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018 VS金属狼(パーティ編)

 俺は今、草原のボスであるウルフラムの石像のところにいる。

 俺だけではない。そこにはリーダー率いる攻略組のプレイヤーに、それと意外なことに騎士のような鎧で身を包み、あらゆる武器を装備したハゲ頭で怖面の偉丈夫、マイナークラスのウエポンマスターである驫木もいた。話によると、様々な武器を状況に応じて使い分ける戦い方を買われて誘われたらしい。

 人数の構成は、攻略組の六人組のパーティが三つに俺と驫木がパーティを組んで入っている。

 このゲームの一パーティの上限人数は六人で、ボス戦に同時に挑めるパーティの上限が四パーティ。前戦ったときはもう一つ攻略組の六人パーティがいたそうだが、俺と驫木を入れる都合で今回は外れてもらったそうだ。



 「分かっているとは思うが、今回諸君らに集まってもらったのは草原のボスであるウルフラムの討伐のためだ!我々の手によりこのゲームの攻略の一歩を刻もうではないか!」


 リーダーのその声に、俺と驫木を除く18人のプレイヤーからときの声が上がる。

 その声に答えるようにして、リーダーはウルフラムの石像へと渾身の一撃を叩き込む。

 何だかよく分からないうちに戦闘開始のようだ。やれやれ、どうやら俺はパーティプレイには向かないようだな。



――――――――――――



 リーダーがウルフラムの石像に攻撃を加えると、前戦ったときのように変化して、つや消しの黒のいびつな金属質の装甲のようなものを纏った狼になる。

 その狼が大きく息を吸い込む。咆哮攻撃の前兆だ。


 「気をつけろ!咆哮が来るぞ!」


 リーダーがそう注意を促した刹那、ウルフラムが咆哮を放つ。


 「アオオオオオオオオオォォォォォォォォォォン!!」


 ウルフラムが咆哮を放つ。当然俺は《跳躍》スキルにより空中に退避済みだ。

 咆哮のあとに来るウルフラムの攻撃を防御特化のクラスと思われるプレイヤーが防ぐ。つーかこれなら俺跳ぶ必要無かったな。


 「確認しておくが、俺達の役割は確か遊撃だったよな?」


 地面に着地した俺は、パーティを組んでる関係で近くにいる驫木にそう声をかける。


 「いかにも、我等の役割は遊撃だ。して、海月はどうするつもりだ?」


 「俺は投擲武器使いらしく遠距離での援護に徹するよ。驫木はどうするんだ?」


 「今の状況を見るかぎり、我が入り込む意味はなさそうだから、我も援護に徹することにする。」


 そういうと驫木は弓を構え、アイテムポーチから取り出したであろう矢を番え、ウルフラムヘと放った。

 俺もそれに倣い、チャクラムをウルフラムへと投げる。


――――――――――――



 タンクが攻撃を受け、ダメージディーラーが攻撃する。回復系の固有スキルを持ってると思われるクラスのプレイヤーが回復する。

 非常に統制の取れた戦いだった。ぶっちゃけ俺達はいらないんじゃないかと思うくらい。俺はその戦いにいつものチャクラムジャグリングによる援護をする。つーか集団戦闘でのチャクラムジャグリングは結構難しいな。このゲームは町や村の外だとハラスメント防止コードが発生せず、PKプレイヤーキルが可能だから、他のプレイヤーに当たらないように気を使う。

 そんな戦いに転機が訪れた。

 タンク役の一人がウルフラムの攻撃を受けそこない、回復役のプレイヤーの元へと行ってしまったのだ。


 「グルァ!!」


 回復役のプレイヤーがウルフラムに倒される。回復役がいなくてはタンクも役に立たない。あー、もう、おまえら攻略組なんだから油断してんじゃねーよ!


 「驫木、そろそろ助けに行った方が良さそうだから、俺は行くぞ。おまえはどうする?」


 「我も助けに向かわせてもらうぞ。」


 俺は驫木とそんなやり取りをしたあと、蜂戦輪を二つだけ残してしまい、ウルフラムの元へと向かう。


 「助けに来たぞ!」


 まず驫木がそういって乱入してウルフラムをハンマーで吹き飛ばす。


 「グルァ!?」


 俺はそれに蜂戦輪で追撃をかける。プレイヤーの様子をざっと見た感じ、タンクはもう限界で、ダメージディーラーもかなりきついようだ。


 「ここからは俺達に任せてきつい奴は下がって回復しろ!」


 「済まない、一旦下がらせてもらう!」


 俺の言葉にリーダーを含む何人かの攻略組のプレイヤーが下がる。さて、第二ラウンドの開始だ!



――――――――――――



 俺が攻撃を避けながら攻撃をして、驫木や攻略組のプレイヤーが攻撃をする。

 そんな中で驫木の戦い方は、見事に複数の武器を使いこなしたものだった。 近距離ならば剣を使い、体制がきついと見ると小回りがきくナイフに切り替え、相手の攻撃を受けるときは棒でカウンターを使い、距離が開くと鎌や槍といった中距離の武器に切り替え、さらに開くと鞭で追撃する。余裕があるときは、ハンマーや斧ででかい一撃を狙う。

 そうして防御は俺の回避を、攻撃は驫木を中心に行い、着実にウルフラムのLGを削っていった。

 しばらくウルフラムのLGを削っていくと、目算ではあるが、ウルフラムがこれまでよりも多量の息を吸う姿が見えた。瞬間、嫌な予感がして《跳躍》スキルで思い切り跳ぶ。


 「アオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!」


 そのあとに飛んできた咆哮は、これまでのよりも長く、強力なものだった。LGを見てみると、少し減ってる。おいおい、スタンならともかく物理的なダメージがある咆哮って何だよ。

 その直後。ウルフラムが俺に向かって跳んできた。って届いてるし!


 「《変わり身の術》!」


 俺は急いで《変わり身の術》を使い避ける。

 あの咆哮と今まで届かなかった攻撃が届いてるあたり、どうやら修羅モードとやらに突入したらしい。

 修羅モードとは、ボスの残りのLGが少なくなると発動する各種のステータスや行動パターンが変わる状態だ。ウルフラムの場合は、ただでさえ高い敏捷と攻撃力がさらに上がるというものだ。


 「《分身の術》!」


 ここからは出し惜しみはしないほうがいいと判断した俺が《分身の術》を使う声とともに第三ラウンドが始まった。



――――――――――――


 あれからウルフラムと戦うプレイヤーは、主に俺と驫木になった。

 修羅モードのウルフラムの速度は攻略組が遅れをとるほどだ。そんなウルフラムと俺が戦えているのは、俺のスキル構成が回避や機動性に重きを置いたものだからだろう。

 驫木については分からん。クラスの関係上スキルのほとんどは武器系に持って行かれてるはずだが、驫木も《軽業》スキルや《敏捷強化》スキルをとっているのだろうか?まあ今はどうでもいいことだ。 俺達の戦い方は、さっきとそんなに変わっていない。俺と分身が回避と攻撃で、驫木が攻撃専門で、そこにたまに攻略組の攻撃が入るといった感じだ。ちなみに今回分身に出した指示は、回避優先で攻撃は余裕があるときにしろといったものだ。


 「グルァ!」


 ウルフラムが俺に向かって噛み付いて来るのを避け、右手の蜂戦輪で切り付ける。一瞬怯んだところに驫木がナイフで切り付ける。そこにさらに分身からの追撃も入る。

 先程からこんな感じで少しずつ削ってるのだが、一行に終わりが見えない。修羅モードだから残りLGは少ないはずだが、修羅モードだと防御力も上がるのだろうか?

 このままでは拉致が開かないと思い、俺は賭けに出ることにした。


 「驫木!俺が奴の動きを止めるから、おまえがでかいで止めを指してくれ!」


 俺はそういうと、驫木の返事も聞かずにウルフラムヘと駆け寄る。

 その際ウルフラムが突進してきて、俺はそれをかすらせる程度に避ける。かすったことによりLGが三分の二ほど持って行かれ、その攻撃にぞっとするが、それに構わず俺はウルフラムヘと飛びつく。


 「グルァ!?」


 俺はウルフラムに抱き着き、そのまま横になって、柔道の寝技のような姿勢になった。俺は《寝技》スキルは持ってないのでダメージは発生しないが、この状態でも《掴み》スキルは発動するようで、拘束は出来る。


 「今だ!」


 俺がそう叫ぶと、そこには斧を掲げた驫木がいた。


 「この戦い、我の手で終わらせてやる!」


 驫木がそういって、斧を振り下ろす。

 斧がウルフラムに当たる直前に俺は拘束をとき、逃げる。

 斧がウルフラムに当たった刹那、ウルフラムは光となって消えた。どうやら倒したようである。


 「……おまえが倒したんだから、何か言えよ。」


 誰も言葉を発しないその空間で俺は驫木にそういう。


 「我が止めをさせたのは、海月が拘束したからだ。海月がいうが良い。」


 すると驫木がそういったので、俺は言葉を返す。


 「なら一緒に言おうぜ。」


 「そうだな、そうするとするか。」


 俺と驫木はそういうやり取りをすると、息を吸い込み、叫ぶ。


 「「勝ったぞおおおぉぉぉぉ!!」」


 俺と驫木のその叫びに呼応するように、残ったプレイヤーから勝鬨かちどきの声が上がる。

 こうして最初のボスは倒されたのであった。

漸く最初のボスが倒せました。

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