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二人の魂が選ばれた理由

金色の糸は、運命の源のさらに奥へ伸びていた。


私たちが進むほど、周囲の糸は静かになっていく。


「この先には、まだ誰も入ったことがないはずよ」


母がそう言った瞬間、金色の糸が強く輝いた。


魔法陣が私たちを包み、次に目を開けたとき――そこには巨大な湖が広がっていた。


空も大地もなく、透明な水と無数の糸だけが存在している。


湖の中央には小さな島と石碑があった。


刻まれた文字が光へ変わる。


『二つの魂が出会うとき、世界は一つの未来を選ぶ』


続いて、別の文字が浮かぶ。


『一つは、未来を見る魂』


『一つは、過去を記憶する魂』


私は息を呑んだ。


「私と……ルシアン」


石碑はさらに続けた。


『未来を見る者が、未来を決めてはならない』


『過去を覚える者が、過去に縛られてはならない』


『二人が互いの意思を尊重したとき――運命の源は、初めて自由な未来を生み出す』


湖面に映像が浮かぶ。


そこには、最初の人生の私とルシアンがいた。


二人の間に、まだ金色の糸はない。


それでも出会い、互いを選んだ瞬間、金色の糸が生まれた。


映像は次々と変わる。


二度目。


三度目。


四度目。


結ばれた人生もあれば、別れた人生もある。


互いを知らずに終わった人生さえあった。


それでも、二人の魂の間には細い金色の糸が残っていた。


『選択には、記憶が残る』


石碑が告げる。


『魂はすべてを覚えていなくても、選んだものを完全には失わない』


「だから……」


私は胸に手を当てた。


初めてルシアンに会ったときの懐かしさ。


彼を信じたいと思った気持ち。


それは運命に命じられたものではなかった。


過去の人生で何度も選んだ結果が、魂に残っていたのだ。


ルシアンも静かに口を開く。


「僕が探していたのは、過去の君じゃない」


「……」


「過去の君との約束を守ろうとしていた。でも、本当に守りたかったのは――今の君だった」


私は彼の手を握った。


金色の糸が輝く。


その瞬間、湖の上に一人の少女が現れた。


銀色の髪。


紫色の瞳。


運命の源で見た女性と同じ姿だった。


「私は、運命の源が生み出した最初の観測者」


母が警戒する。


「あなたがエレナをこの世界へ導いたの?」


「正確には、彼女自身の選択を手助けしただけ」


少女は答えた。


「あなたたち二人の魂は、何度も互いを選んだ。その結果、金色の糸は七本の中心となった」


「だから敵に狙われたの?」


「ええ。金色の糸を支配すれば、他の六本も操れる」


そのとき、湖に黒い波紋が広がった。


『そこまでです』


あの声。


私は凍りつく。


『エレナ・ヴァレンティア。ルシアン・アストレア』


『あなたたちが自分の意思で選び続ける限り、私の計画は完成しない』


「あなたは誰なの!」


『それを知るには、まだ早い』


黒い糸が湖を覆う。


その一本が石碑へ突き刺さり、石碑が真っ二つに割れた。


『真実を見せる』


石碑の奥から映像が現れる。


十年前の王宮。


幼いルシアン。


母。


記録官。


そして――私の父。


「……お父さん?」


映像の中で、父は黒い石を手にしていた。


『これで、王子は死んだことになります』


ルシアンが息を呑む。


「僕の父君と……?」


その背後から、別の人物の声が響く。


『十年後、二人を必ず運命の源へ導きなさい』


映像が途切れる。


「父が……十年前の事件に関わっていた?」


母も驚いている。


「私も知らなかった……」


ルシアンが拳を握る。


「父上は、何をしていたんだ……?」


少女が静かに答えた。


「違うわ」


「え?」


「あなたのお父様は、敵に協力していたのではない」


少女は黒い糸を見る。


「彼もまた――誰かを守るために、嘘をついていた」


私は息を呑んだ。


「じゃあ、父は何を守っていたの?」


少女は私を見る。


「あなたよ」


黒い糸が再び動き始める。


十年前に隠された最後の真実が、今まさに開かれようとしていた。

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