ハイスペック少年らしいです
トンデモびっくり設定が飛び出してきていて、私としてはミラに早く相談しに行きたかったが、まだ少年の方の話を聞いていない。
「おれ……レナス……。独立魔法研究機関、魔法塔、長老議会所属……」
ぼんやりとした口調で自己紹介したレナスに、一同が自己紹介を返す。しかしそれが終わると途端に眉をひそめた。
「名前、長っ……」
それ私も思ってた。
本来の名と守護獣の名を掛け合わせるので、長い。エドガーの短さが羨ましい。王妃様がとにかく短い名前をと拘ったというのにも頷ける。
「それで、レナス殿の所属するその機関についてもう少し説明をしてほしいのですが」
エドガーが問うと、明らかに渋面をする。
「え……嫌だ……今更当たり前のことを……」
「ですから、先程申し上げました通り、我がゲート・アイン国では国外の人間が来ることは稀でして」
「おれ、さっさと調査に行きたい……」
にべもない。と、レナスの膝の上にルシアが乗った。
『研究者というものは変人揃いなのです。どうかお許しを。代わりにわたしが全てお答えしますので。……レナスの所属する独立魔法研究機関、通称魔法塔と呼ばれる施設は、このゲート・アイン国からは北北東にございます。レナスはその魔法塔の運営をする長老議会に最年少で席を得た優秀な魔法使いです。影響力は各国の王族に匹敵します』
「この、少年が……?」
エドガーが呆然と呟いた。ぼうっとしていて明らかに私達より年下なのだ。にわかには信じがたい。
『皆様の困惑もごもっとも。ですが、座標が狂ったとはいえ誰も使うことのできない空間転移魔法を扱っていることでご納得いただければ』
私に全員の視線が刺さった。曖昧に笑って誤魔化そうとしたけれど、レナスの目が光った。
「君、できるの?」
「はあ、まあ、それなりに?」
すると視界ががくんと揺れた。レナスに肩を掴まれたのだ。
「どうやって!? 結界を維持したまま座標を特定して自分の質量をへぶぅっ!?」
レナスの顔面にアルビレオが飛びつき、私はアントニオに腕を引かれて離れた。レナスの膝の上から吹っ飛ばされたルシアがてこてこ寄ってきて謝罪する。
『すみませんっ、すみませんっ。……ええと、魔法塔に関してはこのくらいかと。レナスはうっかりゲート・アインに立ち寄っただけなので、外交とかはあんまり期待しないでください』
「ふむ……ルシア殿、貴女はゲート・アインに縁があると考えていいのかな」
『ええ、はい。貴方はゲート・アインの王族の方とお見受けします。わたしは秘術によりとある少女に憑いていた守護獣の成れの果て。アルビレオもそうです。その辺は複雑ですのでおいおいご説明いたします。手始めに、大まかな地図をお渡ししましょう』
ルシアが尻尾で空間を一撫ですると、どこからともなく丸まった羊皮紙が転がり出てきた。というかその前に。
「レナス様は大丈夫なんですの?」
アルビレオに蹴り飛ばされていたレナスは一向に起き上がって来ない。
『長距離移動で疲れて寝ただけです。この子は床だろうと壁だろうとどこでも平気で寝られますのでご心配には及びません』
「か、壁……?」
どうしよう。犯人を暴く手がかりになりそうな人物がどうしようもなく変な人だ。
「ルシア」
絶句していたらアルギュロスが珍しく剣呑な声を出した。普段の怠惰ぶりからは想像できない、為政者としての声。
「私が気づかないと思ったか? こいつの在り方は、なんだ?」
ルシアはピンと耳と尻尾を立てて、静かに頭を垂れた。
『申し訳ありません。レナスにも告げていないことなので、ご勘弁を……』
「……そうか」
それはとてもとても安堵の滲む一言だった。これは、と勘が告げる。けれどそれを確認するのは後だ。とにかくミラと話さなければ……。
「姉上」
アントニオの小声が思考を遮った。
「なにかしら」
「少し、お時間をいただけないでしょうか。お話ししたいことがあります」
んんんんん。またやることが一つ増えた。けれど可愛い弟の頼みだ。
「わかったわ。待ってもらうと思うけれど、絶対時間は作るから信じてちょうだい」
んんん他作品の設定を汲むとレナスがすごいハイスペックになるんですけどまあいっか!




