第25話 黒瀬依子は読者に近い
黒瀬さんの声が、私の中にありました。
声、と言っていいのかはわかりません。
耳で聞こえるわけではありません。
頭の奥で響くわけでもありません。
もっと変です。
私が何かを感じる前に、黒瀬さんがそれへ突っ込んでくるのです。
たとえば、私は透真さんを見ました。
雨に濡れた窓際に立つ透真さんの輪郭は、少しだけ朝の光に透けていました。
それでも彼はそこにいて、手の甲には「共有」と「欄外受理」と「し」の文字が残っています。
私はその手を見ると、胸が少し温かくなりました。
――いや、そこで胸が温かくなりましたで済ませないで。何がどう温かいのか言って。
黒瀬さんの声です。
私は思わず顔を上げました。
「黒瀬さん」
「何」
黒瀬さんは、私の目の前でノートを押さえつけていました。
開こうとするノートを、両手で無理やり閉じています。
ノートは生き物みたいにばたばた震えていました。
「今、私の地の文に突っ込みましたか」
「知らない。突っ込んだ覚えはあるけど、口では言ってない」
「覚えはあるのですね」
「ある。しずくさんがまた雰囲気で流そうとしたから、具体的に言ってって思った」
黒瀬さんは、ものすごく嫌そうな顔をしました。
「思っただけなのに、そっちに届いた?」
「はい」
「最悪」
彼女はノートを睨みました。
「私の心の声を勝手に地の文へ混ぜないでほしい」
透真さんが、少し考え込むような顔をしました。
「黒瀬は、読者に近い存在だからでしょうか」
「水無月さん」
「はい」
「そこで納得するの、やめて」
「でも、かなり説明がつきます」
「つけなくていい説明ってあるの」
黒瀬さんはノートを胸に抱えました。
そのノートには、さっき勝手に文字が浮かびました。
黒瀬依子は、読者に近い。
読者。
それは、物語を読む人です。
でも、黒瀬さんはここにいます。
私たちと同じ部屋で、メロンパンを買ってきて、泣いて、怒って、しずくの「し」を手の甲に預かってくれた人です。
読者という言葉は、彼女には少し遠すぎる気がしました。
――遠すぎるっていうか、普通に嫌。私は読んでるんじゃなくて巻き込まれてるの。
また聞こえました。
私は黒瀬さんを見ました。
「今も聞こえました」
「何て?」
「私は読んでいるのではなく、巻き込まれていると」
「思った」
「聞こえました」
「やだ」
黒瀬さんは本気で嫌そうに顔をしかめました。
「私の心の中まで実況されるの、かなり嫌。日記勝手に読まれるより嫌かもしれない」
「すみません」
「しずくさんが謝ることじゃない。たぶん世界が悪い」
「最近、世界が悪いことが多いですね」
「多すぎる」
透真さんが、机の上のスマホを見ました。
画面には、まだ第25話の表示が出ています。
【第25話 黒瀬依子は読者に近い】
その下に、細い文字が浮かんでいました。
黒瀬依子の読解が、地の文へ反映されます。
黒瀬さんが画面を見て、低い声を出しました。
「読解って言うな」
「読解」
「読むなって言ってるの」
「でも黒瀬は、たしかに読んでいます」
透真さんが言いました。
「僕が自分を責めようとする時、黒瀬は先回りして止めます。しずくさんが感情を綺麗にまとめようとすると、具体的に言えと言います。僕たちが役割に流されそうになると、今の言葉は危ないと指摘する」
「それは読解じゃなくて、友達として見てるだけ」
「そこが、読者に近いのでは」
「水無月さん、今かなり厄介なこと言ってる」
黒瀬さんは眉を寄せました。
「友達として見てることと、読者として読んでることを同じにされたら困る」
「違いますか」
「違う」
即答でした。
「読者は、閉じられるでしょ」
部屋が静かになりました。
雨の音だけがします。
黒瀬さんは、少しだけ苦しそうな顔で続けました。
「本なら、読むのをやめられる。つらかったら閉じられる。気に入らなかったら投げられる。最終回まで追わなくてもいい。でも、私は閉じられない」
その声は、怒っていました。
でも、少し泣きそうでもありました。
「しずくさんが名前欠けたら、そこにいる。水無月さんが消えそうなら、掴む。あいつの恋文読んだら、泣く。読者みたいに距離を取れない。取れたら、たぶんもっと楽だった」
私は、何も言えませんでした。
黒瀬さんは、読者に近い。
でも、読者ではない。
読者のように気づいて、読者のように疑って、読者のように伏線を拾う。
それでも、彼女は物語の外にはいません。
痛い場所にいます。
濡れる場所にいます。
閉じられない場所にいます。
――そう、それ。それを最初から言って。
また黒瀬さんの声が地の文に混ざりました。
今度は、少しだけ照れているようでした。
「黒瀬さん、今のも聞こえました」
「もう嫌」
「でも、少し照れていました」
「そこまで言わないで!」
黒瀬さんは顔を赤くしました。
透真さんが小さく笑います。
「黒瀬も、地の文にされると弱いんですね」
「誰だって弱いわよ。心の中に字幕つけられるようなものでしょ。最悪」
「字幕」
「しかも私の字幕、たぶん辛口になる」
「自覚があるのですね」
「あるわよ」
黒瀬さんは、開こうとするノートを机に置き、両手で押さえました。
しかし、ノートは勝手に開きました。
ページに文字が浮かびます。
黒瀬依子は、読者になるはずだった。
黒瀬さんの顔から、色が消えました。
「……は?」
声が低い。
その一文字に、怒りと恐怖と拒絶が混ざっていました。
「読者になるはずだったって、何」
透真さんが画面を見ます。
「予定されていた役割、でしょうか」
「役割って言うな」
黒瀬さんは即座に言いました。
「主人公とかヒロインとか係とか、もう十分。今度は読者? 私を外に出す気?」
「外」
私はその言葉に引っかかりました。
「読者になるということは、物語の外へ行くということですか」
「普通はそうでしょ」
黒瀬さんはノートを睨んだまま言いました。
「本の中の人を読む側。こっちじゃなくて、向こう側。安全な場所かもしれないけど、手は届かない」
手は届かない。
その言葉で、私は黒瀬さんの手を見ました。
何度も透真さんを掴んだ手。
私の靴ずれに絆創膏を貼ってくれた手。
泣きながら日記を握った手。
「し」を預かってくれている手。
その手が、届かなくなる。
想像しただけで、胸が冷えました。
「嫌です」
私は言いました。
黒瀬さんが私を見ます。
「しずくさん?」
「黒瀬さんが読者になるのは、嫌です」
「……」
「読んでくれるのは、助かります。気づいてくれるのも、止めてくれるのも。でも、外へ行ってほしくありません」
私は、少し焦っていました。
言葉が上手に並びません。
「黒瀬さんが外から読むだけになったら、私が痛い時に手を握ってもらえません。透真さんが消えそうな時に掴んでもらえません。メロンパンを買ってきてもらえません」
「最後、メロンパン?」
「大事です」
「大事だけど」
黒瀬さんは困ったように笑いました。
けれど、その目は少し潤んでいました。
「しずくさん、そういうところで急に人間っぽく引き止めるのやめて。効くから」
「効きますか」
「効く」
透真さんも言いました。
「僕も、黒瀬が読者になるのは嫌です」
「水無月さんまで」
「読まれるのは、少し怖いです」
「そこ?」
「はい。黒瀬に読まれると、自分の逃げ道がかなり塞がれるので」
「それは今もそうでしょ」
「そうですが、外側から読まれたら、僕が手を伸ばしても届かない」
透真さんは、黒瀬さんの手を見ました。
「僕は、掴める位置で怒ってほしいです」
黒瀬さんは、しばらく黙りました。
そして、目を逸らしました。
「……そういう言い方、ずるい」
「すみません」
「謝らないで。今のは、ちょっと嬉しかったから腹が立つだけ」
黒瀬さんはノートを見ました。
そこには、さらに文字が浮かんでいました。
読者になれば、あなたは全員を覚えていられます。
読者になれば、あなたは二度と登場人物として死にません。
読者になれば、あなたは黒塗りの名前を読めます。
黒瀬さんの手が震えました。
黒塗りの名前。
消えた三人目。
恋文を書いた人。
メロンパンを持っていた人。
僕をミナトと呼んでいた人。
名前の一文字目「あ」を一度だけ取り戻し、また失った人。
読者になれば、その名前が読める。
それは、黒瀬さんにとって、ひどく残酷な誘惑でした。
「……最低」
黒瀬さんが言いました。
「何これ。餌じゃん」
「黒瀬さん」
「読者になったら名前が読める? 全部覚えていられる? 死なない? 何それ。私が欲しいものばっかり並べて」
彼女は笑おうとして、失敗しました。
「性格悪すぎる」
私もそう思いました。
世界はいつも、欲しいものを罠の形で差し出します。
透真さんには名前を。
私にはヒロインの役割を。
黒瀬さんには記録と読解を。
欲しくないものなら、拒めます。
でも、欲しいものだから怖い。
「黒瀬」
透真さんが、彼女を呼びました。
「選ばなくていいです」
「うん」
「今すぐは」
「うん」
「でも、選びたくなっていますか」
黒瀬さんは、息を呑みました。
正直に言うか迷っている顔でした。
やがて、彼女は頷きました。
「なってる」
声は小さかったです。
「だって、名前が読めるんだよ」
「はい」
「私が忘れた人の名前。忘れたくなかった人の名前。私を守ろうとして、隠れて、勝手に泣くなとか言って、でもメロンパンの袋ばっかり残す、あいつの名前」
涙が、少しだけ目に浮かびました。
「読めるなら、読みたいに決まってる」
黒瀬さんは、ノートを握りしめました。
「読者になるだけで読めるなら、なりたいって思っちゃうに決まってる」
私は、その正直さが痛かった。
黒瀬さんは、読者になりたくない。
でも、名前を読みたい。
死にたくない。
忘れたくない。
覚えていたい。
その全部が、本当です。
どれか一つを嘘にしなくていい。
「黒瀬さん」
私は彼女の手に触れました。
「私は、止めたいです」
「うん」
「でも、名前を読みたい気持ちを否定したくありません」
黒瀬さんは、目を伏せました。
「うん」
「だから、止めます。でも、怒りながらではなく、隣にいながら止めます」
黒瀬さんは、少しだけ笑いました。
「しずくさん、最近かなり難しいこと言うようになった」
「人間に近づいているので」
「人間、そんなに高性能じゃないよ」
「でも、黒瀬さんを見ていると、難しいことをしながら生きているように見えます」
「それは買いかぶり」
透真さんが言いました。
「でも、少し合っています」
「水無月さんまで」
「黒瀬はいつも、怒りながら、怖がりながら、記録しすぎないようにしながら、それでも忘れないようにしています。かなり難しいことです」
黒瀬さんは、目をこすりました。
「二人して何なの。今日、私を泣かせる日なの?」
「第19話では泣きました」
「話数で言うな」
黒瀬さんは、少しだけ笑いました。
その瞬間、ノートのページがぱらぱらとめくれ始めました。
文字が流れ込みます。
読者選択を開始します。
黒瀬依子は、読者になりますか?
選択肢が二つ。
読む
残る
黒瀬さんは、息を止めました。
読む。
残る。
とてもひどい二択です。
読むを選べば、名前が読めるかもしれない。
でも外へ行く。
残るを選べば、手は届く。
でも名前は読めないままかもしれない。
「また二択」
黒瀬さんが言いました。
「この世界、本当に選択肢が下手」
「第三の選択肢を作りますか」
透真さんが言うと、黒瀬さんは苦笑しました。
「水無月さん、だいぶ私たちの流儀に染まってきたね」
「欄外入力に慣れました」
「慣れるものじゃないけど、頼もしい」
私はノートを見ました。
読む。
残る。
どちらも足りません。
「黒瀬さんは」
私は言いました。
「読む人でも、残る人でもあります」
「両方?」
「はい。読んでください。でも、外へ行かないでください」
「そんな都合のいいこと」
「都合が悪い選択肢ばかり出されるので、こちらも都合のいい答えを出していいと思います」
黒瀬さんが、ぽかんとしました。
それから、少し笑いました。
「しずくさん、たまにかなり強引」
「黒瀬さんに学びました」
「私、そんな強引かな」
「はい」
「否定してほしかった」
透真さんも頷きました。
「僕も賛成です。黒瀬は読む。でも残る。読者に近い登場人物として」
「それ、役割名っぽい」
黒瀬さんが警戒します。
「危ないですね」
「はい」
「じゃあ、役割じゃなくて行動にしましょう」
私は言いました。
「黒瀬さんは読む。気づく。怒る。泣く。手を伸ばす。メロンパンを買う。全部します」
「増えた」
「全部、黒瀬さんです」
黒瀬さんは黙りました。
その顔が、少しずつ柔らかくなります。
「全部か」
「はい」
「読むだけじゃなくて、怒るし泣くし、メロンパンも買う」
「はい」
「それなら、まあ、私っぽい」
黒瀬さんはノートの選択肢を見ました。
読む。
残る。
彼女は油性ペンを取り出しました。
「また書くのですか」
「書く」
「ノートに?」
「うん。今回は、私が書く」
黒瀬さんは、選択肢の下に強引に文字を書き足しました。
読みながら残る。
ノートが震えました。
黒瀬さんは構わず、その下にさらに書きました。
外へは行かない。
でも、読まないふりもしない。
伏線は拾う。
矛盾には怒る。
泣く時は泣く。
メロンパンは買う。
名前は、まだ読めなくても探す。
書き終えた瞬間、ノートから白い光が溢れました。
黒瀬さんの身体が、少しだけ透けます。
「黒瀬さん!」
私は慌てて手を伸ばしました。
透真さんも。
黒瀬さんは、私たちの手を掴みました。
今度は、彼女の方がすり抜けそうでした。
「やば」
黒瀬さんが言いました。
「これ、外へ引っ張られてる」
「黒瀬!」
透真さんが叫びました。
水無月さんではなく、黒瀬。
その呼び方に、黒瀬さんの輪郭が少し戻りました。
「黒瀬さん!」
私も呼びます。
「黒瀬依子さん!」
自分でも驚くほど強い声が出ました。
黒瀬さんの手の甲に書かれた「選べる」が光りました。
そして、ノートの選択肢が書き換わります。
黒瀬依子は、読者ではありません。
ただし、読者に近い場所から、登場人物を読めます。
状態:読みながら残る
黒瀬さんの身体が戻りました。
彼女はその場にへたり込みました。
「……怖っ」
「大丈夫ですか」
「大丈夫じゃない。今、たぶん本の外に片足出た」
「どんな感じでしたか」
透真さんが聞くと、黒瀬さんは少しだけ眉を寄せました。
「静かだった」
「静か」
「うん。すごく静か。雨も、声も、心臓の音もなくて、文字だけがあった。全部読めそうだった。たぶん、あそこに行けば、あいつの名前も読めた」
「はい」
「でも」
黒瀬さんは、自分の手を見ました。
私と透真さんが握っている手。
「誰にも触れなかった」
その声は、震えていました。
「名前が読めても、触れないのは嫌」
私は、その手を強く握りました。
「残ってくれて、ありがとうございます」
「お礼を言われるような立派な選択じゃないよ」
「でも、ありがとうございます」
透真さんも言いました。
「ありがとうございます」
黒瀬さんは、照れたように顔を伏せました。
「だから、そういうの弱いってば」
その時、ノートのページに新しい文字が浮かびました。
黒瀬依子は、読者になるはずだった。
しかし、登場人物として残ることを選んだ。
そのため、彼女は今後、地の文へ不定期に介入する。
黒瀬さんが顔を上げました。
「不定期に介入?」
私の頭の中に、黒瀬さんの声が響きました。
――いや、許可してないんだけど。
「今、介入しました」
「もう!」
黒瀬さんは本気で嫌そうに叫びました。
「せめて任意にして! 勝手に出ないで!」
ノートに文字が浮かびます。
任意介入へ変更しますか?
黒瀬さんが固まりました。
「できるんだ」
「変更しましょう」
透真さんが言います。
黒瀬さんは、すぐにノートへ書き込みました。
変更する。
ただし、緊急時は勝手に出てもよい。
例:水無月さんが自罰に沈みそうな時。
しずくさんが綺麗な言葉で逃げそうな時。
世界が都合の悪い選択肢しか出さない時。
誰かがメロンパンを怖がりすぎた時。
「最後、要りますか」
私が聞くと、黒瀬さんは真剣に頷きました。
「要る。メロンパンは今後も重要」
「わかりました」
ノートに、受理、と浮かびました。
黒瀬さんは深く息を吐きました。
「受理されると、それはそれで腹立つ」
「でも、よかったです」
「うん」
雨の音が、少し弱くなります。
窓の外はまだ灰色です。
でも、部屋の中の空気は少しだけ軽くなりました。
黒瀬さんは読者にならなかった。
でも、読めるようになった。
外へ行かずに。
触れられるまま。
それは、また暫定勝ちです。
完全ではありません。
不安定です。
でも、私たちはだいたい不安定です。
その時、黒瀬さんのノートがまた開きました。
今度は、別のページ。
そこに、知らない文字が浮かびます。
第26話 雨宮しずくの第一話
私の胸が冷えました。
透真さんが、画面を見る前に私を見ました。
「しずくさん」
「はい」
「第一話、というのは」
「たぶん」
私は、胸元の半分剥がれたラベルを押さえました。
雨宮しずく。
その下に残る、ヒロインの跡。
「私の物語の、第一話です」
黒瀬さんが、ノートに浮かんだ次の文字を読み上げました。
「朝起きると、私の部屋で知らない男の子が死んでいた」
部屋が静まり返りました。
透真さんの顔から、血の気が引きます。
私も、息ができません。
知らない男の子。
死んでいた。
それは、私たちの第1話の反転でした。
朝起きると、僕の部屋で知らない神様が死んでいた。
その逆。
私の部屋で。
男の子が。
透真さんが。
黒瀬さんが、ノートを閉じようとして、やはり閉じられませんでした。
「……次、きついやつだ」
彼女は言いました。
そして、自分の手の甲を見ます。
読みながら残る。
いつの間にか、そこに新しい文字が増えていました。
黒瀬さんは、それを見て小さく笑いました。
「残ったからには読むしかないか」
透真さんが、静かに言いました。
「僕も読みます」
私は頷きました。
「私も」
黒瀬さんは、私たち二人を見ました。
「一人で読むなよ」
「はい」
「水無月さんも、自分が死体側だったからって、急に遠くならない」
「努力します」
「しずくさんも、自分が書いたかもしれないからって、謝罪の準備だけしない」
「努力します」
「よし」
黒瀬さんは、ノートを胸に抱えました。
「じゃあ、読みましょう。しずくさんの第一話」
雨が、もう一度強くなりました。
今度の雨は、部屋の天井から降ってきました。
ただし、床に落ちる前に文字になります。
朝起きると、私の部屋で知らない男の子が死んでいた。
次の話が、そこから始まろうとしていました。




