第14話 返送
「なんでここにあるんだよ。この一週間、回収車は何度も来てるだろ……」
大樹が震える声で呟いた。週に数回はゴミの収集日がある。他の住人のゴミはすべて消えているのに、これだけが残っているなんてありえない。
「……回収されてない、ってことか? これだけ?」
賢人は足の震えを抑えながら、そのゴミ袋を凝視した。一週間、他のゴミの下に埋もれていたはずなのに、袋には汚れ一つなく、つい数分前に置かれたばかりのような清潔さを保っている。監視カメラのレンズが、天井の隅から無機質に二人を見下ろしていた。
「……待て。あれを見ろ」
賢人の指差す先。ゴミ袋の結び目のすぐ下の部分に、一枚の紙が、わざと外から見えるように貼り付けられていた。
それは、あの受領印が押された、不在票の一部だった。
一週間前、二人が確かに破り捨てたはずのそれは、セロハンテープで丁寧に補修され、袋の内側に貼り付けられていた。
そして、その余白には。
捨てた時にはなかったはずの、あの震えるような字体で、新たにこう書き加えられていた。
『品目:ゴミ
状態:受取拒否のため返送』
「返送……って、誰にだよ……」
大樹が絶句した。賢人の「見間違い」を疑っていた大樹も、今度はその文字をはっきりと自分の目で捉えていた。
自分たちが「捨てた」ゴミ袋を誰かが開け、中身を確認し、丁寧にテープを貼り、メッセージを添えて、再びここに置いたのだ。その光景を想像しただけで、賢人は吐き気を催した。
「……これ、どうすればいいんだよ。また持って帰るのか?」
大樹の問いに、賢人は答えることができなかった。今夜捨てようとしていた、あの「手紙」入りの新しいゴミ袋が、手の中でカサリと音を立てた。
センサーライトがジッ、と小さな音を立てて消え、二人は一瞬、深い闇に包まれた。




