元しだんと次の仕事
「あの速度で迫るウサギの角。その根元に一度で合わせるとは……恐ろしい剣の冴えだ」
「まぁ刺突である以上攻撃範囲は点でしかねえからなぁ。避けるのはそう難しくねえし、あとは突き出された角に剣を合わせるってだけだ」
俺は手にしたウサギの角を手に、やたらと感心するアバロンに応える。
「あの特殊個体を相手に正面から渡り合うだけでも、簡単ではないはずなのだがな……」
「レージ君、すごかったね」
「ああ、戦闘自体の運びも見事だった」
「……これでまた少し、認めてもらえるかな」
山の麓に準備してあった檻に一角兎を入れながら、ヨルがうれしそうにつぶやく。
「なんだかんだ、共闘もうまくいって良かったな」
「うんっ。なんだか仲間ができたみたいで楽しかったよ! ね? アバロン」
「……ああ、そうだな」
互いを見ながら、しみじみと言う。
「次会う時もライバルにならねえといいけどな」
「本当ね」
「よし、そろそろ行こうかアバロン」
「ああ、そうしよう。礼を言うぞアニエス、レージ」
「それじゃあまたねー!」
そう言って檻を背負うと、ヨルはぶんぶん手を振りながら白髪獣耳モードで駆けていく。
「うまくいくといいわね、あの子たち」
「そうだな」
遠ざかっていく背を見ながら、俺たちも帰途につくことにした。
◆
ヨル、アバロンとの共闘から数時間後。
俺たちはアルテンシアの冒険者ギルドへと戻って来た。
「なあ、ドアの前をうろうろしてんのって……」
「アンナマリーね」
俺は手に入れた一角兎の角を、成功の合図代わりに振ってみせる。
すると俺たちの姿に気づいた受付嬢アンナマリーは――――。
「キャー!!」
とんでもない悲鳴を上げた。
な、なんだ? すごい勢いで駆け寄って来るぞ?
「レージさぁぁぁぁん!!」
「うおおっ!」
アンナマリーはそのまま抱き着いてきた。
「Aランクを超える実力とはいえ、新人にいきなり特殊個体の相手なんて難しいんじゃないかって思って心配になってたんです!」
「ほら、これが一角兎の角な」
「ありがとうございます! 新人がAランクの仕事を達成した。これは大きな話題になるはずです! 私ももう一度、いろんな冒険者に声をかけてギルド再興をがんばりますよ!」
おお、すっかり勝気で元気な受付嬢だ。
これなら少しずつ、人も戻って来るかもな。
「……キレ―な受付嬢に抱き着かれて、良かったじゃない」
アニエスがなんか強めに脇腹を突いてくる。
なんだその不満そうな表情は。
「うーん、でも俺……」
「なによ」
「アンナマリーはやさぐれてる方が好みかもなぁ」
「ええ……」
引くなって。まあ、お嬢様にはあのやさぐれ感から来る色気は分かんねえか……。
「「キャー!!」」
突然、首を絞められた獣みたいな汚い悲鳴が上がった。
振り返るとそこには、戦斧を持ったブラッドホークと泥棒面のマッドロック。
な、なんだ……?
二人はもう我慢できないとばかりに両手を広げて走り出す。
お、おい、こいつらまさか!?
「う、うおおおお!?」
や、やっぱり! そのまま抱き着いてきやがったぁぁぁぁ!!
「お前ならやってくれると思ってたぜ!!」
「アルテンシア冒険者ギルドの面目躍如だ! お前さんは英雄だァ!」
「分かった分かった! 分かったから退いてくれっ!」
暑苦しいし、斧の端が頬に薄く刺さってっから!
「キ、キレーなゴロツキおじさんに抱き着かれて、良かったじゃない」
しっかり距離を取ってからの苦笑いやめろ。
「そうだアンナマリー、あの話はいいのか?」
俺を押し倒したままブラッドホークが問いかける。
いや、まず俺を開放しろ。
「そうでした! 実は新しい依頼が入って来てるんです! ぜひお二人に受けていただきたい大仕事ですよ!」
「ふーん、今度はどんな内容なのかしら?」
今回もランク的には大きな仕事だったわけだけど、冒険者ギルドに来る仕事は多種多様だろう。
果たしてどんな話が来てんのやら。
「内容は警備と設営です。その場所は――」
アンナマリーはポケットから、一枚の依頼書を取り出してみせた。
「アルテンシア騎士・魔術師団による平和記念式典です!」
「「……はい?」」
俺は思わず、アニエスと顔を見合わせた。
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