ぱられる・政府関連
「大人は、何もできぬというのか」
ずっと黙っていた四十万谷司令官が、静かに声を発した。
「意見がある場合は挙手を……」
「報酬も出ぬ、十分な物資もない。大人ならその事情も少しは飲み込めよう」
「しかし戦場に出ているのは、大人も少数いるとはいえ多くが子どもだ。大人のマダーは、片手で足りるほどしか居らぬのが現状だ」
「報酬も出ないのに命を張っている子どもたちへ、大人は何もできぬか? すべてを幼い命に任せるか?」
「……初めて、死人の討伐に子どもを、といった話が出た時も。リスクに見合う報酬も、保証もなかった。何一つとして提示できなかった」
「初めて討伐に出た時の弥重や一番が、その時どんな気持ちだったのか。こちらからは想像することしかできん」
「以降、ずっと。戦い続けている。いつしか、仲間を捨て、敵を討つことに疑問を抱かなくなった」
「それに疑念を抱く者がたった一人しかいないほど。私たち大人は、それほどまでに子どもたちを追い詰めてしまっているのだ」
「残酷無慈悲な戦いの中で。いつどんな死に方をしてもおかしくないのに、子どもたちは命をかけてくれているのに、こちらからは何の報酬も出してやれない」
「そんな大人が子供へ指図するなど、あっていいことだと思うのか」
「命を奪うことを当たり前だと思っているマダーは多い。同じようにならないでほしい。……新しく誰かがマダーになるたびに、司令官は願ってるよ」
「本部は本部で、研究費だったりマダーのためのあれやこれやにお金が必要だからね。経済的に余裕がないのは国も本部も同じなんだよ」
騒いで流星さんを引きずり回っていた凪さんがしゃんと大人状態になって戻ってきた。流星さんは……うん。くたくただ。
そんなものなのですか、と。
「そんなものですよ」
凪さんは、何も迷わず答えた。
「みんな当たり前のように過ごしていますが、死人がこの世に現れてからまだ七年。実のところ、制度がまだまだ整っていないところも多いんです」
軍事力を捨てた日本が、死人の殲滅のために戦争の道具をまた手に取ったこと。国民の守護、理解、統制……政府は政府で、おそらく全力で動いてくれている。できることはしているのだと。
「政府は政府のすべきことを、僕らは自分たちにできる限りのことを。このやり方は、僕らにとっては当たり前です」
「……凪くん。本音を言っても良いのですよ」
「ふふ。谷総理には感謝しています」
「では、それ以前までの政府へ」
「彼らのことは忘れました。あんな話を聞かない連中は知りません」




