けじめをつけるのです
とまあ、なんだかんだアントニオも手伝ってくれることになった。しかもなぜか私の噂に鬼のように詳しかったので、ほとんど調査に時間は取られなかった。公爵家の跡継ぎ候補であるアントニオに取り入ろうと、不仲と言われている私の悪口を言いに近寄ってくる輩が多いらしい。
さて、もう一度サロンで作戦会議だ。
「噂は広まりすぎて、誰が発生源だかはわからなくなっている状況です。ただ、こうしてみると拡散したのは誰かはなんとなくわかってきました」
「え? ミラ天才?」
ミラの持ってきた紙を見てついぽろっとこぼれた。紙には『この噂を誰から聞いたか』の図が書かれており、まるで生命の樹のようになっていた。人物相関図って割と書くのが難しい。私も昔ゲームの人物で書いたら毛糸が絡まったみたいになって断念した。
「うふ。先輩の為に頑張っちゃいましたぁ。私は没落商家で貴族の方にはあまりお伺いできなかったので、アントニオに感謝ですね。ほらほら、ここ見てください」
ミラが指差した幹にあたる部分、そこにある名前を見て「げっ」と令嬢らしからぬ声を漏らす。サリーリエとナターシャ……イルコット子爵令嬢だ。双子で、アントニオの実姉。
「なんでよりによってイルコットのアホ令嬢……」
「アホなのですか? ゲームにはアントニオをいじめてたくらいしか情報なかったですけど」
「遠いとはいえ親戚だから悪く言いたかないけど、弱いものいじめ大好きさんなのよ。アントニオもそうだけど、子爵以下をネチネチと。母親が宰相様の妹さんってことで、自分は子爵家でも格が違う~とか思ってるみたい」
「宰相様も公爵家ですよね。……はは~ん。さてはその宰相様の妹さん、めっちゃ性格悪いですね」
「なんでわかるの」
「ゲームで学びました」
そう、そうなのだ。なんでも、私もびっくりの悪役令嬢っぷりを発揮したその人は、格下の子爵家に嫁入りを命じられたのだとか。それでも反省することはなかったのでしょう。娘を見ればわわかる。エア頭痛がしてきて普段禁止されている頬杖溜息のコンボを決めた。
「うーん、やだなぁ。あの双子達、公爵家とはいえ魔法局の書庫番っていう地味ーな役職に就いてるうちも見下してるんだよね。どうやって話し合おうかな」
「え、話し合うんですか?」
「え、逆に話し合い以外の手段ある?」
「とっちめればいいじゃないですか。アントニオ連れて」
「なぜそこでアントニオ? 実姉のこと嫌いに決まってるじゃない。わざわざ会わせなくても」
ミラはやれやれという風に首を振った。
「そういえば佐野先輩はそうですよね。前世でも『いーよいーよ私やっとくから!』ってなんでもかんでも一人で引き受けて」
「やっぱりいずみちゃんってモノマネ上手いよね? 練習してるの?」
「茶化さないでください。また直接訊いてみたらどうですか」
「調査だけって約束だったし、これ以上巻き込む訳には」
ミラが突然立ち上がったので言葉を切る。つかつかと歩いていった彼女は、思い切りドアを開けた。そこにはまたアントニオ。
「どうせいるだろうと思いました。いいですか――」
目を白黒させていたアントニオは、ミラの説明を聞いていくうちに眉をキリキリと吊り上げる。最後、特徴的な幼さを削ぎ落とした鋭い表情を私に向けて言うには。
「ちょっと、話し合いをしてきます」
ま、待って! 言外になにか含まれてない!?
さっと早足で去っていったアントニオを令嬢として許されるギリギリの速度で追いかける。なかなか追いつけない弟にでっかくなったなぁと呑気にも思ってしまった。
初めて感想もらってどちゃくそ嬉しい作者です。
感想に対する返信は今のところしないつもりではいますが、全部読みますね。
グサッと来る系感想も、先生と先輩後輩に揉まれてたので……少しは耐性あるつもりです。
この話はサークル会誌にも書いておらずプロットも組んでいない、息抜き作品で申し訳ないですが楽しく読んでやってください。




