今日は何もしない日
今回は完全緩和回です。
何も起きない日常が、いちばん強い。
「今日は休みだ」
ハルの一言で、森が静かにざわついた。
「休み?」
レイナが目を丸くする。
「畑は?」
「最低限だけやった」
「水路は?」
「エリシアが昨日整えてくれた」
「精霊は?」
「元気」
ハルは笑う。
「だから今日は、何もしない」
丘の上。
大きな木の下。
四人が並んで座っている。
風が気持ちいい。
ルナがぽつりと言う。
「何もしないのは、難しいわね」
「王都では考えられません」
リリアが苦笑する。
レイナが寝転ぶ。
「最高じゃん」
ハルは草に寝転ぶ。
空が青い。
精霊がくるくる回る。
「こういう日が、一番贅沢なんだよ」
ルナが横を向く。
「あなたは、たまに核心を言うわね」
しばらく無言。
だが心地いい。
レイナが突然、ハルの腕を枕にする。
「ちょ、おい」
「動くな」
ルナが反対側に座り直す。
自然に距離が縮まる。
リリアが戸惑いながらも、少し近づく。
エリシアが静かに笑う。
「ハル」
ルナが小さく言う。
「何もしていないのに、満ちているのはなぜかしら」
「みんながいるからじゃないか?」
即答。
全員が少し黙る。
レイナがぽつり。
「ずるいなあ」
昼。
簡単なパンと果実。
みんなで分ける。
「豪華じゃないのに美味しい」
リリアが言う。
「空気が味を足すのよ」
ルナが微笑む。
レイナが笑う。
「ハルがいると甘くなる説」
「それ俺のせい?」
午後。
昼寝。
精霊が静かに揺れる。
ハルは目を閉じる。
両側があたたかい。
「重い……」
「動くな」
「逃げないで」
二方向から圧。
エリシアが小さく言う。
「逃げ場はありませんね」
夕暮れ。
何も起きなかった。
事件も、争いも。
でも。
胸が満たされている。
ハルが言う。
「これが守りたいものだ」
誰も否定しない。
精霊の森は、今日も甘い。
物語は山と谷。
今は谷の甘さ。
次も、もう一段甘くいきます。




