第二十三話
訓練は順調に進み、最後に模擬試合をすることになった。私の相手はというと・・・
「よろしくお願いしますよ。ティクレスの騎士殿。」
「・・・此方こそ。」
王子の取り巻きの一人らしく挨拶から嫌味たっぷりに言ってくる。周りはそんな私達を見てニヤニヤしている人達と、真剣にこの勝負がどうなるか見ている人達で別れていた。ニヤニヤしている方は王子の取り巻きだろうね。分かりやすい。ふぅとため息を吐くと何を勘違いしたのか相手が言った。
「おや?緊張ですか?安心してくださいよ。模擬試験ですからちゃんと手加減します。」
手加減ねぇ。余裕綽々って感じだけど。
…流石にムカつくなぁ。
「何を勘違いされているか知りませんが、俺は貴方が腹ごなし程度の相手にすらならなそうで呆れていただけですが?」
「なっ!?」
相手は馬鹿にされたのが分かって明らかに怒っている。最初に馬鹿にしてきたのは自分なのにね。
「お前らそろそろ始めろよ~」
長く話し過ぎていて痺れを切らした団長さんに怒られた。待ちきれなくなってきたようだ。
「それでは始めましょうか。」
「はっ!・・・さっきの言葉、撤回させてやるよ!」
声をかけて剣を構えたら、荒い言葉と共に相手も剣を構えた。さっきまで一応敬語だったのだが、もう崩れている。
今のが素なんだろうが、騎士としてもうちょっと猫被っていた方がいいと思うんだけどなぁ。
そんな余計なことを考えていたら相手が剣を振った。
キーン
「チッ!」
いや、舌打ちされても今ぐらいなら余裕で受け止められるから。そんなに油断していたように見えたかな?
「はぁ、はぁ・・・。」
暫くして相手は疲れ果ててしまっていた。対して私は全く疲れていないです。
元の世界でもこっちでも毎日走り込んでいた成果かな?
ギッとこっちを睨んできたが域が上がっていて余裕の無さがもろに分かる。
「この!なめやがって!!」
そういうと相手はジャンプしてそのまま宙に浮いた。
…浮いた?
あぁそうだ。竜は飛べるんだってティアラさんが言ってた…って模擬試合なのに本気になり過ぎじゃない?相手を気にしつつ団長さんを見ると呆れた目を相手の方に向けていた。
やっぱり本気になり過ぎてるんだね。空中からの攻撃は避けづらいし、何より魔法が届かない範囲にすぐ逃げられるので飛べる方が得になる。勿論場合に寄りけりだが、今は確実に当てはまるだろう。
「終わりだ!」
空中から急降下、かなり速くて目で追うのはキツイ。当たる!と思っているのか勝ち誇った顔をしているのが分かった。
ズガッ
剣が地面に刺さり、相手は唖然とこちらを見上げている。
そう。”見上げている”のだ。
「どういうことだ!」
「どういうことだ・・・って、あの、俺ティクレスの騎士であると同時にアリーナ様の弟子でもあるんですが・・・。」
「ティクレス王の弟子!?」
周りも驚いている人が多いがこの情報、公開されているはずなんだけど・・・
「団長さん、俺がアリーナ様の弟子って皆さんに伝えてあるはずですよね?」
「・・・あぁ。騎士殿が来る前に伝えたんだがな。どうして知らん奴がいるんだろうな。」
団長さん殺気出てますよ~皆ビクビクしちゃってますよ~
騎士団員さん達、ちゃんと聞いてなかったんだねぇ。さてと、そろそろ終わりにしますか。
相手は地面に刺さった剣を抜こうとしたが遅い。抜ききる前に相手の首筋に剣を立てた。
「お疲れさん。さすがとしかいいようがない戦いだった。」
「ありがとうございます。」
訓練が終わりお菓子を作るため団長さんと厨房に向かっていた。
「んでさ、最後の種明かししてくんねぇかな?」
団長さんの言葉の意味は最後、私が飛んだことについてだ。
この世界で魔法を使うには二通りの方法がある。一つは呪文を唱え魔法を使うこと、もう一つは何かを媒介にして魔法を使うこと。今回使ったのは後者だ。
「靴を媒介として飛べるようにしたんですよ。」
「いつから?」
「いつから・・・そう言われると困るんですが、やり方を教えてもらってからずっとです。」
「何だと!?」
少し前を歩いていた団長さんが突然振り向いた。顔は信じられないと訴えている。
確かにこちらの常識では信じられないだろう。魔法は使うと少しずつ精神力が削られていく。媒介にしてずっと魔法を込めていればその間精神力が削られるといったように使えば使うほど精神力が削れて疲れる。使い過ぎれば倒れてしまうのだが、透明色の騎士であるからか私は全くといっていいほど疲れてない。アリーナ様からは『透明色の騎士だからかしら?それとも元々図太いの?』と失礼なことを言われた。
「透明色の騎士だからなのか?」
「さあ?個人差もあるかもしれませんが何とも言えません。」
「冷めてるな~」
苦笑いされたけど、冷めている反応をしたというより今はその話題に興味がないという方が正しいと思う。だって早くお菓子作りたいんだもん。




