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番外編:メスガキサキュバスちゃん秘密のオシゴト③

 明暮の祭壇から徒歩十数分。ほんの小山ひとつ挟んだだけの近場に、新ネロイ村という名の集落がある。

 頭に「新」がつくのは、一度なくなり再起したから。一度なくなったのは、祭壇から現れた邪神ヒュプノスに、最初の晩餐とばかりに滅ぼされてしまったから。

 だが、受難の睡神時代(ヒュプノスエイジ)も過去のこと。邪神が破られてからは、ドスケベ催眠おじさんに命を救われた生き残りたちが帰ってきて、故郷の復興につとめた。

 いまでは旧村民の子孫のみならず、英雄ゆかりの地に憧れ王都より移り住んできたものたちも入り混じり、若者や子どもたちも暮らす平和でのどかな農村の姿を取り戻している。


 そんな再生と復活の象徴ともいえる村に、ピンク髪ツインテール露出多め王都流行ネコちゃんサンダルの少女がひとり。


「田舎……♡ 僻地(へきち)……♡ 家畜くっさぁ……♡ でも野菜とか割と嫌いじゃないよ……♡」


 サキュバスのサチコ。正体を隠せば見た目通りの女児にしか見えない――だからこそ、その挑戦的なファッションは、農村ではかなり浮いている。

 牛っぽいゴツゴツしたムートポス産の動物が畑を耕しているのを横目に、ぺったんぺったんマイペースに歩くサチコ。

 どうして彼女がわざわざ王都を離れ、ネロイ村くんだりまで足を運んだのかといえば、無論ドスケベ催眠おじさん関連である。


「まだ来ない♡ 遅い♡ 遅すぎ♡ いつまでダンジョン探索してるの♡ 田舎って暇つぶしもできないから苦痛なんだけどホント早く来てくんないかなマジで……(地声)」


 さる情報筋から、サチコはドスケベ催眠おじさんが対魔騎士団の遠征に同行することを掴んだ。行き先が明暮の祭壇であることも。

 明暮の祭壇への遠征時、対魔騎士団が決まって新ネロイ村を訪れることは周知の事実。よって今回、ドスケベ催眠おじさんもここに来ることは容易に推察できた。

 動向が予測できているならば、利用しない手はない。サチコは現地に前乗りし、ドスケベ催眠おじさん襲撃計画の下準備をすることにした。


「来ない……ってことは、無いと思うんだけどなぁ……」




◎ ◎ ◎ ◎ ◎




 サチコの推測を裏付ける情報もあった。それは村に入って間もなく、村長宅にお邪魔したときのこと。

 自分の半分ほどの身長しかない女の子に情けなくベッドへ組み伏せられガチガチに魅了の術をかけられた村長さんは、恋人にささやくピロートークよろしく嬉々として語り始めた。


『これは秘密だけどぉ……君にだけ教えちゃうねぇ……』


 なんでも、騎士団の訪問がある際は、いつも事前に伝令の騎士を通じて連絡があるらしい。いきなり押しかけて村に迷惑をかけないよう、あらかじめ予定時刻や人数など、村長に話を通しておくのだ。


『ここだけの話、もうすぐ遠征部隊といっしょに……伝説のドスケベサイミンオジサン様が一緒にくるらしいんだよね! どう? すごくない? あのドスケベサイミンオジサン様だよ! ドスケベサイミンオジサン様って実在したんだねぇ!』


 村人にはナイショのサプライズ。村長のぼくだけが知ってるトクダネだよ! と、サキュバス女児に鼻息荒く語る村長、五十三歳妻子あり。


『あっそ。情報ありがと。役に立ったから寸止めで許してあげる』


 サチコは冷ややかな態度で村長の顔面を適当に掴むと、干からびないギリギリのラインまで生命力を吸引した。


『アッ、アッ、アァーッ!!』


 身体の芯から大切なものが引き抜かれていく感覚に、村長はビクンビクンと全身を跳ねさせると、打ち上げられた魚のようにくったりと脱力した。


『こういうジジイに限って声だけ無駄にデカいんだよね。手が唾でベットベト」


 サチコは哀れな被害者に背を向けると、手近な棚から村長さん秘蔵の高級蒸留酒をかっぱらい、消毒とばかりに手にぶちまけた。




◎ ◎ ◎ ◎ ◎




 そして現在。サチコは村人の視線を避けるように村はずれの木立の切り株に腰掛け、足をぶらぶらさせながら、ドスケベ催眠おじさんが来るのを今か今かと待っている。


「まっだかなー、まっだかなー、ドスケベ催眠おじさんまっだかなー」


 こうしていると、パパやお兄ちゃんや親戚のおじさんでも待っているような感覚になってくる。

 しかし、それらはサチコに無縁のもの。サチコはダンジョンに渦巻く闇の魔力が凝り固まり、誰に産み育てられたわけでもなく、最初からこういう姿で生み出された魔物。際限なく湧き出(スポーン)しては勇者や冒険者に狩られていく、量産型モンスターの一体に過ぎない。そこらのスライムやゾンビと本質的に差はなく、たまたま同族より少し要領がよく、たまたま主君に見出された幸運なサキュバス。

 だからサチコにとって家族とはご主人様を置いて他にいない。生命力(ごはん)の供給源として人間と仮初の触れ合いをもつことはあれど、心は常に彼のそばから離れない。

 ご主人様のためなら何だって耐えられる。田舎で退屈きわまりない時間を過ごすことも、伝説の勇者の前に身を投げ出すことも……。


「来たっ」


 ついに遥か遠く、村の入り口に姿を見せた人影。サチコは弾けるように立ち上がった。




次回、サチコとドスケベ催眠おじさんが絡みます。

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