ」

「もちろん!」


〜枕投げ大会〜


「こら皆さん。消灯の時間ですよぉ〜」

「あ? 引率の先生みたいなこと言うなよ」

「これでも教員免許は持ってるんですよねぇ。一応、勤めも学校ですし」


「いってぇ……弥重のやつ全力でやりやがったな」


「あの……流星さん。枕投げあんなに嫌がってたのに、なんで?」


ガキのすることだと何度も凪さんに嫌だ嫌だと言っていた流星さん。凪さんのしょんぼり顔を見た瞬間にやろうって言ったように思った。可愛らしかったからだろうか。

流星さんは湿布を肩に貼りながら、俺に視線を向ける。「あいつには言うなよ」と前置きをして、服を着た。


「弥重な。中学ん時の修学旅行、行けなかったんだよ。……遠征中で」

「行き先は同じ北海道で、いわゆるスキー合宿みたいな内容だったんだけど。かなり楽しみにしてた手前、前日に遠征が決まってさ。かなり落ち込んで」

「だから……なんだろ。代わりじゃねぇけど、あいつが望むなら、こういう時しかできない楽しいこと、させてやりたいなって思っただけだ」


○流星視点

「……可愛い顔して寝やがって。随分安心してるみてーだな」


目もとにかかった、さらさらの明るい髪を少しかきわける。彫りが深くて、長い睫毛が白い肌に影をおとす。

今までに見てきた遠征中の凪は、いつも気を張っていた。

寝ているようで眠れていない。上手く疲労を隠してはいるが、その土地に住む人たちや街を思って精神からの疲労も重なる。人一倍、死人を討伐しているにも関わらず、まともに休めていない凪を、流星はいつも心配している。


(指揮をする立場、敵を倒す最後の砦……重圧も大きいか)


司令官のことをよく凪は心配しているが、同様に自分を心配している人がいることにも気づいてほしい。そんな、声に出して言えない複雑な感情を持ちながら、すーすーと寝息を立てる姿に安堵の息を吐く。


「知らねーぞ? 信用しすぎて食われてもさ」

「へぇ……食べちゃうの? せいちゃん?」

「弥重っ……てめ、起きて!?」

「僕をからかうなんてね。どうしてあげようかなぁ。おしおきかな?」

「ちょ、やめっ……ぎゃははははっ!!」

光の玉がこそばしてくる

「」


「お、お二人って、そういう……?」


顔を赤らめる隆一郎の意図がわからず、流星は凪と顔を合わせる。

凪も同様、わからないらしかった。


「だめだよ〜隆一郎君。二人の時間を邪魔しちゃ〜」



「紫音。死人に対しての恐れを捨てろと言っただろう。彼らに恐怖を抱くな。逃げるな。向き合え」

「誰にだって怖いものはあります。死人に対して恐怖を抱くのも、これまでの事例や増えていく死傷者を見ればもっと怖くもなる。あまり、責めないでください」


少しだけ、一年前の自分と重なる。

死人に対して怖いと思ったことはあまりないけど、すぐそばに強い人がいるというのは結構応えるものがある。俺が、未来に対して●だったように、同じような気持ちなんだろう。


「不器用だからね、ユキは」


「唾の死人と対峙した時も。一人で戦おうとして、やっぱりだめで、あなたに助けられた」

「あの時、放置した味方の死人が気になって、しっかりお礼が言えなかった。ありがとうございました」

仲良くなる


夜中まで、討伐



ありがとありがと私を産んでくれて 鏡音リン歌 うみつき

死人が、感謝した……!?

──喜びの死人だからさ。メイたちとは、生まれが違うんだよ。

脳裏に響く、ヘンメイがまじないを受ける原因になったあの言葉が脳を駆け抜ける。

喜びの死人。感謝……まさか、あそこにいる死人は


「隆、捕るよ!」

「っああ!」


○未来の問診

卯月、変装している

──チリン。

(鈴の、音)

「……あなたは」

指を唇に当てた同い年くらいの彼は、Death game(デスゲーム)で見た碧眼の男の子だった。ウィッグなのか、髪は黒い。けれどあの静かな声と、どこから聞こえるのか漂う鈴の音。間違いなく、彼であった。

今までいた大人の先生から、彼に担当が代わる。アシスタントなのか病院の服を着た彼が、未来の前に座った。

「やっぱり、変な子。どうして自ら死を選ぶの?」

「……どういうこと」

「問診は以上。退出して」


何も聞かれない。何も答えない。

問診なんてとても言えないやりとりだけを終えた彼は、何も無かったのように資料をファイルに戻す。


「あの……」

「退出。自分の家に帰るんだね」


追い出されるようにキロリと目を向けられた。


「……ありがとう、ございました」


部屋から出た未来は、隆一郎と凪に驚きの表情を向けられる。いくらなんでも早すぎる、彼らもそう思っているのだ。


「……あの子が、いた。Death game(デスゲーム)で会った、白髪の、碧眼の男の子」


○秀電話(隆、未来)

『そっちはどう?』

「おー、なんとか。そっちは?」

『相変わらず死人が多い。僕一人じゃ厳しいから、斎にも来てもらってる』

『あと……』



○遠征中の会話(隆たちもどる)

焚き火囲んで、みんなでいる時

産月の言葉を何度も聞いて。未来が抱えていたケトが起きる


『ウミツキ……』

『ウミツキウミツキウミツキウミツキウミツキウミツキ』


暴れる隆、未来て抑える

「大丈夫。大丈夫だよ」

「ウミツキ、ミク殺す。ミク、アイツに、殺されるっ!」



『先に生まれた死人も、後から生まれた死人も。みんな、全員の記憶を共有する。誰かが見た記憶は、次のシビトの記憶になる。だから、時が経てば経つほど、情報を集められる死人は強くなる』

『戦いを終わらせたいなら、急いだ方がいい』


『ミクはあの時、ケト、助けようとしてくれた。救う、してくれた。だから協力したくて、ケトが、ケトの意思で、ミクと一緒に行くことを決断したんだ』

『だから、全部話したい。死人のこと、産月のこと……『あのお方』のことも」

「あの、お方……?」


「雪が……止んだ」(翔が雪を使う死人。弱ったことを意味する)

『いけませんねぇ、我が同胞の穢れ。そちら側についたからといって、簡単にあのお方のことを話そうとするなんて……』


『遠路わざわざありがとうございます』

売店のお兄さん……?


──好きだよ、未来。好きだ。愛してるよ。

信頼を寄せていた者が豹変する◼️な事態を受けて、未来は拒絶した。

なぜ拒絶する。

──人間でないものとして生きていかなければならないのに、なぜお前は人間のように振る舞う。

信頼していた人にまで、バケモノ扱いされていた。

そう知った瞬間、我慢していてた◼️が切れた。未来は、壊れた。


見られている最中、凪にもらったネックレスが光る。

未来、加護のネックレスにより強制的に


──好きだよ、未来。好きだ。愛してるよ。

信頼を寄せていた者が豹変する◼️な事態を受けて、未来は拒絶した。

なぜ拒絶する。

──人間でないものとして生きていかなければならないのに、なぜお前は人間のように振る舞う。

信頼していた人にまで、バケモノ扱いされていた。

そう知った瞬間、我慢していてた◼️が切れた。未来は、壊れた。



「翔君」


未来が近寄る

もうほとんど腐っている肉体へ、ウジが湧いているその腕へ、手を置いた。


『……ご……め』


しかしまだ意識があるのか、口を僅かに動かして、翔は未来へ何かを伝えようとする。

未来はその言葉を聞こうと、必死で【治癒(ノコギリソウ)】を使った。けれど、


「未来。……無理だよ」


キューブの能力が──のは、キューブを展開していた時にだけ。

マダーではない、ましてや人ですらない死にかけの死人には、どんなに未来が願っても届かない。

傷を治すための癒しの技は、翔には届かない。


『め……ん。あい……ちゃ……』

「ええ、よ。ぐすっ……も、謝んなくて、ええから……」


「あいつ……謝ってたな」

「……思い出したんだ、私」

「翔君は……私に、『キミは化け物や。人間でないものとして生きていかんとあかんねん』って、言ったんだよね」

「その言葉は、私の生き方を変えた」

「……酷い、言葉。そう思ってたんだ、最初は。でも……」


涙が零れる。

こちらを見ることなく、宙を見続ける未来は、唇を震わせていた。


「あれは、私をっ……守るための言葉だった。周りは、どうやっても変わらないから。なら、受け取り方を変えろって。自分は、そもそも違うんだって、思って生きていくことで、私の心を、守ろうとしてくれていた」



見られている最中、凪にもらったネックレスが光る。

未来、加護のネックレスにより強制的に記憶から戻ってくる。


↓産月と隆一郎の会話

『死人は、きおくをきょうゆうする』


『人間にもあるでしょう?喜怒哀楽』

『死人も同じ感情を持ち合わせてる』

『ボクらはそれを、哀怒楽喜(あいどらっき)って呼んでる』


「凪さん?」


寝てる。俺の肩で。


「寝かせてあげてください。九州遠征に行った日から、ろくに休んでないはずなので」


着物の国生先生だった。


「あの……やっぱり休めてないんですか」

「休んでと言っても、その子は聞きませんから」


自販機でミルク入りのコーヒーかん

凪さんの鞄の隣に置いた。


「大人の事情も、あなたたちが見ている現実も、明らかにならないこの国の不穏も。……全部、抱えている。責任感の強い性格も相まって、自分が限界まで来ていることに気付かないのですよ」


屈んで凪さんの顔をじっと見る。

その表情はなんだか、寂しそうだ。


「まだ十六の子どもで、親の愛もろくに受けられず。……わたしの知らないところで、こんなに大人になってしまって」

「土屋君や未来ちゃんと話している時のこの子は……年相応でした。今後とも、よろしくお願いします」


深く、深く、頭を下げられる。

わからない。国生先生の言っている意味が。

先生はこちらを見ない。よくわからないことを言って、頭を下げて、俺が何も返せないまま立ち去ってしまった。


「……余計なことを」


右肩が軽くなる。

のそりと起き上がった凪さんは、珍しく機嫌の悪そうな顔をしていた。


「凪さん、起きてたんですか?」

「安心できないものが来たら起きるようになってる。せっかくの安眠を邪魔された」


ぽす、ともう一度もたれかかってくる凪さん。さっきと違って力は抜けていない。意識がはっきりしてる。


「……好みがバレてるのが、腹立たしいよ」


ミルク入りのコーヒーの蓋を開けながら文句を言う。一気に飲み干した。


「未来、未来」

「バタバタして忘れるとこだった。明日凪さん誕生日だ」


右腕を必死に掴んで、


「怪我をしても、治せるっ! キューブに頼らずとも、素体であっても! 私は、私は自分の体を癒せる。心が生きていれば、周りに何をされても私は死なないって! そう教えるために、あえてこうしたんだよ」


右腕をキューブを使わずに治す

まるで、死人が再生する時と同じ


未来が、あいつを怖いと思う気持ちが、あいつの純粋な思いを曲解させていた。


「私は、なんなの? 人間だ、私は人間だ。ひっぐ……わたし、いつからッ!」


「未来」

「お前は、お前だ」

「未来が人間でも、死人でも関係ない。お前が築いてきたものも、我慢してきたことも、誰かに与えてきたことも」

「未来は未来だ。」



国生先生が十六って言ったのでハッとした。凪さんの誕生日は六月六日。明日で十七になる。すっげぇ大人なイメージ持ってるけどそういえばまだ高二なんだよなあの人。


「それで……隆や凪さんにもまだ言ってなかったんだけど」

「翔君に……会いに行こうかなって、思ってる」

「未来」

「どうして、急に?」

「ちゃんと向き合ったこと、なかったなと思って」

「翔君は翔君なりに、私に対して、負の感情以外の何かを思って言ってくれてたんじゃいかなって」

「……流星、湊」

「ユキも……しばらく、お休みだよね?」

「ああ」

「一緒に来てって言ったら、怒る?」

「何をいまさら。お前の無茶ぶりなんていつもの事だっつの」

「そうそうー。それが未来ちゃんのためなら、僕らは全力でお供しますよ」

「ユキは……」

「……殿のご命令なら。前日に寝ておきます」

「ありがとう」

「……凪さん、いいの?こんなに……」

「……正直に言うね。僕は、会いに行くことを反対したい」

「あれだけ傷付けられて、苦しい思いをしてきた未来を、僕も、隆一郎も隣で見てた」

「何も言わないけど、隆一郎だって僕と気持ちは同じだと思う。わざわざ行く必要はない。どうしてもそう思ってしまう」

「だけど、向き合いたいって気持ちは応援したい。逃げないで正面からぶつかるのは、怖いし苦しい。それを頑張るって言うのなら、応援すべきだと思う」

「大所帯になるけど、これくらい護衛がいてもいいくらいだと思う。もし逆上でもされたら……おそらく、次はない」

右腕を見て、


「ありがとう。みんな」


「そもそもの話、死人との戦いにおいて、一から十の全てを子どもたちに託してしまっているのだ」

「残酷無慈悲な夜の世界で、いつどんな死に方をしてもおかしくないのに。子どもたちは命をかけてくれているのに、こちらからは何の報酬も出してやれない」

「そんな大人が子どもへ指図するなど……」

『言ってもその意思は変わらないのだろうな』

「あっ、そろそろ僕の性格わかっちゃいました?」

『阿呆。昔からよーく知っている』


縦横無尽に襲い掛かるそれらを見てどこにくるのかの瞬時の判断。

次第に見えるようになるはずだ。

人間は、経験を積めば


「そう思うのなら怪我をしないことだね。もしくは大きなダメージを受けないこと」

「結局凪さんからの攻撃全部躱せって話じゃないですか……」

あまりにも無茶ぶりすぎる提案に苦笑いを浮かべる俺を見て、薬の後片付けをしていた凪さんがこちらを見る。

「そうでもないんだよ。僕は」


あいつみたいに変わったりしない。俺はずっと、今の俺のままでいる。お前の隣にいる。

一人になんてさせない。絶対そばにいる。

お前が周りになんて言われようと、俺だけは絶対にお前のそばを離れない。→未来、過去の隆を思い出して正気に戻る



『こんにちは、ミク』


「こんにちは」


『あいにきてくれルの、ウれしい』


「どう? お話するの、慣れてきた?」


『ウウん、まだまだ。かな。しゃべルの、むズかしい』


「そうだよね。ゆっくりで大丈夫だよ」


『はやク、ミクのちからに、なれルよウに、がんばルね』


「ありがとう」


『ミク、なんだかツらそウなの』


「え?」


『いやなこと、あった?』


「……」


「殺意をね」


「凄く久しぶりに、強い殺意を感じたんだ」


『ボクのなかまから?』


「うん」


『そっか。ごめんね』


「ケトが謝ることないよ。ただ、ケトやおキクみたいに分かり合える子は、すごく、少ないんだなと思って」


『ボクたちは、ニンゲンに、カナシサを、わかってもらいたい』


「うん」


『でも、ニンゲン、ボクたちをいじめル。ころそウとスル』


『ミクみたいに、ボクたちのことを、おもってくれる、そばに、よりそおウとしてくれル、ニンゲン、あんまり、いない』


『でも、ミクは、あのとき、ボクを、たスけよウ、してクれた。すくウ、してクれた。だから、きょウりょクしたい、おもった』


『でも、ミク。ごめんなさい。ボクは、ほかノニンゲンスきちがウ。でも、ミク、スき。だから、ミク、はなしたい。ほかノニンゲン、はなしたクない』


『ボク、はなス。はなせルこと、ミクに、はなス。はなしたこと、ほかノニンゲン、ミクがいえばいい』


『さきにウまれたシビトも、あとからウまれたシビトも、みんなぜんいんのきおくを、きょウユウ、スル。だれかがみたきおくは、ツぎのシビトのきおクになル。だから、ときがたてばたツほど、ボクたちはどんどんツよクなル』


『ミク。ボクらのしんりゃク、とめたい?』


「うん。ごめんね、ケト。でも、私は、この国と人を守るって決めてるから」


『ミク。ミクは、ほんとウは、なにがどウなってルか、しってルんでしょウ?』


『ボクにきかなクても、なにがげんいんで、どウスればいいのか、きっとミクは、しってルんでしょウ?』


「……それ以外の対処法を探してる」


「言ったでしょう。人と国を守りたいと。死人とケリをつけるために、それを覆すようなことはしたくない」


『あクまでも、ミクはすべてをまもってボクらをどウにかしたいんだね?』


「うん。だけど、私についてはどうなったって構わないよ。だから、知ってるなら教えて。私以外の、誰も犠牲にならないこの国の救い方を」


『ミクッ! ミク、ごめんなさいっ! ごめんなさい!!』


「…っ、だいじょーぶ。大丈夫だから、落ち着いて、ケト。ね?」


左肩ズバッと

出ていく

捜しにいく

『ううん! ころされる!! 約束破った! ころされる!!』

「家族なんだよ」

『ケト、いるひつようない』

『なんでしんじてくれるの?』

「家族が大丈夫って言ったら大丈夫なんだよ」



「……待って。ケト、ケトを作った死人がいたの? 死人は自然に生まれるんじゃないの?」

『かなしいきもちからうまれる、あってる。でもすこしちがう。かなしいきもち、もってるだけでボクらうまれることはできない。しびとのもと、『あのおかた』がいないとボクらうまれることできない』

「あの、お方……?」

『うん。そのひとがいるからボクらいのちつくれる。だから、そのひと、きえたらボクらうまれることできない』


『ほら、私に相談せず行動するから、こうして哀しくなるんでしょ?』

『良かったですね。殺さずに済んで』

『だから今後とも私に任せてください?必ず、あなたの望む未来になるよう力を尽くしますから』


『これ以上ハズレを覚醒させてはならない』


「──かく、せい」


夢。


「なんだろ……覚醒って」




『手を出すなと言っておいたはずだが?』


『す、すみませんでしたロン様!! 絶好の機会、や、殺れると思っ』

『弥重凪の事じゃないよ。相沢未来にだ』


『お前らもよく覚えておくがいい』


『俺の言うことが聞けなければ、どうなるのかを』


このあと国の人間、司令官、凪

「司令官、僕も出ます。すぐに用意するので待ってください」

「弥重。帰ってきたばかりだ、お前は休め」

「いいえ。こんな大事な会議にそんな理由で」

「流星、みんなに」

「湊。ーー」

「隆一郎」

「課題クリア、おめでとう。会議が終わったら改めて話を聞きに行くね」


キューブ完成、政府来る。『ダイス』

「やっとできたのか」


遅いと責め立てる


「もっと速くこうすればよかったのに」


⤵︎ ︎凪へかえる

「お言葉ですが」


「ではあなた方がそうすればよかったのではないですか? どうすればいいか考えもせず、全てを斎に放り投げたのは誰です? あなたたちでしょう」

「頑張って頑張って頑張って、倒れてまで完成させた彼に、慈悲の言葉すら掛けないのですか?」

「……秀」

「あなたたちはいつもそうだ。自分で考えもしないでいいところだけを奪っていく。こちら側の苦労を、思いを、全て蔑ろにする」


「俺から一つお願いです」

「もう『偽物』のキューブでマダーを増やすことはやめてください。もう、誰かが自ら死にに行く手段をとっているのは、見たくないです」


掴みかかる 冷静に


無理に動いたことで点滴が動いた。

刺さった針部分から少し血が流れた。


()は、キューブの創造者です。やり方を決める権利は私にあるはずです」


研究者として、いつもと全く違う斎


「弥重!」

「なぜあんな言い方をした。お前らしくもない、国とマダーをーーする気か!?」


「……司令官。僕は、随分と大人の世界に顔を出していますが、こんなのでも……まだ、十七なんですよ」

「明日で、やっと十八になるんです。……あまり、期待しすぎないでください」


「すいません」


「司令官。どうしてマダーは、こんなにも毛嫌いされているんですか。なぜこんな扱いを。国と本部の間には、いったい何があるんですか」



「今日はつっちーの奢りだから、たっくさん食べていいよ!」

「中学生にたかんじゃねぇよ!」

「わりぃなイチ。俺らコーコーセーだけどバイトなんてしてる暇ねぇんだわ」

「ごちになりまーす!」

食べ放題にしてもらったのに追加しやがった!!

「くそ.......お年玉全部使い果たすじゃんか.......」

「あはは。ちょっと食べ過ぎたね」

「凪さん、そのお金は?」

万札がいち、に、さん?

「さすがに大人気ないからね。約束通り長谷川さんの分だけもらっていいかな?」




「谷川君。


「自分しかできないのはわかる。他の誰かに任せられないのもわかる。私も研究所に出入りするようになって、それはひしひしと感じるの。だけどね」


ちらりと秀を見てから、阿部は続けた。


「秋月君、すごく心配してたよ。いつか倒れちゃいそうだって。秋月君だけじゃない、みんな心配してたよ。だからもうこんなふうに頑張らないで

「たーにーかーわー。こら、加奈をいじめんなよ」

「な、いじめてはっ!?」

「私も今回は斎が悪いと思う」

「相沢まで!?」

「加奈、すっごくすっごく心配してたもん。この間の私が当番だった時なんて明け方まで電話してたぐらいだよ」

「あわわ、未来ちゃんその節は本当にごめんなさい。お腹はもう大丈夫?」


お腹?


「どうした。下したか?」

「土屋、その言い方は女の子にしちゃだめだ」

「そうだよつっちー。下品」

「げひ……っ! ご、ごめん。あの日珍しく朝こっちに顔出さなかったから、トイレにこもってたのかなって」

「お前はもう黙れ。相沢さんに失礼じゃ」


加藤の顔に怒りマークが見えた途端、頭を鷲掴みにされた。痛い。こいつ握力どれだけあるのか知らねぇが、痛い。


「いいよいいよ、加藤君。実際そうだから。ゴミ箱から出る冷気で冷えちゃって、帰ってきたらすぐにトイレに行って、その後布団にくるまってたんだよ」


未来の解答に、阿部が少し眉尻を下げたような気がした。


(朝来なかったのは、別の理由か)


「冗談はさておき。……どうした。何があった」

「怪我、しちゃったんだ。あの日」

「ぼーっとしてた私のせいだけど、今まではそれでもやられはしなかった。危ない、ぐらいで済んだ。だけど当てられるようになってきた」

「あの子たちの成長度合いは凄まじい。今回凪さんがいつもみたいに前倒しの遠征ができなかったように、強い子たちが増えた。さらに気をつけていかないといけない。産月の件もあるし、もう少しこちら側の強度を上げるべきだと思う」

「おい、がきんちょ」

「俺が強化合宿開くって言ったら、どうする?」

「今回の遠征、お前だけじゃなく、俺たちもヤベェって思った。弥重がいて、湊と俺がいて、他に三十人弱いてもキツかった」

「何度もみんな死にかけた。どうにかするべきだと思ってたんだ」

「俺から司令官に許可をもらいに行く。一ヶ月も戦場にいたんだ、あの人のことだし、休暇をくれっつったらどうにかしてくれんだろ」


「という感じで」


結局、ありのままに話した。

流星たち笑う

「……隆一郎」

「ひっ、は、はい!」


りゅーちゃんじゃない!!


「きちんと伝えられていい子だね。でもそういうことは、言わないほうがいいかもしれないよ?」


怒ってるううう!!


「全く、誰かさんのせいで僕はいい笑い物だ」

「す、すみません」



「果たしてこれを良しとしてもいいものか」

「相手の弱点を突くって意味合いで取るならいいんじゃないー?」

「腑に落ちないなぁ」


「何はともあれ、課題はクリアできたわけだ」


「隆一郎、僕はね。別に怒ってるわけじゃないんだよ」


「弥重はさー、本当にタイミングの悪いやつだよなー」

「うっ」

「き、気にしてるんだから、あんまりそこせめないでもらえるかな……」



凪報告

「……ヘンメイ?」

呼ぶ

「寝てるかもしれないな……」

紫恩(しおん)

「君の信者たちが彼らに酷いことをしたみたいでね」



「信号?」


『うん、ぼくたちのこころがつよくなるしんごうがあったの』

『かなしいのも、つらいのも、もっともっとつよくなった。かわりに、いろいろかんがえられるようになった』

『ボクがミクのところにきたのもそう。ボク、ミクといっしょにいたかった。だからきた』

『これからさきどんどんしびとつよくなる。これからもつよくなる。きをつけて』


「なんで唐突に?」

『わからない。まえまではそうじゃなかった』

『でも、ぼくつくったしびとから、つよいかんじょうおくられてきた』

「強い感情?」

『うん。しっとしん』

「嫉妬?」

隆ぴく

「きっと、ミクにたいしてのなにかに、つよいしっとしんうまれた』

「ミク、ボクとであうまえ、だれかにつよいかんじょうぶつけられたりしてない?』

「つよいかんじょう?」

『うん。ボクらはボクらをつくっている死人のしびとのかんじょうでつよくなる』

『あいをかんじれば、あいをにんしきすれば、じぶんのものにしたいとおもえばおもうほど、ぼくらつよくなる』

『あのとき、ボクがしびとになったとき、だれかがそのたいしょうになった』

『ミクじゃないかもしれない。ほかのだれかかもしれない。でも、アノオカタがだれかになにかのかんじょうをもった』

「あのお方って?」

『ごめん、それはボクにもわからない。もっとながくいきてる死人はそれについてしらされてるけど、そのかわりにしゃべることができないようにまじないがかけられてる。ボクはこのあいだうまれたばかり、だからそのひとについてはよくわからない。きっと、ほかの死人にきいてもそれはおしえられることはないとおもう』

『でも、わかることもある。わかることはおしえる。ミクがボクをだいじにおもってくれてるの、わかるから』




『奴らのなかで一番こわいのは、十二月の産月(うみつき)師走(しわす)

「師走?」

『そう。死神のそばにずっといる、人間側の動きを伝えながら産月の采配もする執事みたいな男』

『』


『ミクはね、ぼくらのなかでイミゴって呼ばれてる』

「忌み子……?」

『うん。つらいこといってごめんね。でも、そのいみも、なんでミクのことをみんながしってるのかも、ぼくはしらない』


「それでも、あの日生まれたケトがこんなにも色々知ってるのはどうして?」



『うん。教師の名前はわからない。華弥自身がもう忘れてしまっていたから』

『ナギがいたから問題なく討伐できたみたいだけど、ナギと……リュウセイ、ミナト。いなかったら、きっとあそこにいた他のマダーたちは生きてない』

『華弥は強かった。だから色々情報を持っていて、そのさいでまじないも掛けられていた』

『ミクが周りを巻き込むのは必然。呪いのせいで、未来の周りにいる人全員が、危険に晒される』

『ミナト、胴体、切られた』

『不思議じゃなかった?後ろには何もいなかったのに、どこから攻撃されたんだろうって』

『誰か、ミクたくさん心配した。無事でいてほしい、願った』

『本来はミクに向かうはずだった攻撃が、代わりにミナトへいった』


「弥重」

「休暇、だぞ」

「……わかってるよ」

「ここで電話しろ」

「もし遠征行けって言われたら、俺が断ってやる。怒鳴ってでもな」


「弥重です」

「……それは、いつの話ですか」

「……三日前?なぜそれまで気付かないのですか。大阪支部はいったい何をしてるんですか!?」


珍しい怒鳴り声


「少しお待ちください。場所を変えます」

「ここは年下の子たちが多すぎる」


「な、凪さん」

「隆一郎」

「未来のそばにいて。離れないで」

「少し込み入った話をしてくる。遅くなるから後でホテルで合流するよ」

「流星、湊」

「後で……僕の頭が整理でき次第、詳しく説明する。今は一人にして。あと、中学生組から目を離さないで。僕の電話を聞きにしたりしないように」

「……わかった」

「隆一郎」

「ちゃんと説明する。だから、【不知火】は使わないでね」


「いえ。連れていきます」

「僕の近くが、一番安全でしょうから」


「未来」


ぴりっ


「はい」


敬語


「一緒に遠征に来なさい」

「承知致しました。今から出ますか」

「いや、少し長期になりそうだ。用意が必要になる」


「学生に頼むことじゃないけど」

「……凪さん」

「凪さんも、学生だよ」

「……そうだった。はは」


「だめだ」

「君たち程度では邪魔になる」

「ちょっと、凪さん!いくらなんでもそんな言い方……!」

「隆一郎。来なさい」


腕を掴まれ裏手に連れていかれる。


「ごめん。あれぐらい強く言わないと……お前の友だちを傷つけてでも、今回の遠征、連れていけない理由がある」

「心して聞きなさい」

「大阪拘置所から、翔・凛世が抜け出した」

「今の連絡は司令官から。大阪支部が知ったのはつい先程のことで、実際に逃げたのは三日ほど前だろうとのことだ」


思い出したくなかった。

その名前を。

未来にあの傷をつけさせた、トラウマにさせた、あの男の存在を。


「遠征?」


「うん。悪いけど、今回は未来も来て欲しい」


「私は別に構わないけど…凪、この間帰ってきたばかりじゃないの」


「そうだね、でも、そうも言ってられなくてさ。未来も、あんな事があったすぐ後に…ごめん」


「大丈夫だよ。怪我はもう治ってるし、キューブも復活してるから」


凪がふっと笑う。


「…明朝、出発するよ。用意ができ次第僕のところに来て欲しい。…色々、話したいことがある」





「遠征?未来も?」


唐突に言ってきた未来の言葉に


「うん、凪さん達と一緒に」


「普段遠征に出てるマダーたちは、今は九州にいるからな」


「凪さんたちですよね。状況の報告は来てますか?」


「既に二県奪還したとのことだ」


「……生存者は」


「今のところ、ひとりもいないそうだ」


「話を戻そう。一番にはこれから北海道に行ってもらいたい。あちらにいる幹部によると、一部のマテリアル内に死人が入り込んで、討伐に出たはいいが返り討ちにされてしまって、それを繰り返しているうちに手に負えなくなってしまったのだそうだ」


「それはつまり、その数だけ死んだと思って良いのでしょうか」


「ああ、そうだ。20人以上それで死んでいる」


「何故そうなる前に救援を出さないのですか」


「都を落とすなんてこと、あってはならないのだ」


「同じ国を守っているはずなのに、格差を感じます」


「ひとりでいいかとも思ったんだが、一応な」


「その相手って、私が選んでもいいんですか?」


「お前なら誰と組んだとしてもまず問題ないと思うが、夜の討伐に影響が出ない範囲なら構わぬ」


「では、頼んだぞ」


土屋隆一郎。私の、大切な元チームメイト。危ない土地で背中を任せるなら、あなた以外なんて考えられない。


「さみしいよー」

「俺もさみしいよー」

「棒読みじゃん」

「いや、マジでさみしいな」



「自分で作り出そうとしたら、うまくいかないんだ。利用しようとしているのがバレているからなのかもしれないね」

「じゃあ、この巣窟から君たちが生きて帰れたら考え直してあげる」

「もっとも」

「生きて帰れたら、だけどね」

「【絡繰(からく)る】」


「な……」

死人を、作り出した?

「勘違いしてそうだから教えてあげる。俺の文字は、『絡』。そしてこの能力は……捕縛した死人を我が味方にする力」


「これは……」

「ヘンメイ。言伝を頼みたい。これを弥重様に届けてもらえるかな?」


「俺も君も一緒だろう? 死人の力を借りて物事を進めようとしているのは、どちらも同じだよ」

「私は、わざと哀しい気持ちにさせて生み出しその力を借りることはしたくありません。生まれてしまった彼らの意思を尊重したいと思い続けています」

「……俺にたてつくの? 弥重様のオヒメサマ」

「私はあなたよりも年下ではありますが、一応部隊としては優劣に差はないとされているので。あくまで一意見として聞いていただければと思います」

「優劣に差はない? 馬鹿を言うのも大概にしてくれるかな。俺達は前線で戦い続けている。対して君は? 特別部隊というのは基本的に『守り』のための  であって、常に死と隣り合わせにあるわけじゃない。それを一緒にしないでもらえるかな」


「約束だったから死人をわざわざ作り出すことについては考え直してあげる。だけど、そうすることが必要なこともあるということを、どうか忘れないで」


「さん」


「失礼なことを言ってしまいました。申し訳ありませんでした」

「私からも一点、忘れないで欲しいことをお伝えさせてください」

「……何?」

「彼らの力を借りるのなら、どうか大切にしてあげてください。命があるのだということを覚えていて欲しいのです。だから……お願いします」


未来の言葉には、  は振り向かなかった。

代わりとでもいうように、手を少しあげてひらひらと振って出て行った。

そう言いながら、最後の北海道の夜を過ごした。明日にはここを平和に立つ。そう信じて。

それが覆されたのは、明け方のことだった。


しょう来る。

「逃げなさい!!」

凪が足止め

「じぃのところへ行け。事情を説明してある」

隆と未来逃がす

「やらせない」

「二度は起こさせないって、僕は自分に誓ったんだ」

「へぇ、なにそれ?ただの自己満足やろ?」

「あの時助けられへんかったから次はさせない。ただ自分の不甲斐なさを上書きしたいだけや」

なにかしてマテリアル突き破る勢いでぶっ飛ばされる

「【花火】」

木を探す。未来の【接木】で逃げるために

だけどどこに行ってもない

「無駄やで。北海道一帯の木全部切ってきたから」

しょう来る

「逃がさんよ」

キューブ未来破壊される

「相沢ちゃんの戦い方はよぉ知っとるよ。【接木】で逃げられたら面倒やから、先にそれは潰しとくなあ」

「おいガキんちょ、おい」

「おい、しっかりしろ未来!」

「トラウマの相手だからそうなっちまうのはわかる。俺の想像以上に怖くて怖くて堪らねぇのもわかる!!」

「けど足止めんな!てめぇの恐怖心でイチまで危険に晒すんじゃねぇ!!」

追いつく


「未来ちー、まだ起きないの?」


「ああ」


「体の具合はどうなの?」


「もうほとんど大丈夫だよ。あとは……」


「心の問題、かな」


「起きたくない。そう、思ってるってことだよね」


「多分な」


「……聞けばよかった」


「え?」


「未来に、過去に何があったのか、聞いておけばよかった」


泣く


「長谷川……」


「傷付けると思って聞かなかったけど、こんなふうになるなら先に聞けばよかった……! そしたら、アタシが傍にいるって、絶対何があっても友達だからって、伝えてたのに……!!」


撫でる


「ありがとな。そう思ってくれてるだけで、未来は十分救われてるよ」


「谷川君は、未来に起きてって言わないの?」


「えぇ、俺は言いません。相沢は、目を覚ましたくないからずっと眠り続けているはずなので、起きたい時に起きたらいいと思うんです」


「ふふ、僕と同じ考え方だ」


「あわわ、恐縮ですっ!」


「ちょっと、また硬くなってるよ」


「谷川君は、周りのことが良く見えているね」


「んん、研究者的立場だからですかね。人の顔色を伺ったりとか、今何考えてるのかなとか、どんな状況かとか……結構、そういうのを考えるのは得意な方です」



「大事にしなさい。その感性は……とっても、大事なものだよ」


「未来……これ、見て」


「未来、が、寝てる、間に特注で、作ってもらったの」


泣きそうになりながら、長谷川が声を詰まらせて続ける。


「これ、すっごいんだよ。着けたらね、その、人の肌に、馴染んで……ひっく、素肌と、っ、変わらないように、見せられるの」


つける


未来が目を見開く


「ねぇ未来……。アタシ、未来ともっと一緒にいたいよ」


抱きつく


「あなたと、もっと色んなところに行きたい」


「あなたに、もっと、色んな服を着てもらいたい」


「だってアタシたち、まだ中学生なんだよ?もっと、ひっく、人生楽しんだって、いいじゃん」


「凛ちゃん……」


長谷川は、未来を抱きしめたまま崩れるように泣いた。



「相沢」


「俺、言ったよな。君は人間だって」


「忘れないで。誰がなんと言おうと、相沢は人間なんだよ」



「未来」


「ここにいるやつは、皆お前のそばにいる」


「何があっても、絶対そばにいる」


「だからお前の方から逃げるな。突き放すな」


「ずっと一緒にいる俺が証明してやる。相沢未来は、ここにいる」


「お前の居場所は、ここだ」


「本物の人の愛を知らないなら、俺が隣りで教えてやる」


「ずっと隣りで、お前を愛し続ける」


「」


「つっちー……それ、プロポーズみたい……」


ハッとする


「ちが、未来、そうじゃなくて、あの……!」


「うん、()()()()()()、でしょ?」


涙を流しながら未来がくすくすと笑う。



「未来」


凪さん


「大切な人を守るのに、」


行く


「会ったら、なんて言うんだ」

「……なんだろう。久しぶり、なのかな」

「実際に顔を合わせないと、わからないかな」


つく


「……なに、これ」


血だらけの刑務所

誰かが引っ張られていくのが見えた


「じぃっ?」


「遅れてすまんのう、凪坊」

「すみません、マスター」


『ハズレ。相沢未来のことを、奴ら産月はそう呼んでた。当たり外れのハズレ。運がなかった方の個体だって』


いつからか、未来も泣くようになった。俺と一緒に。

その全てを受けているのは未来なのに、俺が先に泣いて、未来はその後で泣いた。

──演技を、俺がさせてしまったんだ。

つらいと感じた時に、「大丈夫だよ」と言ったら俺が泣くから。痛くても「平気だよ」と伝えたら、俺が否定するから。


その全てを受けているのは未来なのに、俺が先に泣いて、未来はその後で泣いた。

──演技を、俺がさせてしまったんだ。

つらいと感じた時に、「大丈夫だよ」と言ったら俺が泣くから。痛くても「平気だよ」と伝えたら、俺が否定するから。

ああ、この感情を持った時は本当は泣かないといけないんだ。そう、あいつは理解した。


「私も、泣いていい?」


許可をとって、あいつは涙を流した。

これは演技だ。なんて、当時の俺は読み取ってやれなかった。

ようやく未来が、自分から悲しくてつらい気持ちを隠さず見せてくれるようになった。そう嬉しくも思えた。

実際はそうじゃなかったのに。

いつからなのかはハッキリとしない。わかりたいと望んで訓練したわけでもなくて、

だけど、年端もいかない頃から周りに蔑まれる未来を、この目で見てきた。

罵倒されて、気味悪がられて。バケモノだの死神だの、耳を塞ぎたくなるような悪意の言葉と暴力の数々。

周りからの侮蔑を受け続けても、どんなに苦しくてもあいつが耐えてきたからだ。

でもそれは、周りから蔑まれても、どんなに苦しくてもあいつが耐えてきたからだ。

「弱音を口に出さないことで、その場を乗り切る。その時だけは強くあれる。……そんな、自己暗示にも似た言葉で、あいつは自分の身に降りかかる厄災を跳ね除けようとしていた」

心の声を漏らしてしまえば、耐えられなくなる。幼いながらにそうわかっていた未来は、誰にも「助けて」とは言わなかった。

一番近くにいた俺にも、頼れる凪さんにも。

絶対に、本当はつらいんだよと伝えてはくれなかった。

演技で作り出した涙の中に、口から出せない思いを全て含ませて、混ぜ込んで、流して消し去った。


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