評価は高まり、風は変わる
監査後、森の評価が正式に上がる回です。
外は盛り上がる。
森は変わらない。
王都中央庁舎。
監査報告書が正式に公開された。
――精霊の森の作物、安全性確認済み。
――人工的魔力操作の痕跡なし。
――王都への脅威性なし。
その一文が、市場と貴族社会を静かに震わせた。
「公式に“安全”か……」
「では取引制限の理由がない」
「むしろ優先的に確保すべきだ」
声が一気に変わる。
疑いは消え、今度は“欲望”が動き出す。
商人ギルド。
「精霊の森、格上げ扱いだ」
「特別取扱品に指定」
ダリオは静かに息を吐いた。
評価が上がるのは良い。
だが、過熱は危険。
森との約束を思い出す。
――焦らない。
王宮。
若い伯爵がローベルトに言う。
「これで反対派は動けない」
「表では、ですね」
ローベルトは淡々と答える。
数字は森を守った。
だが感情までは止められない。
それでも。
一つの壁は越えた。
その頃、森では。
「へえ、王都でそんな騒ぎに?」
ハルは土を耕しながら聞いている。
「格上げ評価だそうです」
リリアが報告する。
「特別取扱品ですって」
レイナが笑う。
「なんかすごそうだな」
「でもやることは同じよ」
ルナが静かに言う。
「急がない」
「うん」
即答。
評価が上がっても、畑は急がない。
水はいつも通り流れる。
精霊も変わらず舞う。
エリシアが空を見上げる。
「精霊も落ち着いています」
「良かった」
ハルは笑う。
「数字がどうでも、森が変わらなきゃそれでいい」
その言葉に、皆が頷いた。
森は守られた。
だが、変わらない。
王都では称賛が広がり。
森ではいつも通りの夕日が沈む。
甘さは、証明された。
そしてその甘さは、さらに価値を持った。
だが中心は、静かなままだった。
証明は終わりました。
次は、どう広がるか。
それとも森は、また日常へ戻るのか。
月灯り庵




