↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
19/67

三つ悩みがあるのです




 目下、私の悩みは三つある。


 一つは言わずもがな。私に求婚してくるエドガーのこと。さっさと別のご令嬢をオススメしなければ、私のキャリアウーマンの道が閉ざされる。これはまだ期限は二年近くあるのでおいおい考えていくとして。


「アレクシア」


「はひっ!?」


 耳に注がれたテノールの美声に体が跳ね、読んでいた本を取り落とした。本を拾おうと屈んだ時に視界に入った自分の髪は見事な薔薇色。距離を取って振り向けば、悪戯っぽく瞳の炎を揺らめかせるアルギュロス。


「からかうのはやめていただけます!?」


 つい大声になってしまい、はっとして口を閉ざす。まだ放課後になって間もない図書室、まばらにいる人々の視線がぶすぶす刺さる。小さく頭を下げてアルギュロスを睨んだ。


「私は名前を呼んだだけなのだが」


「だからって、こんな至近距離で呼ばなくってもいいでしょう!」


 ボリュームを抑えて、常識が通じない怠惰の魔王に説教する。無駄にイケメンボイスなんだから全くもう。


 はいそこ、イヤホンで聞き慣れてない? とか言わない。


 乙女ゲームやってる時はそんなもんだとわかってて聞いているし、吐息が耳に当たったりしないでしょう。そのうち風の出るイヤホンでも開発されますかね。やめてくれ。


 話が逸れた。とにかく、二つ目の悩みはアルギュロスの距離がやたら近いことだ。驚くと私の髪が薔薇色になるのが面白いのか、頬にキスという挨拶から始まり、指を絡めるだのハグだの悪戯がどんどんエスカレートしている。この魔族無駄にイケメンだから心臓に悪い。早死にしたらお前のせいだ。

 私だって嗜めてはいるのだ。いるのですが。


「図書室では大きな声で喋ってはいけないのだろう。かといって小声で呼んだところで本に夢中なアレクシアは気づくまい」


「うっ、た、確かに……」


 流石魔王の右腕、言い負かされる率が非常に高い。けれど、このままではまずい。私がどんどん慣れて驚かなくなっていって、悪戯がエスカレートしていったら。困る。非常に困る。

 なので、アルギュロスが興味を引かれる別なものを探さなくてはいけない。今読んでいる本だって、アルギュロスにどうかと思ったから読んでいる。


 形は違えど腐っても同居人。魔界とやることは大して変わらない。


「アルギュロス様、読書などいかがですか? 人間がなにを考えているか理解するのに丁度いいかもしれませんよ」


「アレクシア、君は羽虫がなにを考えているか気にするか?」


「しませんね」


 失敗した。私は読んでいた本を戻し、退屈そうなアルギュロスを連れて帰ることにした。すると図書室を出るときに背後からヒソヒソ声が聞こえてきた。


「ねえ、やっぱり噂は本当だったのね」

「アレクサンドラ様のことでしょう?」

「遺跡で喚び出した悪魔を従えて、エドガー様を洗脳してるっていう?」

「エドガー様とお話しした子は徹底していじめられたって」


 ……これが三つ目の悩み。


 なぜか悪い噂が立っている。覚えもないのに色々と。これが悪役令嬢補正というやつなのでしょうか。アントニオに罵声を浴びせてストレス発散しているだとか、ミラをわざと転ばせて泥だらけにしたとか。今まで勉強と遺跡調査ばかりしていてクラスメイトとほとんど関わっていなかったのが、ここにきて仇になっている。


 なんにもしてないんだけどなぁ。


 火消しが上手にできる自信もないなぁ、とぼんやり思いながら家路についた。





突然悪役令嬢設定を押していくスタイル

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。