044 VS機械兵軍団-1
「海月君、2秒後に君の後ろからドリルが来るよ。」
「分かってる!」
俺はインテグラルの言葉が終わる前に移動し、2秒後に来たドリルを避ける。
さて、今の状況を説明しよう。インテグラル、カリスト、モノポールの三人は、背中合わせになって戦っている。たいして俺は、孤軍奮闘中だ。
この形を提案したのは、インテグラルだ。彼曰く、俺は型に嵌めないほうがいいらしい。……所詮俺はチームワークの苦手なソロプレイヤーよ。
部屋の隅にいって体育座りをして床にのの字を書きたい気分になったが、今は戦闘中だ。いじけるのは後にして、今は戦いに集中しよう。
「インテグラル、俺の方は自分でどうにかするから、おまえは自分達のことだけを気にしてくれ。」
「そう言ってもだね、僕の《座標平面》内にいると、いやがうえにも情報が入るんだよ。おっと、《方程式》。」
インテグラルは飛んできたドリルを右腕で防ぐ。確かに右腕にドリルが直撃したはずだが、ダメージを受けた様子はない。
「なら俺の情報は無視しろ。気にするだけ無駄だ。その分を他の二人に回せ。」
「今度からはそうさせてもらうよ。」
「《コロナ》!ああもう、鬱陶しいわねぇ!あんたら、どうにかできないの!?」
「俺の《一騎当千》ならさっき見た通りあまり役に立たないぞ。《乾坤一擲》!」
モノポールがそういって近くにいた機械兵を右手の辞書で殴ると、機械兵はそれでやられたようで、例のショートしたような音を発した後爆発する。
「僕の方は、一つやってみたいことがあるんだが、準備にちょっと時間がかかるんだよな……」
「ならその間私たちが守るから、とっとと準備しなさいよ!」
「いや、この陣形はできれば崩したくない。そうだな、ここはやはりこうするか。海月君!少しの間でいいから、僕のことを守ってくれないか!?」
突然、インテグラルが俺に向かってこう言った。はて、一体何のつもりだ?
不可解に思いながらも、俺はインテグラルの元へと行く。
「よお、来たぞ。」
「来たか。さっき言った通り僕のことを守ってくれ。」
「べつに俺は構わないが、何をするつもりだ?」
「まあ見てなって。」
そういうとインテグラルは両手に出してた定規を仕舞い、空中に指を走らせ何かを書きはじめた。
仕方がないので、俺も近くの機械兵と戦いはじめる。
「よし、もういいぞ。」
しばらくそうしてると、不意にインテグラルがそういった。どうやら準備が終わったようだ。
俺はその場を退き、別の場所で戦いはじめる。
「後はそうだな……あいつあたりが手頃かな。」
そういうと、インテグラルは一歩踏み出し、近くにいた機械兵に掌底を食らわせる。インテグラルは《格闘》スキルはとってないようなのでダメージは発生しないが、その変わりに機械兵の体にたくさんの数式が刻まれ、それが機械兵に染み込むように消える。
「何をしたんだ?」
「まあ見てなって。」
俺は聞くが、同じように返されてしまった。
仕方がないので、俺は機械兵の様子を見守る。
不意に機械兵がその体の向きを変え、そして近くにいる機械兵を襲いはじめた。
「……もう一度聞くぞ。何をしたんだ?」
「機械兵の体に数式を刻み込んで僕たちの味方になってもらったんだ。うまくいってよかったよ。」
言ってることがよく分からないのは、俺だけではないと思いたい。
「あんた何をしたのよ!何であいつは味方を襲ってるの!?」
「どうして数式を刻み込んでああなるのか理解に苦しむな。」
それは他の二人も同様だったようで、二人もそう聞く。余談だが、戦いながらこんなやり取りができるあたり結構余裕なのかも知れない。
「僕の特殊スキルの《数式》は、様々な情報を数式で現し、それを刻んだ対象に現すといったものなんだ。そうだな、例えるならば、毒状態の時に通常の状態の数式を刻み込むと毒が治るといった感じだ。今回はこれで味方になってもらった。」
意外と便利だな。《数式》。
たまにこんな感じのやり取りをしながら、俺達は機械兵達と戦っていく。
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どれくらい戦っていただろうか。
最初は会話をする余裕もあったが、途中からそんなものはなくなり、終いには必要最低限しか声を発さなくなった。
俺達は機械兵をそれなりに倒したが、倒したそばからまた新しいのが涌き、元の木阿弥だ。いい加減面倒になってきた。
「だああもう、しゃらくせぇ!《分身の術》!」
業を煮やした俺は、《分身の術》を使い、手数にものを言わせて機械兵達を倒していく。
だがそれでも機械兵は倒したそばから涌き、いっこうに減る様子はない。 苛立ちながら戦い、また一体機械兵を倒したところで、機械兵達の動きが止まる。
「侵入者ノ戦闘力ガ想定ヨリモ高イコトヲ確認。戦闘レベルヲCからBニ移行シマス。」
機械兵のこんな言葉が響くと、突然部屋にいた機械兵達は空中に浮き上がり、変形をはじめる。
あるものは足に、あるものは腕に、あるものは胴体に、あるものは顔の形に変形する。
変形が完了すると、次は合体しはじめた。二本の腕と二本の足と一つの胴体と一つの顔がくっつく。
気付いたときには、部屋に36体いた機械兵達は、彼らを三倍ほどに拡大した6体の機械兵になっていた。
「おいおい、何で同じものが別のパーツに分化するんだよ。あれは皆万能細胞のようなものなのか?」
「だとしたらこのゲームの制作者はロボット工学者に喧嘩を売ってるね。だってそんなの不可能だもん。」
「初見だからはっきりとは言えないが、多分今の僕たちの勝率は50%を下回ってるよ。」
各々がそんな感想を漏らす。というかカリストよ、学者に喧嘩を売ってるような戦い方をしてるおまえらが言うな。
「侵入者ハ全テ排除スル。」
そしてそんな仮称合体機械兵の言葉とともに第二ラウンドが始まったのだった。
数学者クラスの固有スキルの《数学》スキルは、結構汎用性が高いです。




