表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生した俺は精霊に愛されすぎて、静かに村を育てます  作者: 月灯り庵


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

78/162

王都視察団、襲来(でも甘い)

今回は王都視察団回でした。


緊張→安心→友好へ。


なろう的に「主人公格上げ確認回」です。

「……来るらしい」


ローベルトが真顔で言った。


ハルは畑で土を触っていた手を止める。


「何が?」


「王都から視察団です」


空気が一瞬止まる。


レイナがぴくりと反応する。


「敵?」


「公式には友好視察です」


「公式には、って何」


ルナが静かに問う。


ローベルトはため息をついた。


「王都はまだ半信半疑なのです」


三日後。


馬車が三台、森へ入ってきた。


先頭には若い伯爵。


後ろに文官、護衛、記録官。


空気は張り詰めている。


「ここが……」


伯爵が呟く。


森の空気に触れた瞬間、表情がわずかに緩む。


「……柔らかい」


ハルは小屋の前で手を振った。


「いらっしゃい」


その一言に、文官が戸惑う。


「え、門番は?」


「ない」


「検問は?」


「ない」


伯爵が小さく笑う。


「なるほど」


案内される一行。


水路を見て、文官が目を丸くする。


「水質が王都基準以上……?」


畑を見て、記録官が震える。


「魔力浸透率が安定しすぎている」


エリシアが静かに言う。


「自然に整えただけです」


「自然でこれですか?」


昼食。


ルナが静かに料理を並べる。


レイナが堂々と肉を運ぶ。


エルフたちが整然と配膳する。


伯爵が一口、米を食べる。


止まる。


「……これは」


文官も食べる。


「甘い……?」


「いや、優しい」


表現に困る。


ローベルトは横で腕を組む。


(分かるだろう)


視察団は観察する。


ハルの周囲に自然に集まる精霊。


ヒロイン三人の距離感。


笑い声。


緊張が、溶ける。


だが。


護衛隊長が低く言う。


「統率者の能力を確認したい」


空気が少しだけ張る。


レイナが一歩前へ出る。


「必要?」


伯爵が制止する。


「形式です」


ハルは首をかしげる。


「能力って?」


「精霊同調の実演を」


ハルは困った顔をする。


「実演って言われても」


少し考え――


畑へ向かう。


「水、少し欲しいな」


精霊がふわりと動く。


水が流れ、風が通る。


土が柔らかくなる。


派手ではない。


だが、空気が変わる。


伯爵が息を呑む。


「……森が応えている」


視察団は理解する。


これは支配ではない。


共鳴だ。


奪えない。


命令できない。


「危険ではない」


伯爵が静かに言う。


「むしろ――守るべきだ」


夕暮れ。


伯爵がハルに向き直る。


「精霊の森は、王都と友好関係を結びたいか?」


ハルはあっさり答える。


「争わないなら、いいよ」


単純。


だが揺るがない。


ルナが微笑む。


レイナが腕を組む。


エリシアが目を細める。


帰りの馬車。


文官が呟く。


「甘すぎませんか、あの村」


伯爵が笑う。


「甘いが、芯がある」


ローベルトが小さく言う。


「精霊の森は、攻める場所ではない」


「育てる場所です」


誰も反論しなかった。


森。


「なんか大事になってない?」


ハルがぽつり。


ルナが肩をすくめる。


「あなたが何もしないからよ」


レイナが笑う。


「何もしてないのに強いって、ずるくない?」


精霊がくるくる回る。


今日も森は穏やか。


だが。


外の世界は、確実に動き始めている。

精霊の森は、ただ甘いだけではありません。


甘くて、強い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ