小さな光のはじまり
子どもの初めての精霊反応回です。
大きな事件ではなく、小さな確信。
森の未来が静かに動き出します。
赤子は、まだ言葉を持たない。
だが、森は言葉がなくても通じる場所だった。
揺り籠の中で、小さな手が空を掴む。
その瞬間だった。
ふわり、と。
ひとつの光が、指先に触れた。
「……あ」
ルナが息を止める。
エリシアの目が細められる。
「今のは」
精霊が、逃げなかった。
それどころか、近づいた。
赤子が小さく笑う。
それに応えるように、光が二つ、三つ。
くるくると舞い始める。
「強いな」
ハルが静かに言う。
「俺より早いんじゃないか?」
レイナが笑う。
「張り合うな」
エリシアが慎重に手をかざす。
「同調波が安定しています」
「強制ではありません」
「自然な共鳴です」
リリアが記録を取る。
「王都に知られたら、また騒ぎますね」
「言わなきゃいい」
ハルは即答する。
赤子が手を伸ばす。
精霊がその手に触れ、やわらかく光る。
泣かない。
怯えない。
ただ、楽しそうに。
ルナがそっと言う。
「森に愛されている」
レイナが腕を組む。
「将来有望だな」
だが次の瞬間。
光が一瞬、強くなる。
水路の水がきらりと反射する。
風がそっと吹く。
小さな波紋。
ハルが一歩前へ出る。
「大丈夫」
声をかけると、光は落ち着いた。
赤子は安心したように目を閉じる。
エリシアが微笑む。
「まだ芽です」
「ですが、とても澄んだ芽」
夕方。
揺り籠の横で、ハルは静かに言う。
「この子は、この森と一緒に育つ」
ルナが頷く。
「だから急がない」
レイナが笑う。
「まずは寝ることだな」
精霊が、やさしく光る。
小さな芽は、確かに息づいていた。
甘さは、次の世代へと自然に受け継がれていきます。
まだ小さな芽ですが、確かな光です。
引き続き、精霊の森の歩みを見守っていただけたら嬉しいです。
―― 月灯り庵




