選んだのは、私たちだ
港町が森との取引継続を宣言する回です。
森は動かず、外が覚悟を決めました。
選択の物語です。
港町ラディアの広場に、人が集まっていた。
漁師、商人、職人。
王都の監査官も後方で腕を組んでいる。
空は晴れているが、空気は重い。
壇上に立ったのは、マレアだった。
若い。
だが目は迷っていない。
「王都からの是正要請について」
ざわめきが止まる。
「森との直接取引を、王都経由に戻すよう求められました」
誰も驚かない。
予想はしていた。
「ですが」
マレアは一度、港の方を見る。
「私たちは、違法をしていません」
「量も増やしていない」
「ただ、質を選んだだけです」
静かな言葉。
だが芯がある。
古株商人が声を上げる。
「王都を敵に回すのか?」
マレアは首を振る。
「敵にしません」
「従わないだけです」
ざわりと空気が揺れる。
「森は、何も求めてきません」
「値を吊り上げも、囲い込みもしない」
「ただ、約束を守る」
漁師たちが頷く。
海は誠実でなければ続かない。
森も同じだ。
「だから私たちは」
マレアは深く息を吸う。
「森との取引を、継続します」
はっきりとした宣言。
静かな拍手が起きる。
やがて大きくなる。
監査官が一歩前に出る。
「不利益が生じる可能性があります」
脅しではない。
事実。
マレアは頷く。
「承知しています」
「それでも、選びます」
選択。
誰かに強いられたのではない。
自分たちで決めた。
その日の夕方。
森に知らせが届く。
ダリオが報告する。
「港町が継続を宣言しました」
レイナが笑う。
「やるな」
ルナが静かに言う。
「覚悟ね」
ハルは畑に立ったまま。
少しだけ空を見上げる。
「俺たちは何もしてない」
ユリウスが言う。
「それが、影響です」
森は旗を振らない。
だが在り方は、伝わる。
揺り籠の中で、ソラが声を出す。
「う……」
まだ言葉にならない。
だが精霊がやわらかく揺れる。
ミナが微笑む。
カイが空を見る。
森は静か。
だが港町は立った。
夜。
港町に潮風が吹く。
森にも風が届く。
それは同じ風ではない。
だが、どこか似ている。
選ぶということ。
それが今、海と森を繋いでいた。
森は広げません。
それでも、選ぶ人が増えています。
静かな波は、止められません。
―― 月灯り庵




