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異世界転生した俺は精霊に愛されすぎて、静かに村を育てます  作者: 月灯り庵


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御用商人を名乗る男

新キャラ商人登場回です。


金の匂いと、森の価値観の衝突。


でも、精霊の森は急ぎません。

精霊の森の入口に、派手な馬車が止まった。


金の縁取り。


磨き上げられた車輪。


御者台には、やけに自信満々の男。


「ここが例の村か……」


男は帽子をくいっと上げる。


名を、ダリオ・クラウゼ。


王都商人ギルド所属。


鼻が利くことで有名だ。


「甘い匂いがする」


森の空気に触れ、口元が緩む。


「金の匂いだ」


ハルは水路の点検中だった。


レイナが先に気づく。


「知らないやつ来た」


「敵?」


「服がうるさい」


確かにうるさい。


金糸がまぶしい。


ダリオは大げさに一礼した。


「はじめまして! 精霊の森の統率者殿!」


「統率者って俺?」


ハルが首をかしげる。


「ええ! 噂は王都まで轟いております!」


距離が近い。


勢いが強い。


ルナが静かに一歩前へ出る。


「ご用件は?」


ダリオはにやりと笑う。


「取引です」


「御用商人として、私を専属にしていただきたい」


空気が少しだけ変わる。


リリアが目を細める。


「専属?」


「はい!」


「精霊の森の作物は逸品!」


「王都貴族が喉から手を出すほど!」


「私が流通を一手に引き受けます!」


早口。


熱量。


金の匂い。


レイナが腕を組む。


「で?」


「で、とは?」


「うちのメリット」


直球。


ダリオは一瞬止まり――


すぐに笑顔を戻す。


「利益の最大化です!」


「価格は私が保証します!」


「王都最高値で売りましょう!」


ルナが静かに言う。


「大量生産はしません」


「え?」


「この森は、急がない」


ダリオが目を瞬かせる。


ハルがぽつり。


「俺たち、そんなに売る気ないんだよな」


「……はい?」


ダリオの顔が止まる。


「え、ですが……莫大な利益が」


「足りてるし」


即答。


商人、混乱。


リリアが静かに説明する。


「精霊の森は、拡大主義ではありません」


「品質維持が最優先」


ダリオは額に汗をにじませる。


「ですが……! このままでは他商会が動きます!」


「なら競争ですね」


ルナがさらり。


商人、追い込まれる。


ダリオは深呼吸する。


ここで気づく。


“売り込み方が違う”。


彼は姿勢を改める。


「……条件をお聞かせください」


空気が変わる。


ハルが少し考える。


「無理に広げない」


「価格は適正」


「森の名を傷つけない」


「あと、うちに不利な契約しない」


レイナが追加する。


「変な貴族連れてこない」


エリシアが言う。


「自然を優先」


リリアが締める。


「透明性のある帳簿」


ダリオは真顔になる。


「……厳しい」


「御用商人は、森の一部になる覚悟が必要」


ルナの声は静かだが重い。


しばらく沈黙。


やがてダリオは帽子を取った。


「……面白い」


「こんな村、初めてだ」


彼は膝をつく。


「条件を受け入れます」


「利益だけでなく、価値を売る」


その目は、本気だった。


ハルは笑う。


「じゃあ、とりあえず様子見な」


「試用期間ですか」


「そんな感じ」


レイナがにやっと笑う。


「変なことしたら追い出す」


「肝に銘じます」


ダリオは森を見回す。


甘い空気。


穏やかな光。


「これは確かに……独占したくなる」


だが今は違う。


「守りながら広げる」


それがこの村の流儀だ。


精霊の森に、商いの風が吹いた。


だが甘さは崩れない。


むしろ。


少しだけ、強くなった。

新キャラ商人登場回です。


金の匂いと、森の価値観の衝突。


でも、精霊の森は急ぎません。

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