小さな祝宴、森の約束
御用商人歓迎の小さな祝宴回です。
派手ではないけれど、森らしい温度で。
「今日は祝宴だ」
ハルの一言に、森がざわめいた。
「祝宴?」
レイナがにやりと笑う。
「商人歓迎パーティーだよ」
ダリオが固まる。
「え、私ですか?」
「他に誰がいる」
即答である。
夕方。
村の中央、小さな広場。
簡素な木の机に、森の恵みが並ぶ。
焼き野菜。
香ばしいパン。
果実酒。
そして、精霊の森の米。
豪華ではない。
だが、温かい。
ルナが杯を掲げる。
「御用商人ダリオ・クラウゼ」
静かな声が広場に響く。
「森の価値を守りながら広げる覚悟を示した」
レイナが続く。
「裏切ったら追い出すけどな」
「念押しが強い!」
笑いが起こる。
エリシアが柔らかく言う。
「歓迎します」
リリアも頷く。
「王都との窓口として、共に働きましょう」
ダリオは、胸が詰まるのを感じた。
商談で歓迎されたことはある。
だが、こんな風に迎えられたことはない。
「……誓います」
帽子を胸に当てる。
「精霊の森の名を、守りながら売ると」
ハルが笑う。
「そんなに堅くなくていい」
杯が軽くぶつかる。
精霊がくるくる舞う。
音楽はない。
だが笑い声がある。
レイナが肉を差し出す。
「食え」
「はい」
「美味いだろ?」
「……はい」
「それ売るんだぞ」
重い。
だが誇らしい。
夜。
火を囲みながら、ハルがぽつりと言う。
「森の外と繋がるけど」
全員が耳を傾ける。
「変わらないからな」
ルナが微笑む。
「変えさせないわ」
レイナが腕を組む。
「誰が来てもな」
ダリオは心の中で呟く。
(この甘さは、本物だ)
精霊の森に、新しい仲間が正式に加わった。
甘く、しかし揺るがない夜だった。
祝うということは、受け入れるということ。
精霊の森は、少しだけ広がりました。
次回は、初出荷。
外の世界がざわつきます。
月灯り庵




