騎士と戦士、そして姫(11)
その夜。
イオリは優秀な技官ではあったが、同時に問題児である。
ホノカも問題児で、トマスもある意味ではそうなので、あまり目立たないだけで。
「さ、て、と。うちがいない間にこっちで色々あったみたいやからなー。何があったのかしっかり調べとかんとなぁ……?」
格納庫はイオリのホームグラウンドである。その片隅には、所狭しとイオリが設置した機材が並んでいた。
その一角でコンソールを起動して、無数のホロを周囲一面に展開する。
接続先は、警察庁とラボ、それぞれの情報管理サーバー。
「ホノカのやつ、なーんか、うちに隠し事しとるような気がするんよな。特に、ハルキ絡みは違和感バリバリや。ハルキに対するリゼの様子もなんやおかしいし、うちの勘が絶対なんかあるっちゅーとる」
イオリは直感に優れる。特にテクノロジーが絡む案件には滅法強い。自他共にその点は認めていた。本人が直感に絶対の自信を持っているので、こうなってしまったイオリを止めることは難しい。
イオリはBMIと両手を駆使して、凄まじい勢いで情報を操作していく。
解説するまでもないが、一部は不正操作だ。
本来はイオリに開示されない機密情報を、あの手この手の方法で開封していく。
特に、ラボの情報は警備課にも閲覧権限がほとんどない。警備はしていても、研究内容に手をつけることはタブーだった。イオリはその禁忌を破っている。
「ほほーう? ハルキの怪我の具合がいまいちようわからんかったけど、内臓が複数に脊椎までやっとったんか。一ヶ月でようここまで回復しおったな……それ自体が怪しいんやけど。そんなスペックの医療用ナノマシンってあったか?」
それからしばらくして。
イオリの震えた声が、格納庫の隅に小さく反響していた。
「……な、なんや、これ。
九? 九……って……八が最高ちゃうんか……?」
ホロに表示されている情報は、イオリが知っている常識の範疇を超えていた。
「機密指定レベル九のロック……こんなん、ありえるんか?
ロックしたんは———藤原利世。
おいおい……いったい何に巻き込まれとるんや、あの少年……」
イオリはそれ以上の探索を打ち切って、コンソールを閉じた。
寒気がする。準備無しに、決してこの先に踏み込んではならない。
直感が、そう告げていた。
機密指定レベル九。
社会秩序・地球環境への甚大かつ不可逆な影響が見込まれるもの———




