異常なし、その証明
森の作物“異常なし”証明回です。
感情ではなく、数字で守る回。
最終確認は、公開形式で行われた。
村の中央広場。
監査団。
村人。
そして精霊。
隠すものはない。
土壌検査。
魔力残留検査。
作物分解検査。
すべて、王都基準。
すべて、透明。
「異常値、検出されず」
記録官の声が響く。
だが侯爵側の監査補佐が口を挟む。
「精霊干渉が過度では?」
エリシアが答える。
「精霊に強制力はありません」
ハルが手を差し出す。
精霊が自然に寄る。
命令ではない。
共鳴だ。
補佐官は試しに手を出す。
一瞬迷い――
小さな光が触れる。
拒絶はない。
会場が静まる。
最後は試食。
王都側の料理人が調理する。
森は手を出さない。
公平性の証明だ。
一口。
二口。
料理人が目を見開く。
「……加工耐性も正常」
「魔力暴走なし」
「身体負荷なし」
監査官が深く息を吐く。
「結論」
監査団長が宣言する。
「精霊の森の作物は安全」
「人工操作の痕跡なし」
「王都への脅威性なし」
静かな拍手が起きる。
森は歓声を上げない。
ただ、穏やか。
ヴァルツ侯爵の側近は歯噛みする。
「……これでは動けぬ」
数字は否定しない。
証拠は揃った。
監査団長がハルに言う。
「疑いを持ったことを詫びる」
ハルは首を振る。
「疑うのは仕事だろ?」
それだけ。
怒りもない。
勝ち誇りもない。
ただ、変わらない。
夕暮れ。
監査団が去る。
森は静か。
レイナが言う。
「終わった?」
「たぶんな」
ルナが微笑む。
「甘さは証明されたわ」
リリアが小さく呟く。
「数字でも、心でも」
精霊がやわらかく舞う。
王都はざわつき続ける。
だが一つだけ確定した。
精霊の森は、異常ではない。
“本物”だ。
甘さは幻想ではありません。
証明できる現実です。




