↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/46

ヨルとアバロンとはじめの一歩

「お母さん……お母さん」

「もう……いいから。行って」

「いや……そんなの……いやだよ」


 瓦礫に挟まれた母親のもとに、いよいよ迫る炎。

 そこへ傷を負い埃まみれになったヨルが、息を切らせてやって来た。

 すぐに瓦礫をどかそうと手を伸ばすも、民家の壁半分ほどになろうかという重量は、ヨルの力でも持ち上がらない。


「アバロン」


 ヨルから獣耳が消え、髪が白から黒へと変わる。


「っ!?」


 突然現れた巨大な魔獣に、少女が尻もちをつく。

 アバロンはすぐさま瓦礫をくわえ、どうにか隙間を作り出した。

 わずかな風で揺れる炎が、アバロンの頬を焦がす。

 その間にヨルが手を伸ばし、どうにか母親を瓦礫の隙間から助け出した。

 母親のケガ自体も、大きなものではなさそうだ。

 抱き合う母親と少女に、アバロンが息をつく。


「よかった」


 しかし、ヨルが額の汗をぬぐいながらそうつぶやくと、少女が身体をびくりと震わせた。

 牙を持つ巨大な魔獣と、それを使役する謎の人物。

 今まさに残忍な鳥型の魔族に襲われたばかりの少女に、そんな異質の組み合わせを受け入れる余裕はない。

 向けられた怯えの目に、ヨルは少し寂しそうな顔をすると――。


「行こうか、アバロン」


 ことさらに明るくそう言って、踵を返した。

 今だ魔族による騒動の中にある、アルテンシアの街並み。

 歩き出したヨルとアバロン。



「――――待って」



 再び白髪モードになろうとしたヨルが、アバロンが振り返る。

 すると声を上げた少女が、小走りでやって来た。

 そしてそのまま真っすぐアバロンの前に立った少女は、わずかに逡巡した後――。

 その顔を、小さな手で抱きしめた。


「たすけてくれて……ありがとう」


 その手に、ギュッと力がこめられる。


「……わたしはヨル。この子はね、アバロンっていうんだ」


 今度こそ踏み出すことのできたその一歩に、ヨルは。


「――――すごく、いい子なんだよ」


 それはもう、うれしそうに笑った。

続けての更新です。


お読みいただきありがとうございました!

よろしければ、以下の★やブックマークにてご評価いただければ幸いです。

何卒よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。