森の外で、静かに揺れる影
緩和回のあと、静かに世界が動き始めます。
精霊の森は変わらない。
でも外は、少しずつ揺れています。
精霊の森の朝は、相変わらず穏やかだった。
水路は澄み、畑は整い、精霊たちは軽やかに舞う。
だが、その空気の外側。
王都では、別の風が吹き始めていた。
「精霊の森を過大評価しすぎだ」
重い声が会議室に響く。
「作物が良い? だから何だ」
「精霊と共鳴? だから危険だ」
反対派貴族、ヴァルツ侯爵。
彼は机を指で叩いた。
「力は管理するものだ。放置するものではない」
その言葉に、数人が頷く。
「精霊の森派閥が広がりすぎている」
「早いうちに制御すべきだ」
制御。
その言葉は、柔らかく聞こえて実に硬い。
その頃。
森では、ハルがのんびりと草を抜いていた。
「……平和だなあ」
隣でレイナが笑う。
「何か起きてほしいの?」
「いや、全然」
ルナが静かに言う。
「でも、平和は守らないと続かないわ」
ハルは少しだけ考える。
「守るって言ってもなあ」
エリシアが穏やかに続ける。
「選択をすることです」
「選択?」
「争わない、と選び続けること」
ハルは苦笑する。
「難しいな」
そのとき、ローベルトが森へ入ってきた。
表情が少し硬い。
「王都で動きがあります」
空気がわずかに締まる。
「反対派が、監査名目で介入を検討しています」
レイナが立ち上がる。
「敵?」
「まだ、議論段階です」
リリアが一歩前へ出る。
「私が抑えます」
その目は、もう迷っていない。
ハルは、少しだけ空を見た。
精霊がふわりと舞う。
「俺たちは変わらない」
静かな声。
「無理に広げない」
「無理に奪わない」
「でも、守る」
レイナが頷く。
ルナが微笑む。
エリシアが目を閉じる。
リリアが深く息を吸う。
遠く、王都で。
ヴァルツ侯爵は呟く。
「甘い村は、いずれ腐る」
だが彼はまだ知らない。
その甘さが、腐敗ではなく。
強さだということを。
森は今日も穏やか。
だが、世界は少しずつ動いている。
甘さは、試されようとしていた。
平和は偶然ではなく、選択の積み重ね。
甘い世界が試される時、
それでも甘さを保てるのか。
次回は、王都側の動きをもう少し描きます。
月灯り庵




