↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
22/24

異世界編:英雄になった異世界の私と再生する男5

# エピソード22 娘から父へのそれぞれの愛の形


風を切り、俺は馬を走らせた。


向かう先は男爵家の屋敷……。近づくと、門前に執事のオブサンがいた。


「今は眠っている。この気付け薬を使えば目を覚ます……」


俺は、御嬢様が包まれた頭陀袋を肩に担ぎ、執事に案内されて屋敷の中に入った。


「改めて、御礼申し上げます。それでは客人……この後は私が責任を果たします。貴方は見つかる前に、この場を離れて下さい……」


執事の言葉に頷き、俺は裏門から屋敷を立ち去った。


……この後は父娘の問題だ。何とかうまくいってもらいたいものだ……。


少し歩いたところで、何故か足が止まった。


何だ……何か引っ掛かる。


俺がユリカを嫁がせたとして、あそこまでのことになるか……。


いや、最初は相手を試すようなことを言ったり、拗ねたりすることもあるだろう……。


だけどな!


俺は男爵家の屋敷に戻り、障壁を乗り越えて中に侵入した。


「きゃー!」


「黙れ!」


人の声が聞こえた……!


俺は裏口の扉を蹴破り、中に入った。声が聞こえた二階へ上がろうとすると、階段の中腹にある踊り場で倒れている執事を見つけた。


「オイ! しっかりしろ!」


執事を見ると、腹から血が溢れている。傷は奥深くまで抉られていた。まるで爆発に巻き込まれたようだ……。


「す、すみません……! せ、責任を全うすること、叶わず……この有様……」


「もう喋るな。傷に障る」


助からねぇな、この傷……。


俺が執事を抱え起こすと、執事は俺の手を掴んできた。


「き、客人……私は貴方に黙っていたことが……! 旦那様は奥様を亡くされた数日後に、御嬢様の寝込みを襲いました……。私がそれを知ったのは、御嬢様の傷付き、泣き叫ぶ言葉を聞いてからです。それを知ってなお、私は懺悔し……旦那様が改心してくださると信じていました……。申し訳ない……客人! 御嬢様をどうか! ガハッ! たす……けて……」


「オイ! しっかりしろ!」


執事の手が離れた……。


息を引き取った……。


何だよ……これ。


俺は執事を寝かせ、その目を閉じた。


「クソ! 親父が!」


俺は立ち上がり、再び聞こえた御嬢さんの叫び声の元へ向かった。


***


ライルさんの雄叫びが響く中、私達はこれからの行動を決めた。


「行きましょう、男爵家の屋敷に!」


サイラス副団長がライルさんに呼び掛けた。


「私達も行きます!」


ルート団長も、すぐさま行動に移した。


それぞれ強化魔法を使い、家屋を飛び越え、一目散に目的の屋敷へと向かった。


屋敷の入口に最初に到着したライルさんが、雷魔法で扉を破壊した!


“ズーン!!”


早速中に入ると、階段の中腹にある踊り場に、燕尾服の男が腹を裂かれて絶命していた!


「イヤーッ!」


メリーさんの声だ!


声が聞こえた三階の奥へ向かうと、部屋の前にあの時の大男がいた!


「貴様ー! 死ね!」


しかし、その男は爆炎に吹き飛ばされ、後ろの窓から落ちていった……!


爆炎が飛び出した部屋へ向かうと、デュエル男爵と、上半身が裸になったメリーさんがいた。


「どうなさいました、義父様!? メリー!」


ライルさんが驚愕した……。


「貴様か! この盗人め!」


デュエル男爵が唾を吐きながら、狂人のように叫んだ!


「貴様のせいで! 我が娘メリーを儂から引き裂いて! 儂がどんな日々を味わったか!」


後ろから首を絞められた奥様が、苦しそうに泣いていた。


「ライル……!」


「一体、何故!?」


ライルさんが問い質す。


「この盗人が! 何故だと! この大事なメリーは! 儂にとって代え難い存在だ! そして! 身も心も! 儂の物だ!」


ライルさんの奥様は涙を流している。その上半身を、後ろから舐め回すようにデュエル男爵が触った!


「やめて! 見ないで……ライル……」


「な、何を言っている!」


愕然としたライルさんから言葉が漏れる。


「だから! 盗人だと言っている! 貴様が誑かす以前から、私達は愛し合っていた! そう、身も心もだ!」


「や、やめて!」


流石に辛抱できない!


私達が身を乗り出そうとした、その瞬間!


「動くな!」


私達の目前に、デュエル男爵の手から爆炎魔法が放たれた!


「動くと我が娘メリーもあの世に送る。勿論、儂諸共にな……!」


狂気を宿した笑みを浮かべ、我々を見渡した。


暫くの沈黙の間に……。


「そうか、可哀想に! そんな目に……何!? そのような! 許せん、出来るとも! 儂の覚悟と愛を知らぬから、そんなことを!」


デュエル男爵が一人で喋り出した……。


「煩い! 煩い! やってやるぞ! 儂はやってやる!」


チャンスと思い動こうとすると、直ぐに視線をこちらに向けた。


隙がない……。


「メリー、儂と一緒に行こう……。そして一つとなろう……」


デュエル男爵の手から爆炎魔法が行使される前兆が見えた。まるでスローモーションのように……。


その瞬間!


“ガシャーン!”


デュエル男爵の後ろにある窓から、先ほど爆炎魔法で外に吹き飛ばされた大男が、窓を蹴破って中に入ってきた!


そして、すぐさまデュエル男爵に組み付いた。


「オイ! 親父っていうのはな! 娘の一番の幸せを願うもんだ!」


「は、離せ! ギャーッ!」


“バキッ!”


デュエル男爵の右手を、あらぬ方向に曲げて折った!


「わ、儂はメリーと共に! 離せ!」


デュエル男爵の首と身体を、大男が背中から羽交い締めにする。


私達は急いでメリーさんをその場から引き離し、ライルさんの元へ連れて行った。


「ライル!」


「メリー!」


二人は抱き合う……。


私はメリーさんに毛布を掛けた。


「あなた、ごめんなさい……今まで黙っていて。私、怖くて! 苦しくて……!」


メリーさんが泣きながら謝罪すると、ライルさんは何も言わず、メリーさんを抱き締めた。


「クソ! 儂のメリーが! 離せ!」


デュエル男爵が暴れているが、びくともしない。


「貴方は、あの時の……方ですよね!」


私が問い掛けた言葉に、大男は答えた。


「悪いが……何を言っているのか分からねぇな。それより、このクソ親父を引き取ってくれねぇか。こいつは既に人を殺めてやがる。下の階段にいた執事を殺ったのは間違いねぇ……」


大男は、ふと悲しい顔をした。


その時、


「こうなれば、儂は! 儂は!」


デュエル男爵の身体から炎が立ち込めた!


「諸共に死ね!」


多分、自身に爆炎魔法を行使して爆発するつもりだ!


「オイ! 何も出来なかったこのクソ親父と一緒に飛ぼうぜ!」


大男はデュエル男爵を抱え、窓から外へ飛び出した!


すると、空中で爆発音がした。


“ズドーン!!”


私達は衝撃音が収まった後、窓の下を見た。


しかし、そこには跡形もなく消え去った二人の姿があった。


あの人は……また助けてくれた……。


その後、街の警備隊を呼び、事の顛末を報告することになった。


***


俺はあの爆発に巻き込まれ、屋敷の外に吹き飛ばされた。


頭部から再生し、裸のまま近くの家に干してあった毛布を盗み、それを被って自身の宿へと向かった。


警備隊が屋敷に殺到しているおかげで、何とか見つからずに宿に着いた。


捕まったら、ただの性犯罪者扱いだ……堪んねえな。


宿に暫く身を隠したが、次の日になっても俺を探す気配はなかった……。


流石に情報を聞ければと思い、顔が分かり辛い兜を被り、マントを羽織った冒険者風の格好で酒場に向かった。


その奥に向かうと、例の婆さんがいた。


俺は婆さんの前に座ると……。


「御前さん、生きてたかい……。生命の数は、まだ使い切らなかったようだね……」


水晶を眺めながら話しかけてきた。


この婆さん、何処まで分かって言っているのか、見当もつかねぇ……。


「あと、例の執事から預かっているよ」


膨らんだ袋を渡してくれた……。


中を見て、金貨が入っていることが分かった。


「改めて先に用意していたのか……」


「あの執事からは、済まなかったと伝えてほしいとのことだよ……」


そうか……残念だったな……。


俺はその場を去り、宿に戻った。


明日には出発して、オデッサ城塞都市に戻る。


***


私は、ルート団長と二人で隊舎の外の芝生に腰掛けていた。


「あれからライルさん、どうなりますかね……」


私はルート団長に呟いた。


「私は、多分乗り越えると思っているわ……」


ルート団長は少し間を置いてから、続けた。


「それより、あの大男。以前、リザベット団員から助けてくれた人物と同一人物なの? そんなことがあり得るの?」


ルート団長の問いに、


「御免なさい……自信はありません。動転していて、記憶が曖昧なのかもしれません……でも、何故か知っていると感じて……」


私にもよく分からない……。


「まぁ……良いわ! でも、父娘の愛情は人それぞれだけど……私達の父親は、純粋に私達を愛してくれたわ……そうでしょう?」


「ハイ! 間違いありません!」


心からそう思う……。


会いたい、御父様……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。