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055 白い狼

 あれから俺は数日間金稼ぎに忙殺される日々を過ごしたわけだが、まあその間は特に何のイベントも無かったので、ざっくりと割愛させて貰うとしよう。

 せいぜい攻略組が砂漠のボスを倒したり俺も挑んでやられたり攻略組に荒野でのことを問い詰められて折檻されたりエレナと付き合いはじめたりしたくらいだ。

 ……うん、せいぜいで済まないのは分かってる。特に最後のやつは詳細を語るべきことだろう。でも仕方が無いじゃん!これ語るのなかなか恥ずかしいんだから!これを語るなんてそんな酷なことは無いでしょう……

 古いネタはさておいて、金も溜まったしエレナに預けてあるから失う心配も無い。だから今日からはまた探索を再開しようと思っている。

 さて、そうなると普通は砂漠の探索をするところだろうが、実は砂漠の方は攻略組によってほとんど攻略されており、はっきり言うとこっちの探索はつまらない。

 ならどこを探索するか?答えは一つ。地下だ。地下はまだほとんど攻略されていない。

 そういうわけで俺は流砂の中へと飛び込み、砂漠の地下へと来ている。まあ数少ない情報によると、出口も見つかってるみたいだから、どうにかなるだろ。



――――――――――――



 そうして時折来る機会兵を倒しながら探索をすること数時間、俺はそこがどこかも分からない場所で機会兵以外の生物(・・)を見つけた。

 それは、全身を白い毛で覆った狼だった。大きさはだいたい大型犬と同じくらいだろうか?見た感じモンスターとは別の、NPCと似たような存在のようだ。

 俺はその狼を素直に美しいと思った。


 「…………」


 狼は俺の方を一瞥すると、何もいわずに去っていく。


 「おい、待てよ!」


 思わず俺は静止の声をかけるが、狼はそんな言葉は意にも返さずに去る。

 それを見た俺は狼を追い掛ける。何故そうしたのかは分からないが、俺の直感(・・)がそうした方がいいといったのだ。

 こうして俺と狼の鬼ごっこが始まった。



――――――――――――



 さて、俺は今狼を必死になって追い掛けてるわけだが、これが当然の如く大変な作業だった。

 まず狼だからものすごく速い。どれくらい速いかというと、俺が移動系のスキルを総動員してようやく付いて行けるくらい速い。

 それに加え洞窟という構造上狼を見失いやすい。まあその点に関しては姿が見えなければ気配を辿ればいいし、気配もしないようなら直感で進めば問題無い。 それ以上に狼の身体能力が厄介だ。まず先程も言ったように速度があるし、それに狼は直角の角をほとんど減速しないで曲がったりもしやがる。

 俺は《跳躍》スキルにより一歩あたりの歩幅を稼ぎながら移動しているため、普通に追い掛けたら角に来る度に引き離されてしまう。 そこで俺は三角飛びの要領で壁を蹴って曲がることにより速度を落とさずにコーナリングをする。

 そうやってしばらく狼を追い掛けていると、やがて狼が減速したので、俺もそれに合わせて速度を落とす。

 そうして俺と狼はちょっとした広場のような場所にたどり着く。いや、広場というよりは巣穴といった方が適切かもしれない。なぜならそこには三頭ほどの俺が追い掛けてきた狼をそのまま小さくしたような子狼がいたからだ。

 狼は広場の中央付近まで行くと、俺の方を向く。

 それに対し、思わず俺は相手はモンスターではないと分かっていながら身構えてしまう。そうさせるだけの何かがやつにはあった。


 「そう身構えないで下さい。別にとって食おうというわけではありません。」


 そうしてると不意に女性の声が聞こえる。誰かと思い周りを見渡してみるが、あたりには誰もいない。


 「私の速さに付いてこれる人間なんてそうそういません。あなたが最近噂の神が召喚した戦士ですね。」


 状況を理解できずへどもどとしていると、再び女性の声が聞こえる。その直後に視界にははい、いいえの選択肢が現れる。

 ええっと、周りに誰もいないということは、話し掛けてるのは目の前の狼か?これは何かのイベントか?

 そう考えつつも俺ははいを選択する。というかここでいいえを選ぶとどうなるんだろうか?ちょっと気になるが怖いのでやめておく。

 「そうだ、俺がその神が召喚した戦士とやらだ。」


 ついでにする必要は無いが、何となく口でもそういっておく。


 「そうですか。それならばちょっと私の話を聞いてくれますか?」


 そう断りを入れると、狼は話しはじめた。この世界に起きた悲劇を。

ちなみに狼の速さは普通の人間が全力で自転車を漕ぐのと同じくらいです。

これに付いて行ける海月君マジパネエ。

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