観測者たち
新たな外部勢力“観測者”登場回です。
介入はまだしません。
ただ、見ています。
大陸西方、断崖の塔。
白い石で築かれた細長い塔の最上階。
円形の部屋の中央に、水面のような鏡が置かれている。
波紋が広がる。
森の丘が、わずかに映る。
「揺れが、安定した」
長衣の男が呟く。
その瞳は冷静。
興味だけがある。
「王都との干渉、失敗か」
別の女が言う。
「いや」
男は首を振る。
「失敗ではない」
「均衡が成立した」
鏡の水面が、ソラの姿を映す。
小さな子ども。
だが周囲の精霊の揺れが、深い。
「時間干渉の素質」
女が淡々と告げる。
「予言ではない」
「重なり」
男は指を鳴らす。
水面がさらに揺れる。
三年後の森。
拡張していない。
だが層が厚い。
森と王都の境界が、柔らかい。
「これは脅威か?」
女が問う。
男は笑う。
「脅威ではない」
「放置すれば、広がらない」
森は広げない。
だが壊れない。
それが厄介。
「観測を続ける」
男が決める。
「介入はしない」
今は。
まだ。
森。
丘の上。
ソラが空を見上げる。
精霊が、ほんの一瞬だけざわめく。
ミナが振り向く。
「……遠い」
ハルが目を細める。
風の向きが違う。
だが敵意はない。
ただ視線。
「見られてるな」
レイナが言う。
「見させとけ」
ハルは短く答える。
森は広がらない。
奪わない。
急がない。
それが盾。
塔。
男が鏡を覆う。
「三年」
再びその言葉。
王都だけでなく。
外側も、三年を見る。
観測者は動かない。
だが知った。
壊れにくい均衡が、芽吹いていることを。
森は世界を変えない。
だが世界は、森を見始めた。
力は、壊す者だけではありません。
見る者もまた、影響を持ちます。
森は揺れません。
ですが、世界は気づき始めました。
―― 月灯り庵




