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なぜか悪役令嬢の私が守られている!?【第3部完結】  作者: しのギドラ
2部「ヒロインが婚約破棄されて詰みそう」
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8話 突然判明したヒロインの婚約話

 それから数日、私たちの放課後特訓は日課となった。


 最初はぎこちなかったリリアとの距離も、一緒に汗を流すうちにすっかり縮まった。

 今では特訓の合間に、他愛のない話で笑い合えるほどの仲になっていた。


「ジゼル様、見ていてください!」


 リリアが指を弾くと、放たれた光の弾丸が、的として置いた石を正確に射抜いた。

 魔力に歪みのない、美しい光の軌跡だ。

 以前のよどんでいた魔力回路が嘘のように、彼女の魔力コントロールは日に日に精度を増している。


「素晴らしいわ、リリアさん! とても美しい弾道よ!」


「はいっ! ジゼル様の指導を意識したら、狙いがブレなくなりました!」


「ちょっと怖いくらいの成長性だね。これなら実技も満点を取れるんじゃない?」


 木陰で見守っていたフェイランが、拍手をしながら褒め称える。

 彼から見ても、リリアの成長速度は目を見張るものがあるらしい。


「ありがとうございます、ジゼル様、フェイラン様! 私、もっと練習して、光魔法を使いこなせるようになります!」


 額の汗を手の甲でぬぐいながら、リリアは嬉しそうに微笑んだ。

 そして、ふと自らの手元を見つめると、少しだけ不安そうな表情でつぶやいた。


「……これなら、王太子様も納得してくださるでしょうか」


「……え、王太子? フェイランのこと?」


「あ、違います! フェイラン様のことではありません!」


 首をかしげる私に、リリアは慌てて両手を振った。


「私がお話ししたのは……私たちの国、この王国の王太子様のことです」


「この国の……王太子……? …………あ!」


 この国の王太子といえば、この乙女ゲームにおけるメイン攻略対象。


(第一王子であるルドルフ殿下のことだ……!)


 才色兼備で、周囲に冷たく当たる完璧主義者。

 ゲームでは学園で試練を乗り越える同学年のリリアに惹かれ、共に災厄の王へ立ち向かうパートナーとなる存在のはずだ。


「ルドルフ殿下が……リリアさん、仲が良いの?」


 リリアは少しだけ気まずそうに視線を地面に落とし、重苦しく小さな息を吐いた。


「……実は、私……ルドルフ殿下と、婚約が約束されているんです」


「――え!?」


 思わぬ角度から飛んできた衝撃の告白に、私は飛び上がりそうになった。


(いや、不自然なことじゃないわ。だって彼はメイン攻略対象だもの。ゲームの試練がなくたって、二人が惹かれ合うのは当然の運命よね)


 大好きなヒロインが攻略対象と結ばれて幸せになるのなら、これ以上に喜ばしいことはない。

 私は胸をいっぱいにしながら、祝福の言葉を贈ろうとした。


「ルドルフ殿下は私のこと、いつも出来損ないとおっしゃって……。まともに目も合わせてくれないのです……」


「………………は!?」


 喉から吐き出されたのは、驚愕の声だった。


「ど、どういうこと!? お互い好き合っての相思相愛な婚約じゃないの!?」


「光属性の魔力を王家に引き入れるため、彼女とルドルフ殿下は政略で無理やり婚約させられたんだよ。ジゼルは知らなかったのだろうけれど、これは学園内じゃ公然の秘密さ」


「な、何よそれ……!?」


 私の前で、リリアは消え入りそうな顔で寂しげにうつむいている。

 これも私が勝手に動いた結果かと思うと、罪悪感で頭がクラクラしてくる。


(でも! だからって、こんなに可愛くて健気な彼女を蔑ろにするなんて絶対に許せない……!)


 怒りに胸を燃やし、震えるリリアの両肩をガシッと掴んだ。


「ねえ、リリアさん。あなたはルドルフ殿下のこと好きなの?」


「え……?」


「もちろん、男性としてね! ……ううん、もう今は人間として好きかどうかで答えて!」


「そ、それは……」


 リリアは声を詰まらせながら言いよどみ、私から視線をそらす。

 その態度だけで答えは十二分だった。


「今日の特訓はここまでよ。ルドルフ殿下は、もう王宮へお帰りになったかしら?」


「いや、ルドルフ殿下は生徒会の執務でいつも遅くまで残っているから、まだ生徒会室にいると思うけれど……って、ジゼル、何する気なの」


「決まってるでしょ……」


 私は胸元で、拳を骨が浮き上がるほど硬く握りしめた。


「ルドルフ殿下に直談判しに行くのよ!」

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