9.不可解な音
ゆらゆら…ふわふわ…揺れながら私はどこかの暗い森の中を漂う
ここはどこなのだろう…
確か私はコンビニで夕飯を買って…よく分からない場所に迷い込んで…
…あぁ、そうだ。異界の番人だと名乗る男の人に魔王を倒して欲しいと、神の力だとかいうよく分からない力を貰ったんだ…
あぁ、それにしても頭がふわふわする…自分が今どのような状態なのか…それすら把握ができない
上手く思考が回らず、体すらろくに動かせないまま宙を漂っていた私の耳に突然大きな声が聞こえてきた
「ここは俺が足止めする!!お前達はーーの元へ行き天界を命懸けで守れ!!」
「それなら僕も一緒に足止めする!魔法の神である僕も一緒ならもう少し長くあいつを止めれるだろ!」
「お前はダメだ!!天界を守るスキルを持ち、俺達4人の中で1番魔力量の多いお前は天界を守るためにここを離れるんだ!!戦の神である俺がこの場に残る!!それともなんだ?俺の力はあいつの足止めにすらならないと?」
大きな声で会話する内容を聞いた私はあぁ、これは神の力によって記録された過去の神達の一部なのかもと、揺らめく思考の中でそれだけは不思議と頭を巡った
「それなら、私達が持つ攻撃スキルや防御スキルをあなたに譲渡するわ…せめてそれだけでも受け取ってちょうだい」
「…わかった。創造の神であるお前のスキルを貰えるのはありがたい。だが、天界を守るためのスキルはお前達がもっていけ。」
「私のパッシブスキルが譲渡出来れば…。そうだ!私も残るよ!私の自己蘇生があればあんたの盾や囮になれるよ!」
「お前を盾や囮になど出来ない。それにお前は付与スキル持ちだ。大人しくーーの所に向かえ」
戦の神に諭されながらもスキルを譲渡する3神を見つめていると目の前を薄暗い影のような風が通り過ぎた
なんだろうこの気味の悪い風?のようなものは
…いや、風って普通可視化されないよね?じゃあこれは一体…?
思考が回らない中で薄暗い影が来た方向に顔を向けゾワッとする。顔を向けた先に見えたのは薄暗い森の中をさらに黒く塗りつぶす闇が迫って来ていたからだ
姿もまだ見えないのにここまで強い気配と闇の力を感じ冷や汗をかき怯えていると不意に体がグンッと引っ張られた
慌てて体が引っ張られた方向に顔を動かすと譲渡を終えたらしい3神が迫り来る闇から逃げるように駆け出していた
あぁ、そうか…この記憶はこの3神のもの…私はこの後戦の神がどうなってしまうのか知ることが出来ないんだ…
もう一度闇の方向に顔を向ける
戦の神はもうこちらを見ておらず迫る闇を迎え撃つように武器を構え立っている
闇が戦の神を飲み込む寸前、強い光が迸る
強い光の中、戦の神のさらに奥に見えた人影…あれが魔王なのかどうかちゃんと見ることが出来ず世界が暗転した
☆
…ミシッ……ピシッピキッ……ピキキッ……
なにかが押し潰されてヒビが入るような…そんな不快な音が聞こえてくる。私の睡眠の邪魔をするこの音は一体…?
「うーん…うるさいなぁ…何この音…?まだ寝たいのに…」
眉間に皺を寄せそれでもまだ眠りたくて布団を頭から被って音を凌ごうとするがまるで脳内に直接響くように音が鳴るので私は仕方なくゆっくりと目を開ける
いつもとは違う布団とシーツの感触。いつもとは違う匂い。
ふわふわで高級感のあるベッドは私が使っていた庶民向けのものではない。見知らぬベッドの上で目覚めた私は眠気を一気に吹き飛ばしバッと体を起こす
「…天蓋付きのベッドなんて初めて見た。ていうかこの音夢じゃなかったんだ…どっから鳴ってるんだろう?」
閉められていた薄いレースカーテンをそっと開き床に足を降ろし立ち上がる
キョロキョロと部屋の中を見渡し音のする方向を探すが部屋の中で鳴っているような感じがしない
「…この部屋じゃないなら…もしかして外?」
1度思い立ってしまったらもうそれしか考えられなくなって外の様子が気になって出窓の方に足を進める
星と雲の模様のすりガラスの窓を開けると不愉快な音が大きくなった
「やっぱり外からこの音がするんだ!って、うわぁなにここ…めっちゃ高い…のか…?でも、すぐそこに雲が見えるから結構高い位置にいるはず…こんなに高い位置にいるのにこんなに大きな音どこから鳴っているんだろう…?ていうか、この建物どういう構造してるの?」
窓の下を見るも、斜め下に向かう屋根?の部分が邪魔して見えずらかったからもう少しだけ体を乗り出し下の方を見る。
かなり見えずらかったが下の方に庭らしきものが見えた。
うーん?あれは庭…かな?でも、なんだろう?植物が宙に浮いているような…?
それに、庭の下に雲が見える気がする…
とりあえず、音の原因を探るためそのことから目を向けず、今度は上を見ようと身を乗り出したまま顔を上に向けようとしたその時ガチャリと部屋の扉が開いた
「きゃあ!!救世の女神様!!何をしておいでですか!?」
ちょうど窓から身を乗り出していたからかメイド服の天使の女性が目を見開き、悲鳴をあげ、物凄いスピードで私を抱えて窓から引き剥がした
…いや、それよりも救世の女神様ってなんだ?
「えっと…救世の女神様って…「リリ!!どうしたの、そんな悲鳴を上げて!?」
開けっ放しの扉から慌てたように新たなメイド天使が現れ私の質問が掻き消されてしまう
「ルル!!あのね、きゅ、救世の女神様が窓から身を乗り出されていたのよ!!わ、私びっくりしちゃって…!?」
「とりあえず落ち着いてリリ。救世の女神様になぜ身を乗り出したのかちゃんとお聞きしたの?」
とりあえずルルというメイド天使はかなりしっかり者らしく私は少し安心した
それにしても、私はいつまでリリと呼ばれていたメイド天使に抱えられたままでいるんだろう…
それに救世の女神様とは一体なんなんだ?…明らかに私に対して言っていたよね?




