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ギルド試験とランク付け

 連れてこられたギルドの地下。

 闘技場の真ん中で、酒ビン片手の受付嬢は足を止めた。


「いっぱしの冒険者と言われるのがCランクから。あっちで賭けをしてるのはもう十年以上のベテランで、ちょうどCランクさ」

「そうなんだ。こういう試験ってちょっとワクワクするわね」

「おいおい、お前らにそんなの関係ねえだろ。どうせFに決まってんだからよォ!」


 聞こえて来る野次。

 なるほど、この闘技場は上の階から見物もできるようになってんのか。


「それで、どうすればいいの?」


 その問いに応えるように、受付嬢が天井から垂れ下がってる鎖を引く。

 すると俺たちの前にドン、と音を立てて巨大なモノリスが落ちて来た。

 高さ二メートル半、厚みは約一メートル半くらいか。

 白銀色に光る石柱には、中央部分へと至る文様が描かれている。

 受付嬢はまさにその中央部分のくぼみに、手の平サイズの宝石をはめ込んだ。


「このモノリスに全力で魔法を撃ちゃいいだけさ。そうすれば魔力量に応じて封魔石の光り方が変わる」

「でも、全力でやって大丈夫なの?」

「高価なモンじゃあないけど、お嬢ちゃんの魔法くらいじゃビクともしないよ」

「分かった」

「ほらほらお嬢ちゃん、もったいぶらずにやれやぁ! 心配すんな、Fランクでも俺が儲けるだけだからなぁ! ひゃっひゃっひゃ!」

「もう、うるさいわね! 言われなくてもやるわよ!」


 向けられるヤジの中、アニエスがその手を伸ばし、目を閉じる。


「さーて、どんなもんかね」


 受付嬢が、あくび交じりにつぶやいた。

 揺れ出す金色の髪。次の瞬間アニエスは大きく息を吸い、再びその目を見開いた。


「エーテルバースト!」


 それは単純な魔力砲。だがそれゆえに容赦なし。

 ズドーン! という爆音と共にモノリスが倒れ、噴煙が派手に巻き上がる。


「…………うそ」


 受付嬢が、手にした酒ビンを取り落す。


「封魔石が……」


 モノリスに差し込まれていた封魔石は、粉々に砕け散っていた。


「これでいいの? ランクはどうなるのかしら?」


 受付嬢が、あらためてモノリスを確認する。


「Bランクの魔力量でも問題ないはずなのに……」

「もう少し強くも出来るけど?」

「も、もう大丈夫! 新人は最高でもAランクからなのよ。これ以上は必要ないっ!」

「だってさ」


 アニエスは「どやぁ」と、ちょっと得意げにして見せる。

 いやいや大したもんだ。

 単純な魔力なら”あいつ”といい勝負なんじゃねえか……?


「お、おい、賭けはどうすんだ? 次はあのにいちゃんの番だぞ」

「……確かにこいつは予想外だ。だが外見で力量が分からねえ魔術師と違ってあのにいちゃんは剣士だし、とても強そうには見えねえ。今度は……俺がFに賭ける」


 そう言って筋肉質の大男が、戦斧を手に闘技場に降りて来た。


「相手になってやる。昔から近接職のランク付けは実戦がメインなんだ。いいだろう?」


 受付嬢はただ一度、こくりとうなずいた。


「俺はあと一つCランクの案件を片付ければBになるところまで来てる。万が一お前が勝てば、それ以上ってことだ」

「ああ、分かった」

「――――いくぞ!」


 叫んで、男は一気に距離を詰めて来る。

 軽く振り出して来た一撃は……なるほど、まずは小手調べってところか。

 俺は迫りくる戦斧を、剣で下から弾いてやる。


「くっ!」


 それだけで加減の必要がない事を理解したんだろう。男は一気に攻勢を強めてくる。


「オラァァァァ!!」


 戦斧による乱打。

 重量のある攻撃を、容赦なく叩き込んでくる。


「オラッ! オラッ! オラァッ!!」


 俺はあえて剣の切っ先を戦斧の一部に擦ることで、攻撃を受け流す。

 かわすんじゃなく、軌道をずらす。

 これを繰り返していけば――。


「く、くそっ! そんなら……こいつでどうだああああ!!」


 ――――今だ。

 狙い通り。攻撃に重きを置くタイプは、手応えがないと焦れ始める。

 そんで焦れると『大振り』をしたくなるもんだ。

 まして相手が格下に見える時ほど、その傾向に拍車がかかる。

 踏み込んで、振り降ろしに来た男の手首に剣を叩き込む。


「痛ッ!!」


 男の手が放れる。戦斧はくるくると回転しながら後方へ飛んでいった。勝負あり。


「チィッ! だが勝負はここからだ――ッ!」


 叫んで男は、腰に差していた短剣に手を伸ばし――。


「……なに?」


 予想外の事態に困惑する。


「俺の、俺の短剣がねえ……っ」

「探してんのは、こいつか?」


 俺は手にした抜き身の短剣を放り投げる。

 男は足元に突き刺さったそれを見て、目を見開いた。


「そんなバカな……あのやり合いの間に俺の短剣を抜いてたってのか? こんな真似、Aランクのヤツでもできねえぞ……」


 男は唖然とする。

 勝負は、ここまでみたいだな。


「……すごい」


 つぶやく受付嬢。


「きゃー! すごいすごい! もうここ十年はAランクを取る新人なんて出てこなかったのに、いきなり二人も……っ! それも才能で言えばSでもおかしくない! 二人とも合格! もちろんランクはAよ!」

「な、なにあれ、どうしちゃったの?」


 目を輝かせながらぴょんぴょん飛び跳ねる受付嬢に、驚くアニエス。


「おいおい、こんな寝ぼけたにいちゃんがAランクだってぇ?」


 すると泥棒面の男は、立ち上がって親指をクイクイと上に向けて見せた。


「……上がってきなァ」

お読みいただきありがとうございました!

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