認めるしかないようです
今回、文体はライトなのに若干グロいです!
私の馬鹿者~~~~!!!!
私は意識を失う寸前、アルギュロスの顔を思い浮かべてしまったことに憤慨していた。泣いて縋って頼めと言っていたアルギュロスの涼しい顔が憎らしい。助けてなんて言おうものなら、腹立つくらい美しいドヤ顔で見下してくるに違いないのだ。あああ腹立たしい!
でも、これどうしよう。
私は地面に這いつくばりながら、改めて自分の体を確認する。あちこちに緑色の結晶が無数に生えている。しかも針みたいに生えていて、パッと見宝石の杭で刺されまくったヴァンパイアみたい。ぶっちゃけ痛い。
気を失って最初、目の前にはアレキサンドライトもいたのだ。が、なんかめっちゃ怒ってた。言葉は通じないけれど、薔薇色どころか血の色くらいに染まっていて怖かった。ところが私にはアレキサンドライトが怒っている原因がわからない。
気がついたら霧のかかった砂漠みたいなここに……たぶん心の中? に放置されていた。出口とアレキサンドライトを探して歩いていたら、水晶の針が生えてきてご覧の有様だ。足が重いな違和感があるなと思ったら生えてくるんだもん。びっくりした。
「ちょっとぉ……話せばわかるわよ……出て来てよ……」
這いずるのにも限界が来て、アレキサンドライトを呼んでみる。来ない。休憩がてら針の数を数えてみた。二十を越えた辺りで放棄した。
ああ、外はどうなっているでしょうか。
え、まさか私、目が覚めたら断罪イベントの真っ最中でした~なんてことにはならないよね? 私の意識がここにいるってことは体どうなってるの? 寝てるの?
ざら、と頬が砂漠に埋まる。アントニオはどうしたかな。エドガーにはいい相手を見つけてあげられてないな。シルヴァの無表情が恋しいな。お父様お母様ののほほんとした笑顔が見たいな。ミラとまた話をしたいな。ジャンクフード食べたいな。剣を振り回したいな。回る予定だった遺跡が待ってるのにな。
痛い、痛い? 痛いって感覚もよくわからないや。体が動かない。とにかく眠い。ああもう、考えないようにしてたのに。
アルギュロスのこと。
ちくしょう、腹立つなぁ。
ぼーっとしてなにも考えてなさそうな割に優秀だし。なんでもできるってチートよチート。人間を羽虫呼ばわりするのはちょっとアレだけど。そんな尊大なくせして寂しがり屋なの知ってるんだからね!
あ、アルギュロスの悪態ついてたら元気出たかも。体がふわっとして心が温まった。
「って、恋する乙女かよ!?」
声に出して突っ込んだ。口の中に砂が入ってぺっぺっと吐き出す。
「いやいやないわ。相手はゲームキャラだぞ? 痛い子じゃない? 現在進行形で体は痛いけどなんつって!」
……虚しい。言っててすごい虚しい。
ああ、でも、なんだろう。
恋だって認めたら、なんか楽になる気がする。
名無しでもやもやしてたものが形を持つように。
ずっとアレキサンドライトのせいだって思ってたけど、世話焼くの楽しかったな、会いたいなって今思っているのはただのアレクシアだ。……なんだ。アルギュロスは最初から私をアレクシアとして見ていたんだ。公爵令嬢でもなく、佐野瑞希でもなく、悪役令嬢でもなく。それが私は嬉しかったんだ。
「あーあ。なるほどこれが恋ってやつですか。なんだぁそっかそっか」
妙に納得して、私は目を閉じた。夢でいいから会えないかな、アルギュロス。そんなことを思いながら。
ちなみに、エスプリッサの生死についてはわざと明記を避けているのですけど、どっちなんでしょうね。周りの物書き屋仲間に訊いて決めるかもしれません。




