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異世界転生した俺は精霊に愛されすぎて、静かに村を育てます  作者: 月灯り庵


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見えない手

強硬派が一段踏み込む回です。


合法的な囲い込み。


森は戦わず、拒みます。

森の外縁に、見慣れない杭が打たれていた。


粗末だが、意図は明確。


境界を示すような印。


王都商業院の監査印が、小さく刻まれている。


レイナがそれを引き抜く。


「露骨だな」


エリシアが目を閉じる。


「土地の再測量、名目はそれでしょう」


森の領域を“確認”する。


制度の中に森を押し込む第一歩。


「税の算定区域に含めるつもりか」


ユリウスが低く言う。


「合法的に囲う」


ハルは杭を見つめる。


怒りはない。


ただ、考える。


「森は誰のものだ?」


問いが落ちる。


子どもたちが集まる。


バルドが言う。


「守るなら戦うぞ」


カイが不安げに見る。


ミナは杭をじっと見つめる。


「戦うと、相手の形になる」


静かな声。


ハルは杭を手に取る。


「燃やさない」


「折らない」


「送り返す」


レイナが笑う。


「どうやって」


杭を、きれいに束ねる。


森の果実を一つ添える。


そして書状。


『精霊の森は拡張せず、囲われもしない』


『境界は必要ない』


短い。


挑発もない。


王都。


副長の前に、杭が戻る。


しかも整えられ、礼儀正しく。


果実まで添えられて。


「……拒否か」


「敵対ではありません」


部下が言う。


それがまた腹立たしい。


森は怒らない。


騒がない。


抗議しない。


ただ従わない。


「次は実測だ」


副長が言う。


「正式な役人を送る」


合法。


制度。


森を囲む網は、ゆっくり狭まる。


森。


ハルは丘に立つ。


ソラが小さく「あ」と声を出す。


精霊が、ほんのわずかに鋭く揺れる。


穏やかさの奥に、芯がある。


「囲うなら、壊れるぞ」


ハルが呟く。


森は拡張しない。


だが、縮められもしない。


見えない手が伸びる。


だが森は、掴ませない。

怒らない拒絶は、最も強い。


森は今日も揺れません。


ですが、網は近づいています。


―― 月灯り庵

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