表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/27

4話 考えなしに突っ走った結果、ヒロイン最弱説

 それは、ゲームの最終章である最高学年を迎える直前のことだった。


(嘘でしょ……!? なんでヒロインの能力が初期値近くなの!?)


 極秘裏に入手した生徒の能力表を見て、顔面を蒼白にしていた。


「もしかして、私が守りすぎたせいで成長していない……?」


 原作のゲームでは、ヒロインは学園生活の中で様々な試練を乗り越え、実戦経験を積むことで、光属性を成長させる。


 しかし私は彼女を守ろうと意気込むあまり。


 学園周辺の魔物を狩り尽くし、彼女に降りかかるトラブルの芽を知らず知らずのうちに、全部摘み取ってしまっていた。


「闇属性の『災厄の王』を倒せるのは、世界で唯一の光属性を持つヒロインだけなのに……!」


 このままゲームのラストバトルを迎えたらどうなるのか、その結果は明白だ。


「ヒロインは災厄の王に敗北して……死んじゃう……」


 死の呪いどころか、世界そのものが滅んでしまう可能性だってある。


「どうしよう……どうしたらいいの……!?」


 自身が招いた最悪の結果に、涙があふれそうになる。

 ヒロインを救うはずが、自分のせいで彼女を、そして世界を行き詰まらせてしまった。


「こうなったら……。もう、私一人の力じゃ解決できない……!」


 追い詰められた私は、学園の校舎裏へ彼を呼び出した。

 夜に寮を抜け出し、向かった先にいたのは、闇に溶けるように佇むフェイランだった。


「どうしたんだいジゼル、こんな夜更けに……って、君、泣いているのか!?」


 フェイランの余裕めいた笑みが消え、焦ったように私の肩を抱き寄せる。

 服越しでも分かるほど熱い彼の体温が、私の心を少しだけ落ち着かせてくれた。


「フェイラン……。信じられないかも知れないけれど、あなたに聞いてほしいことがあるの……!」

 

 私は嗚咽をこらえながら、すべてを白状した。


 自分が前世の記憶を持っていること。

 ここが乙女ゲームの世界で、ヒロインという少女が悲惨な運命を辿ること。

 彼女を救うために鍛錬したこと。

 けれど、自分が障害を取り除きすぎたせいでヒロインが弱いままなこと。

 このままでは災厄の王に世界が滅ぼされること。


「……全部、全部私のせいなの! 悪役の私が出しゃばったせいで、ヒロインも死んで、世界も滅んじゃうのよ……!」


 不可思議な私の告白を、フェイランは一度もさえぎることなく聞いてくれた。

 涙を手の甲でぬぐう私を見つめながら、彼は納得したように口を開く。


「……なるほどね。君の突拍子もない行動、そして強さを求める意味。俺に保留を言い渡した理由も、すべて合点がいったよ」


 フェイランは夜風にため息を乗せると、私の頬に優しく手を添えた。


「ねえ、ジゼル。そんなヒロインや世界のことなんて、もう気にしなくていいんじゃないかい? 今すぐ俺と一緒に隣国へ逃げよう。俺が君を絶対に守ってみせるからさ」


「駄目よ!」


 私はフェイランの手を振り払うように、夜の帳の中で叫んだ。


「こうなったのは全部私の責任なの! あんな健気なヒロインを見捨てて逃げるなんて、絶対にできるわけないでしょ!」


「……はぁ。君は、どこまでも不器用だね。……そんなところも、どうしようもないくらいに可愛いよ」


 フェイランは諦めたように、私の涙に濡れた顔を慈しむような眼差しを向ける。

 彼は上着の懐から、一振りの短剣を取り出した。

 鞘から抜かれたその刃は、闇夜の中でも淡く、清らかな光を放っている。


「君がそこまで言うなら、協力するよ。……これは光属性の聖なる短剣だ。災厄の王を滅ぼすことができる唯一の武器だろうね」


「聖なる短剣……? そんな凄いものを、なんであなたが持っているの?」


「……念のため、国から持ってきたんだよ。これがあれば、ヒロインがいなくても災厄の王を倒せるだろう?」


「た、確かに……!」


 私が顔を輝かせると、フェイランはなぜか憂いを帯びるように目を伏せた。


「この短剣は君が持つんだ、ジゼル」


 短剣の柄を、私の手に握らせようとしてくる。

 その手はほんの少しだけ、震えているように見えた。


「フェイラン……?」


「これを、俺に突き刺せばいい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ