019 打ち上げ
今の時間は夕方。
ウルフラムを倒したあと、俺達は村に戻り、打ち上げをやることにした。
といっても、酒場でこぢんまりとやる……予定だったのだが、どこから聞き付けたのか他のプレイヤーもウルフラムを倒したことを知っていたようであり、当初予定していたものよりも規模が大きくなってしまい、神託所前の広場ですべてのプレイヤーが集まってるんじゃないかと思うくらい大勢でドンチャンやってる。
ちなみにウルフラムを倒したときはお昼であり、あれから騒ぎつづけてたりもする。
「いやー、戦う前からやってくれるとは思っていたが、まさかあれほどとはなー。おまえもう正式に攻略組に入っちまえよ。」
酒職人クラスが作ったものと思われる酒を飲みながら俺に声をかけるのは、イルカだ。というかこいつ酔ってるな。リアルでもあまり酒に強くないくせに飲み過ぎだ。
「うるせえ。俺は気ままなソロプレイヤーがいいんだ。」
「そういわずに頼むよー。おまえがいればだいぶ攻略が楽になりそうだからさー。それにそこのヤクザのオッサンも頼むよー。」
イルカが俺だけでなく驫木にもそういう。というか、ヤクザはちょっとストレート過ぎるだろ。
「確かに我はリアルではヤクザをやってるが、初対面でそういわれたのは初めてだ……」
酒をちびちび飲みながらそういうプレイヤーは、言わずもがな驫木だ。イメージ通りといえばそうだが、リアルでヤクザをしてるのは意外だ。あまりこういうゲームをやりそうなイメージがない。
その辺気になったので聞いてみると、曰く息抜きでやるつもりがこうなってしまったらしい。何というか、俺みたいなゲーマーならともかく、こういう人は不幸だろうな……
「だから俺はソロがいいと言ってるだろ。ボス戦くらいは手伝ってやるから、それで手を打て。」
「我もできればソロで行動したい。だが海月のようなプレイヤーなら、パーティを組むのも吝かでもないな。」
俺がイルカの言葉に反論すると、驫木も同意する。というかちょっと待て。
「おいおい、明らかに攻略組以上のPSを持つおまえらがパーティ組むのは勘弁してくれよ。これじゃあ俺達の立つ瀬がないぜ。」
「待て待て、おまえら俺の話聞いてたか?俺はソロがいいんだ。攻略組とも驫木とも組むつもりはないからな。」
「だが我と海月は互いに遠近両方こなすことが出来る。バランスは悪くないと思うぞ?」
「言われてみるとそれもそうだな。よし、攻略組には入らないが、驫木となら考えておこう。」
「おまえらマジでやめてくれよ……」
しばらくそうやって酒を飲んだり料理人クラスが作ったであろう料理を食べながら三人で談笑してると、こちらに近づいて来るプレイヤーがいた。エレナだ。
「や、海月。話は聞いたわよ。大活躍だったそうじゃない。」
「おっと、彼女さんのお出ましだ。」
「彼女じゃねーよ。ただ防具を作ってもらってるだけだよ。」
イルカが茶化してきたので、そう答えると、なぜかエレナが不服そうな顔をした。ちょっと待てこれってもしかして嘘から出た真って奴か?
「そうだエレナ、俺の防具を修理しといてくれないか?」
なにやら変な空気になりかけていたので、俺はエレナにそういう。
「修理って、おまえほとんど攻撃を受けてないじゃねーかよ。」
「万全を期しておきたいんだよ。それに攻撃を受けてなくても近接では《格闘》スキルでの体術が基本だから、防具の耐久度は減るんだよ。」
俺はイルカにたいしてそういう。実際頻度は少ないが、蹴りを使ったりもしてるので、足防具の耐久度が減っているのだ。
「私はべつにいいけど、ボスを倒したのなら、その素材があるわよね?なら修理よりもそれを使って防具の強化をした方が良くないかな?」
「確かに俺は今ウルフラムの素材を持っている。だけどそうなると俺もしたいことがあるから、あまり多くはやれないぞ。」
「構わないわ。必要な分だけ持って行く。」
エレナがそういったので、俺は各種の素材を出す。ちなみにウルフラムからは、ウルフラムの装甲、爪、牙、肝といったものが手に入った。というか毛皮じゃなくて装甲って、明らかに獣とは別の存在だろこいつ。
俺が出した素材を見たエレナは、しかし眉を寄せ渋い表情をした。
「ごめんなさい、やっぱり今回は修理だけでいいかしら?」
「どうした?強化するんじゃなかったのか?」
「それがね、素材のレベルが高くて今の《防具製作》スキルじゃ扱えないのよ。」
エレナにそういわれ改めて素材の説明文を見てみると、なるほど確かにどれもレア度が4以上で今の俺の、いや俺達の製作スキルじゃ扱えない。必死で倒したボスの素材が使えないとは、理不尽なゲームだ。
「おまえ今理不尽だって思ってるだろ?俺もベータのときにそう思って調べてみたんだが、どうやらボスの名前のウルフラムってのは、タングステンって意味らしいんだよ。で、タングステンは鉄より硬い。ここまでいえば、わかるよな?」
「……ここでウルフラムの素材を使った武器や防具を作ってしまうと後々出てくるであろう鉄の存在意義が無くなるから、その辺のバランス調整か。」
「俺もその答えになったから多分あってると思うぜ。」
「それはつまりどういうことだ?」
俺とイルカがそんなやり取りをしてると、驫木がよくわからないといった表情で聞いてきた。見ればエレナもそんな顔だ。この二人にはまずバランスブレイカーとかその辺のことを教えなければならないようだ。
そのあとエレナと驫木にゲームバランス云々のことを教え、そのあとは料理をつつきながら酒を飲んだりしながら打ち上げを楽しんだ。どうやらエレナも驫木も酒はいける口らしい。
その後、手品師クラスと思われるプレイヤーが手品を披露したり、道化師クラスと思われるプレイヤーが大道芸をしたりしているのを見て、そこに乱入して得意のジャグリングを披露したりした。音楽家クラスと思われるプレイヤーの演奏もあったので、《踊り》スキルで踊りながらやったので、観客はかなり湧いたな。ちなみにリアルでは一人だと五つが限界だったが、こっちだと《軽業》スキルの補正があるので、最高で八つくらいいけた。
こんな感じで打ち上げは深夜まで続いた。
海月は鈍感ではありません。
それと、ゲームバランスは重要です。




