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異世界編:王国騎士団員になった異世界の私5

# エピソード12 王国騎士団員の魔法と幕開けの予感


昨日、ショタ眼鏡が起こした事件によって、魔術行使の修練は中断された。


「昨日は不本意ながら中断された魔術行使の修練を、本日は再開する」


私達は、昨日と同じ修練場に集まっていた。


ショタ眼鏡が眠そうにしている。昨日は教官に遅くまで説教されたのだろう……。自業自得というものだ。


「また各隊列から、昨日の続きと行こう。それでは、前に!」


次に出てきたのは、あの剣技の対戦で、最後の砦になってもらった……リカメイさんだ。


小柄なため、威圧感こそないものの、何か鋭いものを感じる……。不思議な人だ。


「宜しくお願い致します」


第一隊から出てきたのは、サイラスさんに剣技で勝ったロマリックさんだった。


「それでは、第一隊から始め!」


ロマリックさんが詠唱を始めた。


「ファイヤーアロー!」


炎の矢が勢いよく的に向かって飛んでいく……。


“ズドーン!”


岩の的が破壊された!


凄い! 万能すぎる……。


「流石……貴族名家の御子息」


ルート嬢が呟いた。


えっ!? 貴族なの、ロマリックさん? しかも名家!?


完璧さんじゃない。前世だったら、こっそり写メを撮っていたかもしれない。


「次、始め!」


リカメイさんが右手をかざした瞬間……。


的に短剣が突き刺さった!?


えっ? 詠唱していないよね!?


「あれが、リカメイ嬢が諜報団員から受け継いだ投影魔法の技……。隠匿術との二重詠唱よ。しかも、詠唱していないように見せる技術まである。暗殺魔術とも呼ばれるわ」


ルート嬢が神妙な顔つきで説明した。


こ……怖い……。何か、気づいた時にはもう死んでいる魔術!?


嫌……異世界怖い。ルート嬢、夜のトイレについてきて……。


「お見事です、リカメイ御嬢様」


ロマリックさんが、リカメイさんに称賛の言葉を贈った。


「貴方には、通じない魔術ですよ……」


リカメイさんは頭を下げると、ロマリックさんと共に自分達の隊列へ戻っていった。


「それでは、次!」


教官の指示で、第一隊から一人の女性が出てきた。


ショタ君そっくりな、本物のお姉様だ!


お姉様はショタ眼鏡ではない!


「お姉様、宜しくお願い致します」


ショタ君ことオロビオ君が、姉に声をかける。


その声を聞いたショタ眼鏡ことシュウレイは、膝と手を地面につき、項垂れた……。


これが現実だよ……ショタ眼鏡……。


しかし、背格好も顔立ちも似ているため、一人ずつ見たら絶対に見分けがつかないだろう。


こちらからは、座学の時にルート嬢に挨拶の仕方を教わっていた、あの二人組が出てきた。


「失礼します、ルート御嬢様。私達が出ます」


「あの双子が嫌いなんです……」


「いつも澄まして!」


「偉そうで!」


二人は交互に不満を口にする。


そして、最後には二人揃って叫んだ。


「貴族だからって!」


「貴女達、落ち着きなさい。まずは誰か一人にしなさい、ジョイ、リアン」


ルート嬢も困り果てている。


「私が出ます!」


リアンと呼ばれた男性が、我先にと前へ向かった。


残った女性達は黙って頷き、彼を見送った。


「あら、誰かと思えば、平民の馬鹿」


ショタ姉ことリザさんは、まるでゴミでも見るような態度だった……。


「貴族だからか……。選民主義の差別主義者、リザ殿!」


リアンさんは怒り心頭だ。


確かに酷いよ、ショタ姉……。


「もういいかね! 君達は王国騎士団員の見習いだ。主義主張は外でやりなさい!」


教官の言葉に、二人とも頭を下げた。


流石は教官! 王国騎士の鑑!


「では、第一隊から始め!」


ショタ姉が詠唱を始めた。


「アースニードル!」


土属性魔法によって生み出された岩の槍が、数本、的に向かって放たれる!


“ズドッドッドッ!”


岩壁の的が、削り潰されるように破壊された。


「次!」


リアンさんも詠唱を始めた。


「アースニードル!」


先程のショタ姉が繰り出したものと同じ岩の槍が、岩壁の的へと放たれる!


“ズドッドッドッ!”


全く同じ結果だ……!?


「この、猿真似平民!」


ショタ姉が罵倒した。


「貴女達程度の技なら、同じことができますよ」


えっ! そうなの?


「リアンの得意魔術というわけでもないわ。でも、四大魔術なら、相手の魔術をほぼ模倣できるのよ、彼は」


ルート嬢が説明してくれた。


ルート嬢、それって何か凄くない!?


その後、二人は互いに礼をして、それぞれの隊列へ戻った。


「お疲れ様、リアン」


「してやったかな」


二人は互いを労っている。


仲良さそうですよね……。


「では、次!」


次に第一隊から出てきたのは、あの時、カーラさんとの組手で被害に遭った長身の男性だった……。


生きてて、良かった。


「宜しくお願い致します」


何だか悲壮な顔をしている……。まだ傷が癒えていないのかな。精神的に。


「彼が出てきたなら、私が応えないと……」


カーラさんが動き出そうとした、その時。


「待ってください! 是非とも私に行かせてください!」


サイラスさんが動き出した!


昨日は生きる屍のようになっていたのに……復活した!


「あら、もしかしたら……嫉妬……♪」


「ヒッ!」


サイラスさんは私の後ろに隠れ、震え始めた。


また私を盾にした?


このままアンデッドになってしまうかと思ったが……!


「同じ被害者同士、彼と恐怖に打ち克ちたいのです! そして私は、その恐怖を乗り越え、栄光ある師匠の弟子として蘇るのです!」


サイラスさんが、何だか変なことを格好良く言っている……。


そのまま、前へと走り出した!


「私はサイラスと申します。貴方と同じ恐怖を味わった同志として、一緒に乗り越えたい!」


サイラスさんが礼をすると、長身の男性は彼を見つめた。


「貴方は……そうですか。私はライルと申します。以後、お見知りおきを」


ライルさんも礼を返した。


二人が顔を上げると、ライルさんの目から一筋の涙が溢れた。


辛かったんだね……。


「申し訳ないが、そろそろ始めてもらえるだろうか。時間がなくなる」


教官も呆れたようだ。


「はい、失礼致しました。お願いします!」


ライルさんは意を決したようだった。


「それでは、始め!」


ライルさんが詠唱を始める。


「サンダーアロー!」


雷の矢が的へと向かう!


“ドーン!”


岩壁の的が弾け飛んだ!?


と言うか、雷属性! 上位魔法じゃん!


「我が同志よ、そこまでとは……」


サイラスさんが唖然としている。


「では、次! 始め!」


教官の号令がかかった。


サイラスさんが詠唱を始める。


「済まないが、これが私の魔法です! ウインドカッター!」


ルート嬢が見せてくれた時よりも、少し小さな風の刃が放たれた。


“スパーン!”


“ズーン!”


的が真っ二つになった。


「これが私の精一杯です……」


「いえ、とても清い魔法でした……」


二人はがっちりと握手を交わした。


「それでは、両者、下がるように……」


互いに礼をして、二人は下がった。


教官は何だか疲れている。


「師匠、私は帰ってきました……」


サイラスさんは、何か清々しい顔をしている。


……師匠は私では無く、私の父なんだけどね。


「素敵だったわ、サイラスちゃん♪」


カーラさんがウインクする。


サイラスさんは、また私を盾にした。


「では、次!」


教官の指示で、次の人物が前に出てきた。


「やっと俺の番だな!」


赤い髪がひときわ目立つヤンキーこと、ドンディさんだ!


「元気な子ね。私が行くわ」


カーラさんが前に出た。


「それでは、用意はいいかな?」


教官の呼びかけに、ドンディさんは答えた。


「いつでも、宜しくっす!」


ヤンキーだ! 不良だ!


「始め!」


ドンディさんが詠唱を始めた。


「行くぜ! フレイムアロー!」


炎がひときわ激しく揺らめく、槍のような炎の矢が的に向かう!


“ズドーン!”


爆発した!


ドンディさんは胸を張った。


やはり赤い髪は伊達ではなかった!


火属性の上位魔法でした。


やるな、ヤンキー! これでタバコに火をつけたら、大火災になりそうだ。


「やるわね。私も頑張らなくっちゃ♪」


カーラさんは楽しそうに笑った。


「それでは、次! 始め!」


カーラさんが詠唱を始めた直後!


全身の筋肉が膨れ上がり、上着が弾け飛んだ!?


「ハァーッ!」


そして、カーラさんが拳を突き出す!


すると、轟音と共に衝撃波が的へと向かって放たれた!


“ドゴーン!”


地響きが、こちらまで伝わってくる……。


皆が唖然としている。もちろん、ヤンキーもだ……。


だが、私だけは心が躍り、感動していた。


私もやりたい、これ!


「あら、教官、ごめんなさい。私、強化魔法しかできないのよ♪」


それを見た教官は、何とも言えない表情で答えた。


「認めよう……魔法の一環として。さあ、礼をして、お互い下がるように……」


教官は、何とも言えない表情のまま先を促した。


二人は互いに礼をして、下がっていった。


「それでは、次!」


向こうのロイと、こちらのジョイは攻撃魔法が使えないため、辞退した。


最後に残ったのは、私と、もう一人の女性だった。


レイシーさんと名乗る彼女は、スーツが似合いそうなキャリアウーマン風の人だ。


「宜しくお願い致します!」


私はすかさず挨拶した。


「貴女が例の……。宜しくお願い致します」


見事な礼だ……。


「では、宜しいかな?」


教官の呼びかけに、レイシーさんは答えた。


「いつでも可能です」


教官が頷く。


すぐさま、レイシーさんが詠唱を始めた。


「ライトアロー……」


レイシーさんが左手を的にかざすと、一筋の光の矢が放たれた……。


“キュイーン! ズーン!”


的が光り輝き、そのまま蒸発した!?


初めて見ました、上位魔法の光属性!


感動しました……。多分、レーザーだって撃てる!


「それでは、次!」


私は唖然としていた自分を立て直し、詠唱なしで魔術を行使した。


右手を的にかざすと、炎の玉を的に向かって放った。


“ドーン!”


岩壁の的が爆発した!


レイシーさんは少し驚いた顔をしたが、すぐにこちらを向いた。


「噂は本当ね、英雄(ヒーロー)さん」


何か、ありがとうございます……。


口には出せなかった。


私達は互いに礼をして、下がった。


「よし、それでは再び、他の修練に戻る!」


私達はこの後、いつもの日課をこなしていった。


そして、見習い期間が過ぎ、私達はようやく一人の騎士として認められた。


だが、この後、私達の前に一つの分岐点となる事件が起きる。


私達の王国騎士団を揺るがす事件が……。


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