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異世界転生した俺は精霊に愛されすぎて、静かに村を育てます  作者: 月灯り庵


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王都からの書簡

王都から森へ直接書簡が届く回です。


穏やかな言葉の中にある、制度への誘い。


森は拒絶せず、従いません。

森の朝は、いつも通りだった。


畑に光が落ちる。


子どもたちの笑い声。


精霊の揺れ。


そこへ、一頭の早馬が現れた。


王都の紋章。


兵ではない。


伝令だ。


「精霊の森代表、ハル殿へ」


丁寧な口調。


だが空気は張る。


封蝋には王都商業院の印。


リリアが慎重に受け取る。


「正式書簡です」


ハルは土のついた手を軽く拭く。


「読め」


リリアが封を切る。


静かな声で読み上げる。


『精霊の森における教育および交易活動について、王都はその在り方に関心を抱いている』


子どもたちが耳を傾ける。


『港町ラディアとの直接取引の継続により、流通秩序に影響が生じている』


レイナが鼻で笑う。


「秩序、ね」


『ついては、森の意向を正式に確認したい』


『森は王都の枠組みに組み込まれる意思があるか』


空気が一段、冷える。


組み込まれる。


それは保護でもあり、制限でもある。


「どういう意味だ?」


バルドが小声で聞く。


ユリウスが答える。


「王都の制度下に入れ、ということです」


税。


教育監査。


交易許可制。


森は自由を失う。


だが安定は得る。


ルナがハルを見る。


「答えるの?」


「答える」


即答。


逃げない。


だが急がない。


ハルは丘に立つ。


森を見渡す。


子どもたち。


学校。


畑。


水路。


精霊。


ここは思想ではない。


暮らしだ。


「組み込まれない」


ハルが言う。


短い。


迷いがない。


「敵対もしない」


続ける。


「従属もしない」


風が吹く。


精霊が揺れる。


穏やかに。


リリアが筆を取る。


「文面は穏やかに」


「当然だ」


ハルは肩をすくめる。


「俺たちは戦ってない」


その夜。


王都へ返書が送られる。


簡潔。


『精霊の森は拡張を望まず、他勢力への干渉も行わない』


『暮らしを守るのみ』


『組み込まれる意思はない』


礼節は尽くす。


だが譲らない。


王都。


書簡を読んだ商業院長が目を細める。


「穏やかだが、拒否だな」


敵意はない。


だが従順でもない。


最も扱いにくい。


森。


ソラが小さく声を出す。


「……あい」


ミナが微笑む。


カイが空を見る。


森は揺れない。


だが王都は、次の手を考え始める。


精霊の森は、今日も変わらない。


それが、最大の意思表示だった。

強さとは、声を荒げることではありません。


揺れずに答えること。


森は今日も、森のままです。


―― 月灯り庵

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