水面下の波
王都強硬派が水面下で動き出す回です。
正面からは触れない。
だからこそ、間接的に。
森は試され始めます。
王都商業院、奥の会議室。
窓は閉じられ、灯りは落とされている。
円卓を囲むのは、強硬派と呼ばれる者たち。
王の「触れるな」という決定は、彼らにとって敗北に近かった。
「森は広がっている」
商業院副長が低く言う。
「港町、教育層、若手貴族」
数字は小さい。
だが傾向は明確。
“森派”は思想ではない。
だが在り方として浸透している。
「王は観察を選んだ」
別の声。
「だが我々は秩序を守る」
言葉は穏やか。
だが内側に焦りがある。
森は軍を持たない。
城壁もない。
だが影響が止まらない。
それが怖い。
「正面からは触れられない」
副長が言う。
「ならば、間接的に」
沈黙。
「交易監査を強化する」
「森の周辺で盗賊対策を強める」
「教育制度との整合性を問う」
どれも合法。
どれも秩序の範囲。
だが意図は明確。
圧。
「王女が戻ったばかりだ」
誰かが言う。
「今は動かぬ方が」
副長は首を振る。
「今だからこそだ」
森は余白。
だが余白は、放置すれば広がる。
彼らはそう信じている。
その頃、森。
夜の水路に、わずかな違和感。
石の配置が、ほんの少しずれている。
偶然か。
風か。
それとも――
ミナが足を止める。
「揺れが違う」
カイが不安げに見る。
ソラが小さく「あ」と声を出す。
精霊が、わずかにざわつく。
丘の上。
ハルは空を見る。
「来たな」
レイナが目を細める。
「王都か?」
「分からん」
だが風向きが変わった。
敵意ではない。
探る気配。
王城。
王エドゥアルドは報告を受ける。
「商業院が監査を強化」
王は目を閉じる。
「過剰にはするなと伝えたはずだ」
「表向きは合法です」
王は小さく息を吐く。
急がない選択は、全員ができるわけではない。
王女リシェリアは、窓辺に立つ。
森の夜を思い出す。
静かな揺れ。
壊れにくい場所。
「急がせないで……」
小さく呟く。
だが波はもう動いている。
森。
精霊が再び揺れる。
強くはない。
だが確実。
森は壊れない。
だが試される。
水面は静か。
だがその下で、波が生まれていた。
急がない選択は、全員ができるわけではありません。
森は揺れません。
ですが、水面下の波は確かに存在します。
―― 月灯り庵




