ハートフルっ★ マジカル催眠ふれあいひろば♪
更新遅れて誠に申し訳ごさいませんでしたァ!!(フライング土下座プレス)
言い訳するとね……こんなふざけた話でも、考えちゃうんだ……
伝えたいことをどう表現すべきか……
もっといいものにするにはどうしたらいいか……
こんな未熟な表現のままで、読者の前にお出ししてもいいものかって……
でもやめたッ!! 全部やめた!!
小難しい創作論はクソと一緒に下水に流した!!
俺は出すッ!! いっぱい出すッ!!
ろくに推敲もしてないナマの情熱を、無責任に出しまくるッ!!
読め、飲み干せ、受け止めろッ!!
オラッ、喰らえ!! これが俺の!! 俺たちの!!
「ドスケベ催眠おじさん」だあァーーーッ!!
新ネロイ村、その中央、普段は村のちょっとした祭りごとなどに供される広場にて。
「はいはい押さないで押さないで―! 慌てなくても逃げたりしませんからねー!」
騎士団イチの包容力をもち同僚から親しみを込めて「ママ」と呼ばれる中年女性騎士ダナエ・ムーナイト(実は独身)が、わらわらと群がる子どもたちを優しく押しとどめる。
「準備はよろしいですか、ドスケベ催眠おじさん様?」
「い、いつでも……!」
目の前でぴょんぴょこ飛び跳ねる若きエネルギーの塊たちに気圧されながらも、ドスケベ催眠おじさんは絞り出すように返事をする。気丈に胸を張れば勇ましき正装にでっぷりした贅肉が日差しを照り返す――すべては憧れに恥じない威厳たっぷりの英雄であるために。
「それでは皆さんお待たせしました! ただいまより、『第一回・ドスケベ催眠おじさん復活記念催眠会』を始めます!!」
◎ ◎ ◎ ◎ ◎
催眠会、それは要するに握手会のようなものである。
訂正する。語弊があった。語弊しかなかった。催眠と握手は本来全然違うものである。肩たたきと悪徳セクハラ整体師くらい違う。同じにしてはいけない。謹んでお詫び申し上げる。
そのうえで付け加えよう。ムートポス人にとっては、そして相手がドスケベ催眠おじさんである限りにおいて、催眠は握手と同義、いやむしろ握手以上に純粋無垢で尊いものであると。
読者諸兄は覚えているだろうか? 転生初日、リナが「祝福の催眠」だとかなんとか言ってドスケベ催眠おじさんに迫った夜のことを。たぶん覚えてないほうが健全だと思うけども、それはともかく、リナの認識はあながちドスケベ催眠おじさん信奉者に限ったものではない。
ドスケベ催眠おじさんの催眠は、邪神を倒し世界を救った奇跡の魔法。すなわち、神の加護にも等しいご利益のあるありがた~いものとして広く認知されている。たとえ発祥がとある一般悪ノリ地球おじさんのおふざけであったとしても、ムートポス人には知るよしもない。
事情を知っている身からすれば「ハゲデブおじさんに催眠をかけられることが祝福だって……!?」と抵抗を感じるだろうし、他ならぬドスケベ催眠おじさん自身が誰よりも強くそう思っている。しかし、よくよく考えてみれば、こうした事例は地球においても散見される。
とりわけジャパンとかいうクレイジー土着信仰アイランドにおいては、獅子舞なるモンスターに頭部を嚙まれたら無病息災でいられるとか、ナマハゲなる不審者が奇声をあげて住居侵入してきたら無病息災とか、「明らかにヤバい見た目のやつが怖いことをしているのに何故かやたらと無病息災に結び付けられてしまう」謎の風習が当然のように現存している。
それと同じだ。客観的にはハゲデブおじさんが民衆に怪しげな術をかけているだけでも、そのおじさんがその術で世界を救ったという確かな信頼と実績があるから、一種の宗教行事として成立してしまう。
いわばドスケベ催眠おじさんはムートポスの獅子舞であり、ナマハゲなのだ(獅子舞関係者およびナマハゲ関係者の皆様ほんとにごめんなさい)。
さらに、その獅子舞の伝説が絵本や教科書となって子どもたちに広く知られていたら?
そのナマハゲが巨悪を滅ぼした強くて特別な存在であったら?
そこには単なる縁起ものを超越した「ヒーロー」としtの人気が加算される。
地域のありがたい伝統行事と……!
子どもの憧れスーパーヒーローが……!
超 ★ 絶 ★ 合 ★ 体
爆誕! 正義のドスケベ催眠ヒーローおじさん!!
……というイカレ計算式が背景にあったかどうかはさておき、とにかくドスケベ催眠おじさんはありがたい存在で、その催眠魔法はありがたい祝福なのだ。
であれば、ムートポスの一般人がドスケベ催眠おじさんに求めるものとは何だろう。
きっと単なる会話や、月並みな握手では足りないはずだ。
たとえ本人の前では気をつかって、言葉に出せないとしても。
歌手に歌声を、芸人に面白いことを求めるように。
心の底では、その人を象徴する芸を欲してしまうはずだ。
ゆえに、さらなる好感度を稼ぎたい貪欲なスターが、民衆を前にすべきことはひとつ。
こちらから、求める機会を与えてやることだ。
◎ ◎ ◎ ◎ ◎
「こんにちは、ドスケベサイミンオジサン様! いつも絵本読んでます!」
「私も私もー! 毎日みんなとドスケベサイミンオジサンごっこしてるよ!」
「俺だって、こないだドスケベ催眠おじさん人形つくったもん! ホラ見て!」
押し寄せるきらきらした瞳たちに、おじさんはおっかなびっくり接していく。
「え、絵本なんてあるんだ。読んでくれてありがとね……」
「ドスケベサイミンオジサンごっこ、それ大丈夫なやつ? ちゃんと楽しい?」
「うわぁ、この人形よくできてるね……肌色面積広すぎるあたりが……」
はじめは内心、適当に話を合わせたらそのうち勝手に満足して帰ってくれたりしないかな、とも思っていた。しかし子ども騙しの技で現実に子どもが騙されるはずもなく。次の瞬間には
「「「催眠して!!!」」」
重なる鍵括弧を幻視するほど勢いよく、無邪気に要求してくるのだった。
「ッスゥー……」
ドスケベ催眠おじさんはなんとも言えない表情で息を整える。落ち着け、予想できたことだと繰り返し自分に言い聞かせる。そもそも遠慮なくリクエストできるようにと、対魔騎士団が「催眠会」の名を冠したイベントを考えてくれたのだ。詳細を教えてもらったのはついさっきのことだけれど……合理性があると判断したうえで、ドスケベ催眠おじさん自身が合意した。
考えてはいたのだ。ムートポス人との友好関係を深めるならば、いつか一般人に催眠をかけねばならぬ日が来るかもしれないと。最大にして唯一の「持ちネタ」なのだから、やらずにお茶を濁し続けるのはあまりにも興ざめが過ぎるだろうと、一応考えては、そう、考えてはいたのだ。隙を見てはおやすみの催眠とか食後の催眠とかおはようの催眠(?)を求めてくるリナをのらりくらりかわしながら……考えては……いたのだけれど……。
いま、目の前にいる小さな命たちは、とても画面越しのNPCと同列には扱えない。面白半分で実験台にしていい存在ではないのだ。
ゲーム時代とは違い、遊びではなく、真剣に催眠せねばならない。
「…………わかった。いくよ……」
ドスケベ催眠おじさんが【聖杖『人魚わからせ棒』+99】を構えると、会場の手配や列の誘導を手伝っていた騎士たちが、子どもたちの背後にまわる。万が一、催眠を受けた人がふらついて倒れそうになった場合、すばやく抱き留めるためだ。
無論、ドスケベ催眠おじさん自身も、安全への配慮を怠ったりはしない。脳裏に浮かぶ魔法リストから、戦闘にはあまり用いない、比較的危険性の少ないと思われるものを選択する。
「《ドーズ・ドール》」
杖先から伸びる一筋の光、術者と対象を繋ぐ糸のごとし。みたび唱えて杖をふるえば、三人の子らが勇者と繋がれ、瞳は虚ろにとろけていく。
――あ~あ、やっちまった。ついにやっちまったよ!
ドスケベ催眠おじさんは脳内で半分ヤケになっていた。
《ドーズ・ドール》の効果は「攻撃行動の禁止」および「移動方向の指定」。対象は眠りに落ちるのではなく、ぼんやりと意識を残したまま術者の意のままに歩き回る。相手の行動を操作するという意味では、ここ最近使った魔法のなかでは最も「催眠」の原義に近いものといえるだろう。
指定できるのは移動のみ。「ついてこい」「あっちいけ」程度の簡易な指示ができるくらいで、アレをしろコレをやれと無制限に命令できるわけではない。今、子どもたちにかけているのは「止まれ」の指示だけ。本人たちは心地よいまどろみの中にいて、はたから見ればボーッと突っ立っているだけ。無害。無傷。よって無問題。
それでも……「ついに一般人に催眠かけちゃった」というドスケベ催眠おじさんの心のしこりはどうしようもない。数秒たち、そろそろいいかと魔法を解除しても、やるせなさは消えてくれなかった。
「あっ……終わっちゃったぁ」
「フワフワして気持ちよかった」
「やっぱ催眠ってすげー!」
身体の自由を取り戻し、口々に感想を述べる子どもたち。親らしき大人たちも駆け寄ってきて、これでウチの子もたくましく育ちますと、ペコペコ感謝を繰り返す。
「ハハ……どういたしまして……」
辛うじてひねり出した言葉と同時、ドスケベ催眠おじさんの固定されたニヤけづらが、少しだけ哀愁と皮肉の色に染まったことに気づいたのは、ケヴィンとミリオンだけだった。
「わ、私もお願いできますか!」
「厚かましいこととは承知しているのですが……」
「どうしても祝福を賜りたく」
最初の子どもたちを皮切りに、大人たちも控えめに手を挙げ始める。
「構いませんよ。子ども優先ですが、大人禁止ではありませんから」
と、対魔騎士ダナエがフォローしてやると、大人たちは途端にソワソワしだす。最初の一人が行けば芋づる式になだれ込んできそうな雰囲気だ。
ひとたびそうなってしまえば、老若男女問わず、村じゅうから希望者が集まるだろう。広場での催眠会がひと段落したあとは、家を出られない老人のもとを訪ね催眠してまわる予定すら組まれている。もとより親睦を深めるのが主旨である以上、遅かれ早かれ村民ほぼ全員に催眠をかける運命だったのだ。
「……むん!」
ドスケベ催眠おじさんは自ら両頬をパンと叩いた。覚悟を決めろと己に課して。
腹は括った――物理的にはしまりのない豚っ腹だけど、少なくとも精神的には!
ドスケベ催眠おじさんはヤケクソ気味に声を張る。
「次の方、どうぞッ!!」
◎ ◎ ◎ ◎ ◎
刹那、我先にと村民たちがダッシュ。歴史的貴重体験を逃すまいと決死で迫ってくるさまは、どこかリナを彷彿とさせる。訂正、本気のリナさんはこれよりもう少し目つきがヤバい。
どちらにせよ勢いは本物だ。咄嗟に対魔騎士が列形成に動くも、ちょっと間に合うか分からない。ともすれば暴動にも発展しかねない熱気である。ドスケベ催眠おじさんは、先ほどの覚悟はどこへやら、反射的にビクついて両手で顔をかばうけれど――
「ちょっと待ったァ!!」
――その声は助け舟か、あるいは新たな波乱の呼び水か。
聞き覚えのない可憐な、それでいて鋭くもある響きに、村民一同の足が止まる。
「誰だ、あの子……?」
「あんなハイカラな娘、うちの村にいたか?」
桃色のツインテール、さらに鮮烈なピンクの瞳。
「子どもが優先、だったよね?」
丈の短い衣服から晒された細い肢体は、幼くも覇気と色気を帯びて。
「あと、別に村民限定でもない」
ざっと踏み出した足に、燦燦と陽光を照り返すネコちゃんサンダル。
「じゃあ、今この場において優先されるべきは、あたし……」
世界はこのために在ると言わんばかりに、彼女は迷いなく突きつける。
「ドスケベ催眠おじさん様っ♡ サチコと、あ・そ・ぼ……っ♡」
メスガキサキュバスが、真正面からやって来た。




