異世界編:英雄になった異世界の私と再生する男3
#エピソード20 父娘の葛藤
翌日の朝、昨晩また一緒に飲んだ情報屋と一階の酒場で会う予定だ。時間前に準備を整えていた。「良し行くか」二階の宿から階段を降りた、すると何時もの席に情報屋が寝ていた。周りには人は居ない、まだ店は開いていない。「オイ」俺は寝てる情報屋を起こした。「はっ!…」目覚めた情報屋が辛そうに「旦那…、まだ早すぎません?」俺は前の席に座り荷物をテーブルに置いた。「すまねぇな、今日これから出発する事を伝えに来ただけだ、まぁ昨日しこたま酒を飲んだんだ、この後は自分のベッドで寝たほうが良い。水飲めよ」「はぁー、相変らずタフですね。気を付けて下だせぇよ、向こうの街に着いたら占い師のナナイを訪ねて下だせぇ。そしたらあっしの名前を…嫌、札渡して下だせぇ酒場に行けば必ず会えます…、ではご武運を」「ああ…、ちょっくら行ってくるわ…」俺は荷物を纏めて店を出た。
私はお昼をルート団長とサイラス副団長と共に隊舎に近い食堂で食事を取っていた。私は鶏肉と根菜を卵でまいた、前世でいうオムレツに舌鼓をした。私はオムライスが大好きだ、前世では母がよく作って貰っていた。だが、この土地ではお米がない…、食べたい…!だからパンと共にオムレツを食す…。「先程、皆様と共に、ライル殿の御自宅にて、お話しを聞きにお伺いして頂き。友人の一人として、御礼申し上げます」サイラス副団長が立ち上がり頭を下げた。「取り敢えず、食事を取ろう。折角の料理だ冷めない内にな」気を取り直したサイラス副団長が席に座り、「では…」と食事を再開した。「しかし難儀な物だな、話し合う機会も無いのは…」私達がライルさんの屋敷で出会ったのは、長髪の似合う素敵な人だったメリーさんとライルさんから奥様を紹介して貰った。
私も思う、ライルさんと奥様は凄く辛そうにしてたな…。「はい、しかし団長の進言にて、仲介を挟める事でという方で解決出来れば有難いのですが…」ルート団長の勧めでシンゴール近衛騎士団長に仲介をお願いする事になったが、生真面目なライルさんがシンゴール団長に御迷惑を掛ける事に戸惑いを隠せない様だった。「後、気になったのが…、奥様が嫁ぐ事が決まってから、御父上が独り言を良く呟く様になった事。寂しさ故に心労が祟ったのだろうか…」奥様が言うには、その後に家の執事からかなり御父上が心傷していて、夜中に叫ぶ事があるのだとの知らせが手紙にあったそうだ。私も前世で夜中に突然、泣きながら叫んだ事があった、あの声が煩く辛かった。「しかし、会ってくれ無ければ話しにもなりません…。分かり合えれば、その御父上の状態も回復するのでは…」サイラス副団長がそう呟く。「私は近々にシンゴール団長に、ライル殿と仲介の申し出に行くつもりだ」ルート団長は食事を済まして、水を飲む。「宜しくお願い致します」サイラス副団長が座ったまま頭を下げた。それから皆、食事を済ませ、隊舎に向かった。この後会議がある、リカメイさんが情報を持って来た様だ。
隊舎の会議室に、私とルート団長、サイラス副団長、カーラさん、そしてリカメイさんが各席に座る。「先ず情報収集の報告を頼むリカメイ」ルート団長が促した。「はい、オデッサ城塞都市にて情報収集の中に例のリザベット団員に付いてです。彼女の様子が変化していた様で、信仰心が深い彼女は良く教会に祈りを捧げるのが、日課の様です。教会の神父に良く相談をしていた様で」一旦間を置くと、「神の声が、毎日聴こえると…」神の声…?。皆ざわめいた。「内容は貴女は神の使徒だとか、この世界に祝福を与える者、皆に神からの感謝を捧げよと」私は戦慄した…。『私の……か、感謝……!』最後にリザベットさんの狂った様な笑顔が目に蘇る。「後、別件ですが。近年声が頭の中から聴こえるとか、見えない筈のものが見えたりという人々が増えてます」リカメイさんの報告を聞いていたカーラさんが「それって、誰かの幻術では…?」「いえ、魔術の痕跡は無く、その症状を起こす人々は住む場所もバラバラであり、種族も年齢も様々です。普通に考えて、発症した日も場所も違いますし、魔法耐性のある無しも関係無い様ですし、そんな大量に幻術を掛ける者達がいるとは思いません」確かに。というかそれ…。「いいですか…リカメイさん」私は質問した。「その人達の中には自死する方はいませんか?」リカメイさんが少し驚いた表情をして「はい、その通りです…。調査対象の約四割の人達が自死に至るか、若しくは、未遂に終わるかとの報告があります。何故それを…?」私は確信した、躁鬱病か統合失調症等の精神疾患だ。「後、異常な行動を起こしたり。自室から出なくなったり、気分が落ち込んだり、急に高揚したりの症状は…?」「はい、そちらの報告もあります…、ユリカ様何かご存知で?」リカメイさんが疑問を私に向けた。「御免なさい、私も人伝えに聞いただけで…」嘘をついた…。前世の私が知る症状だ、嫌、自分の掛かった症状だ…!「で、リザベット団員も、似た症状だったのか?」ルート団長が質問した。「少し違いますが、急に泣いたり情緒不安定な時があると報告があり、上腕部に刃で切った複数の後があったとの報告もありました」リストカットだ…。「そう言えば…、ライル殿の義理の御父上がその様な症状になっていると…」サイラス副団長が呟く。「私からの報告は以上です」最後にルート団長が、「報告ご苦労だった、引き続き調査を頼む」皆、会議室を退室した、私とルート団長以外は。「どうしたの、何か引っ掛かる事があるの?」ルート団長から声が掛かる。「リザベットさんはあの時、笑ってました…。まるで何かから解放された様に…、そして『私の……か、感謝……!』多分感謝を捧げるという言葉を最後に…」「さっきの話しにあった、声ね…」私は覚悟して!「私も聴こえました…、私を罵る声と人々が苦しむ声が…」ルート団長が立ち上がり。「何時から!?、今は?」「今は大丈夫です。聴こえたのは、以前、街が襲撃を受け、街の治安部隊が壊滅した時です…」私はルート団長が座るのを待った。「本当に、今は大丈夫だから…」「そう、わかったわ…。それと、サイ副団長が、さっき言った…」そうだ…もしかしたらライルさんの義理の御父上がそうなら。「はい、早い方が…」ルート団長は決意した趣きで頷いた。
日が暮れ掛かった頃に、俺はマスラ王国に着いた。乗合馬車を降りて検問を無事通り、街の酒場に入った。店内は中々盛況だった、城塞都市の酒場に比べるとかなり明るい。先ずカウンターに座ると配膳と注文を受けてる女性が、此方に来た。「お兄さん、初めて?見ない顔ね、処で注文は?」矢継早に聞いてきた。「ああ…、先ずエールと肉だ、此処で美味い肉料理を頼む」「わかったわ、此処で美味い肉料理は鶏肉を焼いたのが美味しいわ」「なら、頼む」俺は言われた料金に少し上乗せして渡した。「後、此処に占い師が居ると聞いたが知らないか?」俺が訪ねると、「あっ!ナナイさんね、確か一番向う側の奥にあるテーブルに居るわ。何?占いして欲しいの?」「嫌、旅の行き先を占って貰おうと思ってな」「わかったわ、取り敢えず注文の物少し待ってて」愛想よく笑うと厨房に行った、元気な女だな…。俺は周りを見渡した…。客層は旅人か冒険者、時折騎士も見える。あの時の王国騎士団はいねぇな、奴等は俺を見てねぇからな会ったとしても問題無いだろう。「お待ち、エールと料理が出来るまでの摘みだよ!」おっ、気が利くね。いい奥様になるな。「助かる、またエールを頼むから声掛ける」元気よく笑って、次の客に注文を聞きに行った。エール2杯と鶏肉料理を食した後、奥のテーブルに向かった。一人奥にひっそりと婆さんが其処に座っていた。俺は前の席に座り、「お邪魔するぜ」目の前に水晶を置いた婆さんは少しふくよかだ、此方に何の反応もしねぇ。「なぁ、これ見てくれねぇか」俺は情報屋から貰った赤い札を見せた。「そうかい…、坊やの使いか」「例の貴族さんの依頼を受けに来た」「明日、この酒場に来な、このテーブルに案内役を寄越す…」俺が頷ずいて、席を立ち去ろうとすると。「待ちな…、あんた面白い物を持ってるね…」先程の婆さんが水晶を眺めながら、俺を呼び止めた。俺が振り返ると。「お前さんの探し求める者は悪意に囚われておる…、それを救うには、お前さんの数ある生命を全て使い切るしか無い…。会いに来たのに、また別れがか…因果よのう…」婆さんが深く溜息をついた。「はっ!俺の生命か…!、そんな安いモンなら何時でも使い切るぜ!、元よりそのつもりよ!」俺は此処から離れ宿を探しに行った。




