036 尋問
「お前は相変わらずいろいろと凄まじいな……」
俺が一人勝利の余韻に浸っていると、イルカがそう声をかけてきた。ちなみにクロムクロウからは、クロムクロウの羽、翼、嘴、足とそれと風の魔力塊というものがドロップした。タイタンシザーからは水の魔力塊がドロップしたが、魔力塊はもしかしてボスでしかドロップしないのか?ダークウルフェンからドロップしたのは闇の魔力片だったしな。
「なんだよ、勝利の余韻に浸ってるんだから邪魔するなよ。」
「邪魔させてもらうね。攻略組(俺達)の目の前で、それもソロで討伐されたから、こっちは悔しいんだよ、文句あるか。」
「ふっ……」
「鼻で笑いやがったな、この野郎!お前いつかPVPで一回死に戻りしてもらうからな!」
「返り討ちにしてやるよ!」
イルカとそんなやり取りをしていると、他の攻略組のプレイヤーも近づいてきた。
「ねえイルカ、この人が前言ってた友人?」
そのうちの一人の女性プレイヤーがイルカに話し掛けてきた。そのプレイヤーは、俺よりも少し身長が低く、騎士のような鎧を身に纏い、背中には弓を背負っている。矢はアイテムポーチに収納できるので、矢筒はいらないようだ。黒い髪を肩口あたりまで伸ばしており、顔は可愛い系、というより童顔だ。というか、攻略組を襲ったときにイルカとフラグを立てたアーチャークラスのプレイヤーだ。イルカの奴、あの時のフラグをしっかり回収してやがったか……
「これは掲示板に晒さないとな。そういえばリア充晒しスレなんてのがあったな。そこに晒すか。」
「そんなことしたら俺はお前と絶交する。」
「何で俺の考えてることが分かるんだ?」
「途中から声に出てたぞ。丸聞こえだっつうの。」
「……随分と変わった人みたいね。」
「このゲームをソロでやってるんだ。その時点で十分変わっている。」
「聞こえてるぞ。」
ああもうこれじゃ拉致が空かなないな。ここは多少強引にでも話題を変えるべきか。
「ところで、こいつは誰だ?」
「おっと紹介が遅れたな。こいつの名前はエイラだ。エイラ、自己紹介しな。」
「言われなくてもするわよ。今紹介されたとおりあたしの名前はエイラ。クラスは見てのとおりアーチャーよ。戦闘では主に後方からの支援を担当させてもらってるわ。よろしくね。」
「これはご丁寧に。俺は……」
「あなたの紹介はいいわ。海月でしょう?あなた、結構有名なんだからね。」
そうか、俺は有名なのか。何で有名なのかは敢えて聞かないことにする。
「さて、エイラの紹介も終わったことだし、お前に一つ聞きたいことがある。」
「何だおい、急に改まった顔しやがって。まあべつにいいが。で、聞きたいことってのは何だ?」
「聞きたいことというのは、お前の《変化の術》についてだ。あれってボスにしかなれないのか?」
「いや、普通に雑魚にもなれるが、それがどうかしたのか?」
「なら、キャリークロウにもなれるよな?」
「なれるけど、それがどうかしたか?」
「ここに来る途中でやたら強いキャリークロウと戦ったって言ったよな?」
「言ったけど、それがどうかしたか?」
……なんか話の雲行きが少し怪しくなってきたぞ。
「それってもしかしてお前じゃないよな?」
「えっ、あの時のキャリークロウって海月だったの?」
こんなところでも《直感》スキルが発動したのか嫌な予感はしてたが、そういうのって当たるものだな。まあここはごまかすのが賢い選択か。
「何を言ってるんだ?そもそも俺にそんなことをするメリットはないだろ。」
「それは俺も分かってるんだが、でもさっきのお前の動きとあの時のキャリークロウの動きがそっくりなんだよ。もう一度聞くぞ。あれはお前なのか?」
これはちょっとやばいかもな。気がついたら他の攻略組のプレイヤーも聞き耳を立ててやがるし。さて、ここはどうするか。ごまかしてもいいが、イルカは勘が鋭いからばれる恐れがある。こんな時《二枚舌》スキルでもあればどうにかなるんだろうが、あいにくそんな詐欺師クラスしかとらないようなスキルはとっていない。そうなると、選択肢は一つか。
「だから違うと言ってるだろ。おっと、それよりも新しいエリアの開拓をしないとな。それじゃな!」
「おい、まだ話は終わってないぞ!《隠蔽》スキルで姿をくらますな!おい、待てよ!」
俺は逃げることにした。
「後でしっかり問いただすからな!覚悟しとけよ!」
後ろからそんな声がするが、アーアー、キコエナイキコエナイ。
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イルカ達から逃げ、俺が入った新たなエリアは、簡単に言うと砂漠だった。
あちこちに砂丘があり、それは高いものだと山のようなのもある。
さてと、ここはベータでは来ていないらしく、まだ何の情報もないから、手探りでの探索だ。ここには一体どんなモンスターがいるんだろうか?どんなトラップがあるんだろうか?そしてどの大罪がここを支配してるんだろうか?
そんなことを考え、若干の不安と期待を胸に抱きながら俺は探索をはじめるのだった。
海月は有名人です。
どうして有名かは、敢えて伏せておきます。




